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D.N.A配列:ドラゴン  作者: 吾妻 峻
第七章 紅明王・フォンミンワン
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背水の攻防

その巨影が、ビルに深い影を落とす。


東棟側。外壁に金剛骨を穿ち、牛鬼は戦場となり果てた、下界を睥睨する。


そこかしこから銃器の音、悲鳴、建物が壊れる音。

「……ン」

透けた張りガラスになっている、中央棟から真っ直ぐに伸びる通路。そこを行く集団が、彼の視界を横切った。


「……」


三人のうち、一人の少女がつまずき倒れこむ。それに手を伸ばし、引き上げる少年――その光景に牛鬼の視線が引き付けられた。もう一人の少女も、慌てて二人に駆け寄っている。


意外之財(イーウァイチーツァイ)

――思わぬ拾い物、だな。


もう一つ。用事ができた。





真夜の視界に、さらに上の階へと延びる、エスカレーターのあるホール状の吹き抜けが映る。


「あと少しだ。急げッ」

剛が叫ぶ。そう、あともう少し。明崇ももう、もうすぐ――

その時後ろでズテっと。


「いてて」

亜子がつまずいたのか、床に体を投げ出していた。

「掴まれ」

剛が兄らしく、素早く駆け寄り手を引く。その光景がいやなくらいに普段見ている日常そのもので。真夜はつい安心し、微笑んでいた。



うん、これはきっと悪い夢。

明崇が来たら皆そろって、皆無事で、平和にまた、あの日常に戻れるんだ。


「行こ、きっと明崇も待ってる。早く――」


その先が、轟音にさえぎられる。


三人の進行方向、そのガラス張りの窓壁が、何千というガラスの結晶に粉砕され床に散らばった。


真夜は思わず顔を伏せる。そして再び顔を上げると。

そこに巨大な、怪物としか形容しようがない、何かが立っていた。



「これ……って」

流石の真夜もあまりの恐怖に。その足が、竦む。


怪物。正に怪物だ。その存在が恐らく元は人間だと。そう真夜が断定できたのは上半身が、正に人の体だったからだ。しかしその体は背中から伸びる銅色の金属でできた、八本足の巨大な下半身に支えられている。


「鬼、人……」

その巨体は広い廊下の天井が、窮屈に思えるほど――。


唯一人間らしいと思われた上半身も。その頭部には巨大な角がある。その角で顔はグチャグチャで、あまりの醜さに見てられないくらいだ。


需要(チーヤオ)新的士兵被(チンジシービンベイ)


化け物が、何事か呟く。

そしておもむろに、巨大な金属の足が持ち上がり、圧倒的初速を持って。

――突き出される。

「嘘っ」

剛と、亜子の方に――


白雷一閃。


真一文字の光の剣が、その一撃を切り裂く。

真夜の目の前に、待ちわびた彼の背中がある。

明崇――!


間に合って、くれた……


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