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D.N.A配列:ドラゴン  作者: 吾妻 峻
第七章 紅明王・フォンミンワン
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悲劇/三位明崇

「強すぎる」

まともに相手にしては勝機はない。ここは汽嶋と、うまく連携して――。

その時明崇の、直感が何かを察知した。

背後(うしろ)――


バリッという耳障りな音に、素早く振り返る。下の階から触手を利用しガラスを突き破る、降り立ったのはあの時の。


チャイナドレスの、女。


――な、あれで、生きて……?

そしてその頭から伸びたあの金剛骨が明崇の位置から少し離れた――

亜子の華奢な体に巻き付こうとしていた。

「亜子ッ」

触手ががっちりと組みついた。亜子が抵抗むなしく叫ぶ。

「い、嫌っ、離してッ」

亜子が涙を浮かべる。その眼が明崇を捉えている。


「オイッ前見ろッ」

「クッ……!」

何とか牛鬼の攻撃を凌ぐ。しかしそこでなぜか牛鬼は、明崇の上部へと飛び上がった。

女と共に並び立つ。女の触手に、亜子の体が持ち上げられる。

「テッメェッッッ!」

明崇は自覚せずに飛び上がっていた。怒りと焦り……そして恐怖で頭の中が塗りつぶされる。亜子を連れ、あろうことかこの場を去ろうとする女を追う、が。


牛鬼がそこに立ちはだかった。


ど け よッ!!!


「小僧ッ、ダメだ落ち着けッ」

汽嶋の忠告が、もう耳に入らなかった。


空中で構える。

亜子に向かって叫ぶ真夜、力なく手を伸ばす剛。捉えられた亜子も手を伸ばす。

こいつらを絶対に許さない。全注意力を翼に、そして雷撃を集中させる。

憎しみが全身を包み込んだその時だった。

牛鬼が背後の、亜子を連れ去ろうとする女に声をかける。


「急ぐぞ。アキラを待たせてる」


え。


頭がぐちゃぐちゃになる。アキラ、あきら……明羅?

なんで明羅(おとうと)の名前が、ここで――


そこで逡巡した。俺は馬鹿だった。

牛鬼の巨体が消える。大振りの一撃が空を切る。


無防備な体。牛鬼の八本のカウンターが、明崇の体にまともに突き刺さった。


「「明崇ッ」」

「アキ君嘘っ、嫌ッ!」

あいつらの叫び声が聞こえた。

女に縛り付けられた、亜子の姿が遠くなる。泣いている。泣いている。

――全部俺のせい。

認めたくない絶望的な現実が。勢いよく落下する体から遠ざかって行った。


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