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D.N.A配列:ドラゴン  作者: 吾妻 峻
第七章 紅明王・フォンミンワン
183/287

牛鬼VS龍鬼/三位明崇

戦闘態勢。

明崇は素早く、肩の神薙に手をかける。


鬼人化してなきゃ。

――多分さっきのでやられてた。


あの角の大きさ――確実に角鬼。金剛骨の、鉤爪状の触手“先ほど”のはどうやら肩部から。

角鬼の鬼人化は上半身に集中する。狙い目は下半身、定石は、まず――。


考え始めた正にその一瞬、その巨大な影が膨張する。

――なッ。


その体から、樹木の幹のように巨大な、“銅色”の金剛骨が這い出てくる。しかも計、八本。


曇天を覆うように広がる奇怪な、空を仰ぐ八手(ヤツデ)


それが突如として迫る。

「ぐ、ゥッ……」

何とか神薙で、受け止めた一撃。軌道を変えようとしたそれには予想以上の威力、そして残り七本が、もう――。


始翼を展開。雷撃で、安全な距離まで瞬間離脱(ベイルアウト)


「逃げ足、早いな餓鬼」


どうにか上部の鉄骨のピラミッド。さすがに一瞬では届かない位置に膝をつく。先ほど明崇がいた位置は、

自動車が追突したかのようにひしゃげている。


「ハァッ、はあ」

想像以上に、息が上がっていた。一瞬たりとも気が抜けない。


繰り出してくるであろう攻撃、そのすべてを把握することが難しい。


できたとしても、あの威力。雷撃を這わせなければ神薙では、あの金剛骨は、断てない。


そう、物量、威力ともに明崇を上回っている。


これが、牛鬼(ニュオグェイ)――


では俺に、何ができる。牛鬼に一つでも勝る点は、何処だ。


神薙の高速斬撃、始翼の瞬間移動、一撃ずつを把握対処する動体視力。そう。


――速度(スピード)だ。


鬼人化が亢進、龍の鱗が頬を覆う。神薙を平にすると雷撃が刀身に絡みつくように奔りだす。


四対白の光芒が、夕闇を明るく照らし出した。

神薙以上に感覚が、研ぎ澄まされる。



雷撃全開。


神薙の電流を温存しつつ。視界を蹂躙する八本の爪を回避する。


体を浮かす。迫る一本目を雷撃で、瞬時に上体を沈めてやり過ごす。途端、明崇に向けて落ち込んでくる二本の金剛骨。これは斜め左、前方に位置を振りつつ躱しきる。


「……イケる」


距離、既に二メートル――


この間合いならッ


――ザンッ

立切風が鳴る。しかし金剛骨を削ったものの、その急所には届かない。

「ま、だ、だッ」

持ち替え、投げ、斬る。その間も始翼から、常に雷撃を神薙に這わせる。

そうでもしないと、金剛骨(これ)は切れない。


静謐な夜の闇、幾度となく、オルガンの如く響く金属音と雷光――。


「アアッ」

体重を乗せた大振りの一撃が、ついにその、内一本を切り落とす。しかしそれでも、牛鬼の攻撃の手は緩まない。


気が付けば、防戦一方。


雷撃は、その大きな出力のために、長時間の使用は限界がある。


明崇は自分が思う以上に、消耗していた。


距離を取ろうにも、まるで蜘蛛の巣に捉えられたかのように。圧倒的な追撃の前に逃げ出せない。

把握不可能な攻撃密度――


そう、手数が多すぎる。


「また速いだけ……雑魚が」


諦めるものか。なるものか。


「アアアッ!」

全身全霊の雷撃が(ほとばし)る、その一撃が周囲をより明るく照らす。しかしその一撃はどうしても、大きく振りかぶりすぎた。


捉えられた隙。待ち構えたように異常なスピードで、鈍く光る銅色の金剛骨が迫る。


それに明崇の視界が塗りつぶされ、真っ黒になる。

フラッシュバックする。ほんの少し、前の事。


――後でちゃんと……すぐ会えるんだよね。


「真、夜、ごめ」


経験したことのない衝撃、痛みの前に、どうしても守りたい、あいつらの顔がよぎって消えた。


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