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D.N.A配列:ドラゴン  作者: 吾妻 峻
第六章 牛頭羅・ニュオズォーラ
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第二勢力


ビルのやけにツルツルとした壁面と廊下が、徐々にむき出しのコンクリートに変わっていく。どうやらこの先は改修工事を行っていたフロアの様で、照明の落ちたほの暗さもあり、酷く不気味に陰っていた。


「ちょっと待ってて」

新たに現れた大きなドア、そこを前にして立ち止まる。詩織が何やら、パスコードの様なものを入力し始めた。


「明崇は……大丈夫なんですよね、大怪我したりもしもの事なんてのは、無いんですよね」


ずっと先ほどから青ざめた顔をしていた。真夜が絞り出すような声で詩織に問う。

「……」

「答えてよ詩織さんッ!」

それでも詩織は、何も言葉を発しない。六華もずっと、沈黙を貫いている。


「い、嫌だっ、アキ君はいなくなったりしないもん」

亜子が沈黙に耐え切れなくなったか、小さく金切り声を上げる。

「亜子、落ち着け」

剛はひとまず、亜子の肩にその手を置いた。その肩はまだ、小刻みに震えている。



クラスじゃ一言も話したことがない。そもそも学校にすら来ない。純粋故に真夜だけでなく、救った亜子本人に対して過剰なほどに距離をとる。

そんな明崇と、此処まで親密になれたのだ。


亜子には恋愛とか……そういった事はよくわかっていないようだが。

それでも明崇、真夜を含めた四人で過ごしたこの二か月間。それによって明崇という存在は――


亜子にとってかけがえのない、友達以上の存在になっていた。


知っている。だって双子である剛もまた、明崇の事をそれくらい想っている。


明崇は俺たちの、家族だ。


だからこそ失くせない。


大丈夫。打てる手は全て打った。あとは時間の問題ーーきっと。


もうすぐ、もうすぐで。明崇のインカムに接続できるはずだ。





「ガチャン」

鈍く響く音。どうやらやっと先に進む。そのドアが開いたようだった。

「行こう……」

詩織さんが呻くように言う。そして五人はその先へ踏み出し、そして――


「皆伏せてッ」


叫ぶ詩織。その姿は同時に、剛の視界の中、弾き飛ばされ吹き飛んでいた。





庇った……嘘でしょ――。

あの身のこなしは鬼人でも、並の反応速度(スピード)じゃない。

でも流石の高峰詩織も、その素早い一撃を感知できても、その身に受ける事しかできなかったようだ。

「詩織さんッ」

そして襲来した“鬼人集団”それを見て六華は、絶句した。


狼、豚、馬……様々な動物を模した覆面。だが圧倒的に、狼の覆面の姿が多い。

六華には当然、見覚えがあった。

「ウソ……どうして」

――怒紅狼(レイジクン)、なの?



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