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D.N.A配列:ドラゴン  作者: 吾妻 峻
第七章 紅明王・フォンミンワン
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天鬼/高峰詩織

初めての、SIRGプロジェクトの適合者。

それが詩織の肩書だった――。






鬼人と戦う上で重要な事項が一つある。


自身も、鬼人に身を堕とさなければならないという事実。


鬼人の戦闘能力は人間のそれを軽く凌駕する。五感もそうだ。鬼人は人に比べてはるかに優れている。同じ土俵に立たなければ、勝ち目はない。だからこそ警察組織は御三家として一部の鬼人の存在を認め、特定の鬼人と協定関係を結んでいた。


目には目を、歯には歯を。


しかしだからと言って、鬼人犯罪を阻止するために鬼人遺伝子を亢進させ、隊員自身を鬼人化させるSIRG計画はまさに本末転倒。当時ひどく危険だと思われていた。


丁度そのころだ。三位明崇が鬼人について、様々な知見を明らかにしていったのは。


鬼人化に関わる様々な薬剤、理論、その中の一つが、SIRG計画を実現させた。



天鬼化。


鬼人化は時に脳に作用し、人としての理性や自我を奪う。しかし三位明崇が考案したある鬼人化薬、それに適合する人材は鬼人化したとしても脳へ深刻な影響を及ぼすことが少ないとされた。つまり、



制御可能な鬼人がいると判明したのだ。


しかしその遺伝子型の適合者は少ない上、天鬼の戦闘能力は通常の牙鬼、角鬼に比べ数段劣るとまで言われていた。


その最初の適合者こそ、詩織だった。


天鬼は金剛骨そのものの発現が少なく、適合者は女性が半数以上と性差がある。限界発現したとしても肩甲骨から、翼状の金剛骨が生じるくらいだった。


そして金剛骨の発言量の少なさはそのまま、生命力の強さに直結する。


「詩織さん!」

近衛六華が、叫ぶ声がした。あえなく、詩織は再び倒れこんだ。

何で、何で塞がんないの――。

あんなに促進薬、注射()したのに。


金剛骨の発言量の少ない天鬼がほかの鬼人と比べて劣っているのは、戦闘能力や、五感だけではない。


細胞内に架橋構造を作り細胞そのものを修復する細胞骨格として機能する金剛骨。それ自体が少ないという事はつまり――


生命力まで劣っている事を意味する。


でも――それでも詩織には、戦わなければならないわけがある。


大丈夫。塞がってきた。

何とか――再び立ち上がる。今度はがっしりと、先ほどまで気を失っていた六華が支えてくれた。

――強い()ね。



二人で支えあい、歩き出す。その時詩織のインカムに、届いた。

『SIRG1係、現着しました』

爆音が、そう遠くないところで響き始める。詩織と六華を倒し、先に進んだ彼らを、足止めしているのだ。

増援――。


『これより怒紅狼(ドクロ)及びその首領――阿修羅貪狼(アシュラタンロウ)との戦闘に入ります』


聞こえてくる。愚直な声に苦笑する。

(おっそ)いよ、榎本(えのもと)センパイ」


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