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D.N.A配列:ドラゴン  作者: 吾妻 峻
第六章 牛頭羅・ニュオズォーラ
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共喰い/牛鬼

日本人(こいつら)は、平和ボケしすぎている。

標的が油断している瞬間こそ、襲撃のチャンスであるという単純な事実。


俺が崩壊させた鉄筋コンクリの外壁。そこから強い風が吹き込んでくる。

俺の目の前には、幾重にも連なる血みどろの死体――いつもの見慣れた光景だ。しかしその中に一人だけ、みっともなく生き永らえ、肩で息をする者がいる。そいつも血だらけで、恐らく殺ろうと思えば一秒もかからない。


周囲には無残に、断ち切られた金剛骨の欠片。


「それだけか。近衛兵(ジンウェイビン)


こいつも先ほどまでは、えらく威勢がよかったのだ。

――兵?ふざけるな……

全身に毛皮にも似た金剛骨を纏わせた、そのもはや人間とも思えない姿は、確かに普通の鬼人ならおののくものなのかもしれない。

しかし俺――牛鬼にとっては、本当にその程度。こうなるまで。

一瞬だった。

「ただ速いだけ……それだけで、牛鬼(オレ)には、勝てん」


目の前の男こそ、この、兵の長であるというのは知っている。確か……近衛一。

噂程度だが現在のこの国の鬼人の中では、最も強いとさえ聞いていたのに。

「ガッカリ、だ」

昔はよかった。十年前はこの程度、ウジャウジャいたものだ。鎚頭(ハンマーヘッド)飢者髑髏(ガシャドクロ)……まだ張り合える相手もいたあの頃。そのピリッとした、殺気に富んだ空気が懐かしい――。


「おい、動くな」

「んぐッ、がッ、ン……」


もぞりと動いたその、腹部をまた貫いた。全く目障りだ。この程度の力で強者を名乗るとは。

――本当の強者とは、俺の様なものの事を言う。

青写真(ブループリンツ)。あるの、か?」


あの女との約束だ。取りあえず聞いておかねばなるまい。そう、俺はこう見えても律儀なのだ。

地に這いつくばる男の顔は、汗と血……そして涙のせいか。鬼人化すれば顔がつぶれる、そんな牛鬼から見ても不細工極まりないものだった。


「シラ、ナイ」

最後のプライド?それとも本当に知らないだけ?そんなもの、実はどちらでもいいのだ。

俺にとっては。

「……それでいい」


無慈悲に振り下ろす。

また一つ、動かなくなった。


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