演舞/三位明崇
ゆったりと、しかし激しく。彼女らは舞う。
ひらりと宙を舞う赤い袖はその優雅さを演出しているが、それを纏う彼女らの激しい動きに、あっちにひらひら、こっちにひらひら。翻弄されるように、時に鋭く刺さるような動きを見せている。
その指先の動きにまで、目が離せない。
女子の応援合戦、赤組のターン。
「すっげ……」
明崇の隣に立つ剛が、息をのんだ。
貴賓席の真後ろの特等席。明崇、亜子、剛の三人は真正面でその演舞を堪能していた。
演舞を踊る女子は全部で17人。ルックスもダンスも選び抜かれたエリート集団だ。
十人は背後のポジション、いわゆるバックダンサー。それに対して前方に七人がいる。
最前列中央の位置、つまりセンターは六華と真夜だ。二人は二羽の蝶のように華やかに、太鼓のリズムに合わせて前を譲り合い、時に肩を並べあい、舞っている。
「うっわぁ真夜ちゃんキレイ……セクシーだね」
亜子は憧れるような表情でそれを眺め、
「レベル高いな……なぁあれから何回練習したんだ?」
剛は先ほどからやけに関心している。
明崇も先ほどから、熱に浮かされたように真夜を見つめていた。
――真夜ってこんなに、可愛かったっけ。
そりゃ、相当な美人なのはずっと前から知っている、けど。
真夜は真剣そのもの。正に魅せる踊りを舞っている。そんな中真夜の目が、バチリと明崇にぶつかる。
流し目。
粘つく糸を引くように、後ろ髪を引かれるように、それとも追いかけてきなさいとでも言いたげな色気たっぷりの真夜の目が、明崇をチラリと一瞥する。
心臓が、突然強く拍動した。
「あ、ねぇねぇ!今真夜ちゃん、亜子にウィンクしたよ!」
亜子の声が遠くに聞こえる。その声に明崇は我に返り、真夜から慌てて、視線を離す。
演舞が終わり、舞っていた17人が、掃けていく。それも貴賓席の右脇、亜子が迎えに行こうとそこに駆け寄っていく。剛が追う。明崇も若干の気恥ずかしさを抑え込み、後を追った。
17人の中、真夜を探してしまう自分が少し嫌だった。わざとピントを外すと、ぼやける視界、赤い衣装を着た集団がボンヤリとした塊になる。しかしその塊から、誰かがこちらめがけて、飛び出してくる。
すぐに衝撃。
「お、おい、真夜」
「さっきから何?寂しそーな顔してないでよ」
――明崇。
胸の中。見上げて来る真夜の顔は演舞の時とは別人、年相応な少女のものだった。