レセプションパーティ/三位明崇
やってしまった。
流石に失礼が過ぎたかも知れない。目上の人間にあの態度……六華の父に大見えを切った手前、明崇は少しだけ後悔していた。
しかし先ほどから六華は、明崇と真夜に。特に真夜にしつこいくらい謝っている。
近衛家の屋敷、木板の渡り廊下を先ほどとは逆方向に向かっている。進めば進むほど、この屋敷のスケールに。明崇は先ほどから驚かされていた。そして隣では六華が、まだ真夜に頭を下げ続けている。
「ご、ごめんね……パパはその、鬼人として“覚醒”した人間をちょっと、特別視する癖があって」
意外だ。六華は父の発言に対し、普段から思うところがあったのだろうか。
「本当、真夜ちゃんには失礼な口調……」
六華がごめんと両の手を合わせる。それに真夜も気が引けるのか首を振る。
「いえそんな気にしないでください。近衛先輩のお父さんですから。覚悟してましたよ」
そう。首を横に振りつつ、こういう事を言うのは実に真夜らしい。
「ん……?むしろそれどういう意味真夜ちゃん。今しれっと、私の事ディスったよね」
「いえいえ、そんな事無いですよ」
やはりこの二人の距離感は独特だな、と明崇は不思議な気持ちで、その会話を眺めていた。
そこで六華がいつになく真面目な視線を、明崇に向けているのに気付いた。
「三位君も、ごめん。本当、気に障るような事ばかり……パパがあんな事言ったのにありがとう」
――護衛引き受けてくれて。
「いえ、俺もすごく……目上の人に対して失礼な事言った気がしますし」
それに。
「俺は……先輩の依頼を受けているだけです。先輩のお父さんに言われたから、護衛するわけじゃありませんから」
そこで真夜が思い出したようににやりと笑う。
「意外だったなぁ。明崇もあんな強気な事、言うようになるもんだね」
――伽耶奈さんにも報告しなきゃ。
「へぇ!」
六華は興味津々といった表情だ。その顔に正に、詳しく教えて欲しいと書いてありそうだ。
「止めてくれ」
本当、止めてくれ。今思い起こせばあの時、だいぶ赤面物のセリフを言ったような気もする……。
「じゃあこの部屋で。ゆっくりしててね」
六華に案内された部屋にはすでに剛と亜子がいた。二人とも心配していたのか、どこか物憂げな表情だった。
しかしそのまま部屋に入ろうとすると、六華が思い出したように二人を引き止める。
「あーそうだった。後でさ、ちょっと四人に話あるんだった」
四人……剛と亜子まで?
「明後日さ、そのサミットのレセプションパーティがあるの。それと次いでに当日の会場と、護衛の仕方とか、できるだけ話し合っておこうと思って。うん、それだけ」
――それまでちょっと、四人でくつろいでて?