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D.N.A配列:ドラゴン  作者: 吾妻 峻
第六章 牛頭羅・ニュオズォーラ
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迷いもがく/藤堂浩人

藤堂浩人は未だ、迷っていた。

三位明崇があの事件に関わっているという事実は、警察内部では触れてはならない弱み、いわばアンタッチャブルだ。それを。


“日宮高校1-B、三位明崇(さんみあきたか)、15歳。彼がこの事件に深く関わっていると、私は見ている。”


一介の記者にかぎつけられていた。しかも。


あろうことかその身柄は、おそらく反社会勢力側にある。


それを浩人は、誰にも言い出せずにいた。あれ以来、璃砂には口外しないよう口止めはしている。彼女もその事の重大さは認識しているようで。この前からどこか、元気がない。


それにしても気になって。

浩人は璃砂と共に都築実の勤務先、潮汐新聞社を訪れていた。

「御手洗篤史さん、いらっしゃいますか」

手帳を示す。

「警視庁、捜査一課……警察です」


御手洗篤史は壮年の、ダンディなチョイ悪オヤジ、といった風体だった。


彼は潮汐新聞でも有名な、警察関係者との強い繋がりを持つ記者だ。行方不明者の都築実、そして新橋の殺人事件の被害者、槻本武雄の共通の同僚。浩人は彼に、探りを入れてみることにした。


「捜査一課……八係、ね」

名刺を受け取るが、それをすぐデスクに置く。歯牙にもかけない様子だ。

「来てもらって何ですが……」

――私に何を聞きたいんです?

その顔は確かに、困惑しているように見える。だがどこか……わざとらしいような。


考えすぎだろうか。


浩人はゆっくりと、その問いかけにこたえる。

「貴方の記事を、読みました。渋谷で決着した、早稲田通り沿いの連続殺人事件についてです」

――貴方はあの決着に、何の疑問も抱いてないのですか。

「疑問……」

「被疑者射殺とか、そういった事に、恣意性やわざとらしさ、嘘っぽいというような印象を、持ったことはないですか」

そういうとこらえきれなかったのか、篤史は笑い出した。

「おっかしいなぁ、何でそれを、警察(きみら)に言われなきゃならないの」

「それは……」

「警察を疑うのは一種、我々の仕事でもある……でもねぇ。ちょっと自意識過剰、なんじゃない?そんな事いちいち言われるとさぁ」

――本当に何か隠されてるんじゃないかって、疑いたくなるよ。


もう浩人はそれだけで、一言もしゃべれなくなってしまった。



俺は、焦っていたのだろうか。

自分でも、何がしたかったのかが分からない。ただ、強く思ったのだ。

――三位明崇には、背負わせない。

御手洗篤史とは全く、実のある話はできてない。収穫はゼロ。軽くあしらわれた形となった。

「門田、ここでいいか」

流石に彼女の自宅へは遠いので、タクシーを拾わせる。

「あの……浩人さ」

何か言おうとする彼女を、無理やりタクシーに押し込む。タクシーが動き出すと車内の彼女の姿が、小さくなって消えていく。

「よし」


そう……ここからは彼女とは、別行動だ。



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