チャイニーズマフィア/三位明崇
「私を守って、今年に入って13人、近衛家の人間が、死んだわ」
衝撃的な告白の後……それでも彼女はゆっくり、言葉を区切って語りだす。その声が徐々に、涙ににじんでいく。
「近衛家の歴史は……とても古いの。過去に鬼人を統治してた帝、それに仕えた近衛兵、誇り高い武家だったっていうよく分かんない言い伝えもあるくらいだから。たくさんの牙鬼の鬼人と婚姻関係を結んで、牙鬼としての血を濃くしてきた」
――だからしょうがない。
「狙われてるのは……たぶんあたし。鬼人でありながら日本警察にパイプを持ってる、その上に牙鬼として優秀な遺伝子……それを狙ってる」
「誰だ。その、あんたを狙ってる、ってのは」
「テロリストだよ。鬼人のチャイニーズマフィア・牛頭羅」
さらりと、物騒な事を言って見せる。
牛頭羅……。
「首領は日系中国人……一か月前から日本での活動が活発化してる」
それで13人。やられたというわけか。
「正直に言うね。私達じゃもうどうにもできない」
全校集会の時のように、四人の顔を見渡す。しかしその目にはあの時には無い、思念の様なものが宿って見える
「お願い三位君。近衛家を助けて」
そして彼女は意外なほど深々と、その頭を下げてみせた。