三日後/三位明崇
六華が心の内を話してくれたのは、昼休みになってからだった。
「やっぱり……あまり他の人に、聞かせられない内容かなって」
本人も冷静になったのか。待ち合わせ場所は屋上。明崇、真夜は勿論の事、剛と亜子も、話を聞きたいとのことだった。
「それで、話って」
明崇の問いかけに対し、六華はおずおずと、その口を開く。
「この前は、すごく曖昧なカンジになっちゃったけど」
明崇はこの前の、六華の涙を思い出す。
――私達を守って。
「本当に今すぐ、君たちの助けが必要っていうか……」
助け?今まさに、近衛家が危機に直面しているかのような言い方だ。
「私の父・近衛一は……現段階での近衛家の当主。それは勿論、知ってくれてると思うけど」
――その一方で政府の要職に、深く食い込んでいる。
要職?
「父は……一は。外交官なの」
――ここで問題です。
「九月中に、彼には大きな仕事があるの。外交官として、とても大切な仕事……さてそれは、一体何でしょう?」
え……?
外交官の仕事?外国に行く、とか?想像がつかない。自覚している。明崇は世間知らずというか……こういうのに疎いのだ。
その代わりに。明崇の右に控えていた剛が、ぽつりとつぶやいた。
――日中韓、首脳会議。
「当たり。鋭いね、登田クン」
日中韓首脳会議。確かに最近、ニュースでよく耳にする言葉だ。
「話し合われるのは……基本的に領土問題。尖閣諸島とかそこらへん。後は日中韓協力がどうとか」
――表向きは、ね。
「真の会議の目的は、アジアを中心とした鬼人勢力、その対策プランについて。牛頭羅の首領はその会議の妨害と対策プランの奪取を狙っているみたい。会議には私もついていくことになってる。十中八九、というか100%……奴は攻めてくる」
「いつ……ですかその、三カ国の首脳会議は」
六華が悲しげに微笑む。
「三日後。後三日で」
――近衛家と牛頭羅の戦争が始まるわ。