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D.N.A配列:ドラゴン  作者: 吾妻 峻
第六章 牛頭羅・ニュオズォーラ
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警視庁・十六階/藤堂浩人

警視庁、本部庁舎の十六階を今、浩人は璃砂と共に歩いている。

あれから。


生意気にも沖和正を呼びつけ、脅そうとした浩人は結果的に、お情けというか仕方なくといった感じで鬼人対策部署・SIRGに迎えられる事になった。何よりそれが昨日の事なのだから驚きだ。


そしてこれは大きな、転機。

本部庁舎十六階というのは浩人からして、今まで全く関わりのない警備部(エリート)の根城だ。今回はその十六階にある、警備部長室を訪ねることになっている。


浩人が普段籍を置いている刑事部は警視庁の“六階”。それに対し遥か殿上の十六階ともなると周囲にはパリッとした、インテリな空気を纏ったキャリア組ばかり。廊下ですれ違うのは、そういう人種だ。

そしてこういう場では意外というかやはり、璃砂はここを行く人と同じ空気を醸し出している事に気づかされる。この空気に、引け目を感じる様子もそこまでないし、本当に浩人とは、人種が違うのだと再認識させられた。


開けた通路は、どこか真空状態の様な、息を詰まらせるような空気感。その圧力は、目的地に近づくほど増していく。

「入ります」

ついに警備部長室に、着いてしまった。


「警視庁捜査一課八係所属、藤堂浩人巡査部長です」

璃砂も所属と階級を含めて挨拶をすませ、浩人の後を追いその部屋に入ってくる。そこには。

大きな長方形の長机。右手と左手それぞれに六人、そして最も遠い位置に一人。

――合計十三人。


「腰かけて」

最も遠い位置、長方形の奥の上座に腰かける男がそういう。

「急で申し訳ない。私は現警備部長兼……沖警視正から説明は言っているかな?特殊鬼人捜査・急襲部隊を組織した」

――昭島宗徳(あきしまむねのり)警視監だ。

「そしてここにいる他の十二人は……それぞれSIRG一係から十三係の、係長を務めているものだ。十三係長の沖君は……今はいないがね」

――十三……係?

驚いた。SIRGは沖が取り仕切るに留まらず、これほど組織に厚みがあったとは。

そして十二人の様相は異常だ。それこそ様々な“人種”に富んでいた。


生まれて一度も喧嘩なぞした事がなさそうな温室育ちのキャリア顔もいれば、正に現場たたき上げ、凛々しく恰幅の良い男もいる。なんと女性の姿もある。十二人中三人が女性。男社会の警察組織では違和感すら覚える光景だ。


「今回は主に藤堂浩人巡査部長……君に質問がある」

「はい」

昭島、そう名乗る男の持つ空気は、今まで浩人が相対したどの警察官とも違っていた。何を考えているのか悟れない、悟らせない。正に神秘的な、それとも宗教的な。

「ご家族関係は……どのような、ご健勝かな?」

「父と母です。両親共に存命しています」

見降ろされているような、上から覗くような目付き――

「一課の前は……SITの所属でしたね。突入班で、苦労したことは」

今度は浩人から見て右側。警察組織には珍しい――女性の係長からの質問だった。

「いえ、まったく」

事実だ。あの頃のほうが肉体的には充足していた。

その後もそれぞれの係長から、質問が続く。

鬼人の捜査について、渋谷の一件での立ち位置、そして――


鬼人と関わった経緯。


自身が死にかけた経緯を話すというのは、これまた乙なものだったが――。

それを浩人が話す間、隣で璃砂はずっと俯いていた。



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