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D.N.A配列:ドラゴン  作者: 吾妻 峻
第六章 牛頭羅・ニュオズォーラ
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会談/三位明崇

「剛君と亜子ちゃんは、先にお部屋に行っといて?」

これまた広い玄関をくぐりしばらく歩いて、やけに広い廊下に出た後、六華が言った。

「後は小梢が案内してくれるから」

彼女は小梢という、和やかな雰囲気の、しかし笑顔の似合う、幼い顔の女性を連れてきた。


彼女は近衛家の、使用人なのだという。


「俺たちは……」

「うん、パパが三位君と話したいって」

しかし解せない。

「真夜も、ですか」

「うん……多分、直感だけど」

――真夜ちゃんが、傍にいてあげた方がいいと思う。

隣でハッと、真夜が息をのんだ。


明崇が真夜と共に連れてこられたのは、廊下とは違う洋式建築、絨毯の敷かれた息の詰まりそうなほどに広い部屋だった。

中心にあるのはアンティーク調の長机。そして明崇たちと机を挟んで向かい合う位置に――

男が一人。座っている。


「やぁ、明崇君」


初対面にしては馴れ馴れしい。その初老の男がカチャリと手に持つフォークを置く。


この人物が……御三家の一角、現近衛家の当主、近衛一(このえはじめ)、か。


「六華も、ご苦労だったね」

にこやかな表情だ。しかし明崇の横を一瞥し、その表情が鋭く、冷たいものに変わる。


――脇にいる子は……誰かな。


その眼には分かりやすい、排他的な感情があるのを、明崇は瞬時に見抜いた。


軽蔑。


「真夜。桑折真夜。明崇の付き添いです。明崇が一人じゃ、危なっかしいので」

明崇が何か抗議しようとする前に、真夜が冷静な口調でそう言った。

その視線が、一のそれとぶつかる。


彼は根負けしたように目を逸らし、そしてまた、笑顔を作る。

「それは失礼した。そうだね。じゃあ彼女にも」

後ろ手に指さしジェスチャーをする。机を見ると明崇達に近いそこには、二人分の夕食が置かれていた。恐らく真夜のものも用意してくれる、とそういう事だろう。


それにしても一の背後の使用人。その気配に気が付かなかった。



「最初に、説明していただきたい事があります」

真夜の料理が置かれてすぐ、明崇は言った。しかし、その先を遮られる。

「いやその前に」

――まずは食べよう。

明崇と真夜は戸惑いつつ、六華に倣って席に腰かけた。


運ばれてくる料理は、どうやらコース形式であるようだった。

明崇の今までに見たことしかないような、何とかのムニエルとか、何とかの何とかソース添えとか、そんな名前がついていそうな料理ばかり。

六華がそれを綺麗に口元へと運ぶのを見て。明崇もようやく、食べ進める決心がつく。


一が切り出したのは、丁度冷製のスープが運ばれてきたころだった。


「説明してほしい、か」

――そう言ったね。

明崇はスプーンを置き、前を向く。近衛一と、目が合う。

「はい」

「はは、食事は続けながらでいいよ」


「分からないんです」

「何が、かな?」

眉をひそめ、一は逆に問い返してきた。

「提案は娘……六華から既に伝えてあると思うけどね?」

――私達を、守ってほしいんだ。

それは、確かに聞いた、けど……


「事実、俺に守ってもらう必要性、無いと思うんですけど」

明崇は正直な意見を、素直にぶつけることにした。


この屋敷に足を踏み入れてからもひしひしと感じる。近衛家が巨大な財力と、権力を持っているという事は、どうやら事実。明崇自身彼らが御三家を名乗っていることに、全く疑いを持っていない。

思い出す。明崇に襲い掛かった近衛家の鬼人は、十分すぎるくらいに訓練されていた。


そう、俺がいたところで――。

「何の戦力にもなりはしないと思いますが」



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