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D.N.A配列:ドラゴン  作者: 吾妻 峻
第六章 牛頭羅・ニュオズォーラ
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タンデム/藤堂浩人・門田璃砂

浩人がいるキャッスルウォールビル中心部レセプションホールは、激戦区と化していた。


SIRGと警備部。そして牛頭羅の構成員と思われる鬼人が、入り乱れている。

――取りあえずSIRGの他の係が到着するまで。

持ちこたえなければ。

「クッ……」

右目で照準を合わせる。撃つ。

「むガッ」

寸分のたがいなく。銃弾は素早く迫る、その鬼人の肩に食い込んだ。

「効いてる……」

金剛骨の銃弾。こうも違うものか。

肉薄してきた手負いの鬼人。その手と組み合う。

まずは受け。暴力的な一撃一撃をいなし、躱し、無効化する。

しかしそれだけでは、これ以上持たない。

なら……

示し合わせたようにガラリと空いたガードの隙間。その隙間を狙い、渾身の蹴り。

――うまく、入った。

間髪入れず、その局所を拳銃で打ち抜く。

これで浩人が捌いた鬼人は、三人目。それでもまだ、戦いは終わらない。



アイツは……どうしてるだろうか。


そう考えて脳裏に浮かんだのは、二人の女の顔だった。



その時浩人のインカムに、囁く声が迷い込んだ。

『浩人、さん。聞こえますか……?』

璃砂。避難してるんじゃないのか!?

「お前今、何してるッ」

戦場にいることも忘れ、怒鳴ってしまう。

『え、なんで?ご、ごめんなさい……』

彼女の怒られた時の、おびえたようないつもの声に。浩人は少し安心した。

『今……五階の電力供給室に向かってます。どうやら変電盤のブレーカー落とされてるみたいで』

「お前……」

『大丈夫です。拳銃もありますし。私、怖くないですよ』

止めろ。そう言いたかった。

「無茶は……するなよ」

『む、いつになく心配性ですね?』

歌うように、璃砂が笑う。




浩人の声に優しさが滲んでいる。インカムから聞こえる彼の荒い息遣いが、どこかこそばゆい。

「大丈夫ですって」

璃砂の緊張していた心が、溶かされていく。璃砂は無意識に、いつも内に秘めている言葉を口にしていた。

「浩人さん残して、死ねませんから……」


え、あれ。


口をついて出たその言葉に、璃砂自身が固まる。

――私今、なんて言った!?


『え、おい、なんて言った?返事しろ!』

「……」

どうやら、聞こえてなかったみたい。

――本当、心配性だなぁ。


「もう、心配いりませんよ。浩人さんも気を付けて、下さいね……」

声が途切れる。璃砂自身で、インカムを切った。

「大丈夫、大丈夫」


私にできるのは、これくらい。

浩人さんや、高峰さん。汽嶋君みたいに戦うことはできないのだ。それに比べたら分電盤の、ブレーカーを戻すくらい。

「それくらいできなくてどうするの」


言い聞かせる。そうでもしないと泣き出してしまいそう。

「浩人さん……力貸して」

今璃砂は五階の、埃にまみれた通気口ダクトの中にいる。このままいけば着くはずだ。

電力供給室に。



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