表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
D.N.A配列:ドラゴン  作者: 吾妻 峻
第五章 近衛兵・ジンウェイビン
143/287

正体/桑折真夜

階段を、一段飛ばしで駆け上がる、三階の渡り廊下を見渡すとそこに、複数の人影が見えた。


どうやら三人。


一人は距離を取り、肩を押さえながら、渡り廊下の端っこでうずくまっている。


そして残りの二人は、どうやら組み合うようにして密着して立っている。


制服を突き破り背中から飛び出した紫色の鱗に覆われた、腕のような形の触手、そして腰の下から伸びた蛇のような尻尾。


それが、がっしりと獲物を捕らえるように、組み付いているのだ。


「明、崇……」


呼びかけた、真夜の声に、組み合ったうちの“組み伏せている方”がぎこちなく振り向いた。


明崇に向かって歩み寄る。後ろに亜子と剛を連れて、連絡通路へと踏み出したその時。


「はいはーいそこまでー」

背後から、近衛六華の、間延びした声が響いてくる。振り返ればその姿の隣に、あの、大黒という男子生徒の姿もあった。


「いやーやっぱし明崇君はお強いね~。いきなり襲うように指示したのは私だけど……」

――許してちょ。


襲う……襲わせた?


「近衛、六華……あんた明崇を」

「うん、襲わせた。まあそれには海よりふかーい事情があるわけだけど」


先ほどとは打って変わって、落ち着いた、大人びた、全校生徒を前に演説を始めようとするかのような、その声。


「これはー、そうだね。オーディション?君がふさわしいかどうか」

「……何に」

――ふさわしいって?


そこで明崇の、やけに低い声が響く。真夜でも、こんな低い声音を聞いたことはなかった。


明崇が、押さえていた男を突き飛ばす。男は抵抗せず、その場に転がった。


「今ここで、釈明しろ」


向き直った明崇がこちらに向かってくる。その眼は真夜を通り過ぎ、近衛六華に向けられていた。


「おい、明崇落ち着けって」


真夜の後ろにいた剛が、引き留めるように言う。明崇のいつもとは違う口調に、若干戸惑っている、そんな感じの声だった。


「そ、そうだよ……アキ君どうしちゃったの?」


亜子も先ほどから、何が何やらという表情で、明崇に声をかける。


「説明する気がないのなら、貴方がどうなるかはわかりきってる」


――貴方(あなた)程度(ぐらい)、二秒で殺せる。


明崇に、どうやら剛と亜子の声は聞こえていない。それとも聞こえないふりをしているのか。


そしてその明崇の脅しに。近衛六華はまた、悠然と微笑んで見せた。


「うん、それはさ。明崇君なら私を殺すのは訳ないと思うよ?でもそんなことしちゃうと」


――ほら、後ろの二人。



「近衛家……私の家族が、黙ってないかなって?」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ