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D.N.A配列:ドラゴン  作者: 吾妻 峻
第六章 牛頭羅・ニュオズォーラ
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Special Investigation and Repulse for Goblin/藤堂浩人


「ダメだ……門田」

思い出されるのは沖の予言めいた、あのセリフ。

――あの女は、容易にその足を踏み外す。

しかし沖のその顔は予想通りを通り越し、どこか呆れているようにも見える。

そんな中、璃砂が叫ぶ。正に子供が親に泣きつくように。


「今日のっ、ひ、浩人さんどっか、変でしたからッ……ごめんな、さい。じ、GPSで……ッ」

浩人の携帯の位置情報をたどって……ここまで来たと、彼女はそう言いたいらしかった。


だが璃砂の乱入で一瞬弛緩した空気、それが塗り替えられる。

――ザッ。

複数の足音、それが止む間もなく。

拳銃を構えた三人組が、それぞれ浩人の左手、璃砂の横の植木、そして和正の背後から飛び出した。

「いっ……嫌ッ」

璃砂の手が一瞬にして絡めとられる。拳銃をあっけなく奪われ、地面にがくりと膝をつく。

「おい止めろッ」

浩人が叫ぶと高峰の押し付ける銃口の圧力と、同時に震えが。一層強まる。

――悪いな、高峰。

呟いた。背中の気配が、先ほど以上に動揺する。


今だ。


後ろ手に、拳銃を引っ掴む。その銃口を素早く首を屈めながら上に逸らす。

高峰も素早く反応した。拳銃のセーフティを外し、その音で、浩人の動揺を誘おうとする。そのまま、浩人の右腕の関節を極めようと、細い腕を絡みつかせて来る――。


同時に浩人は高峰の左腕を思いきり引っ張る。その腕力に、彼女の体勢が崩れた。


ニューナンブ。

その銃口を突き付ける。その振り返って見た高峰の目には涙があった。

――動揺するな。

素手での組手。先に拳を捉えたのは、浩人の方だった。

男の腕力で組み付く。こめかみにそのまま銃口を移動させると、形勢は完全に逆転した。

「あはは……負けちった」

弱気な事を言う高峰に、浩人の心に黒い罪悪感が残った。



「もういい。藤堂浩人」

沖が根負けするように、言った。

――茶番は終わりだ。

その掛け声とともに、全員が銃口を下ろし始める。

よく見ると沖の横で拳銃を構えていたのは、あの汽嶋太牙だ。

茶番?どういう……。

「藤堂浩人、門田璃砂……お前達二人には既に、辞令が出ている」


はぁ、と高峰のため息が聞こえた。何故かその抵抗しようとする力すら緩んでいる。


「お前らを歓迎する。本日付でその所属先は警視庁警備部SAT、そこに内在する鬼人対策の新部署――」

――SIRG(サーグ)だ。


SIRG……。

Special Investigation and Repulse for Goblin、そう沖和正は言った。


鬼人に対し、特殊な捜査と、撃退を行う組織。直訳するとそうなる。


それが新たな、鬼人対策の部署……?

「すでに……四年前から発足している、出自そのものは警備部だが今では刑事部にも、二重に身を置く巨大な部署だ」

確かにそうすれば、鬼人の刑事捜査と特殊事案に対し同時に相手取る事が出来る、が――。


信じていいのだろうか。

「ちょっと」

しかしそんな話、本当に?

「ねぇちょっと、おいってば」

だがそれで汽嶋が両方の部署に籍を置いていることにも納得がいく、でも……。

「おい、浩人クンっ……藤堂浩人!」

「え、あ、何」

大声に驚きその声の主を見る。高峰がこちらをきつく睨みあげていた。

「さっきからずっと……何処触ってんのよ」

「何処って……」


先ほどから浩人は、彼女の胸部近くに手を回していた。


「いや、これは」

言い訳する間もなく、頬に手痛い一撃が奔る。

「いッ……!」

――いきなり殴ることないだろ!もう三十代だぞ!

先ほどまで真面目に考えていたことが真っ白に、浩人の頭の中から一気に吹き飛んだ。



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