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D.N.A配列:ドラゴン  作者: 吾妻 峻
第六章 牛頭羅・ニュオズォーラ
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侵攻/都築実

僕は正直、気が気じゃなかった。

あれから僕を含めた、この犯罪集団は都内のビジネスホテルを転々としていた。

――いつばれるかも分からない。


日本の警察は優秀だ。記者の僕は嫌なほど知っている。こんなのすぐに見つかって、僕は、僕は――


なのにニュオグェイはいつも堂々としていた。その日の宿泊先も、どうやら彼の伝手の様で、全く不自由しなかった。


あの時訪れた渋谷の……あの秘密めいたパーティホール。


あそこで出会った若者達も含めて、この集団はさらに大所帯になっていった。

彼らはどうやら普通の日本人みたいだった。まともに日本語をしゃべりながらニュオグェイと、常に何か、その“攻め入る計画”について話し合っていた。


つい、僕はそのリーダー格の青年の前で、先ほど思い浮かべたことを、そのまま呟いてしまった事があった。

「いつか……絶対捕まる。日本の警察は、そんな(ヤワ)じゃない」

自分の目の前に落ちた影。見上げるとその、金髪の青年が立っていた。

「へぇ、オジサンはそう思うんだ」


殴られる、じゃなくても何か、暴力を振るわれると思い、顔を伏せた。しかしそれは、とんだ勘違いだった。


腰を下ろす。彼の胸元の、髑髏をあしらったネックレスが覗く。それが催眠術の振り子のようにプラプラと、やけに意味ありげに揺れていた。

「確かに日本の警察は優秀さ、まぁ」

――敵に回せば、だけどな。


年相応の笑顔。それがその時の僕には、何よりも恐ろしいものに思えた。


純粋かつ、混ざり気のない狂気――。


それがこの集団には充満していた。


そして、今から僕も。

――完全にその狂気に取り込まれようとしている。



キャッスルウォールビル階。電力供給室。

僕は指示された通り、このビルの電気系統を担うという分電盤――


「ガチャリ」


巨大なブレーカーをその手で落とした。

なぜだかこの時の僕には、躊躇いというものが一切無くて。

さぁ――

牛鬼(ニュオグェイ)の侵攻が始まる」


暗闇の中、それでも心中のどこかで、僕は助けを求めていた。



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