急襲と迎撃/三位明崇
振り返っている、暇はない――。
凌げるか?
足を後方に突き出す、襲い掛ってくる敵に、半身で向き合う形になる。
袈裟に背負った金剛骨製の日本刀・神薙に、竹刀袋のまま手をかけて――。
「……ングッ」
受け止めたその物質は、想定していたもの、その想像を遥かに上回っていた。
手に伝う痛み、衝撃、間違いない。
鬼人の、金剛骨――。
襲い掛かってきた二人は、誰が見ても分かるほどに、既に怪物染みた形相をしている。
明崇が受け止めた一撃は、鬼人化した一人目の迷彩服の男、どうやらその腰の下から伸びた、灰色の金剛骨によるもの。
そしてもう一人が、背後から、形状、色ともに似た金剛骨の尾を突き刺すように放ってくる。
時間差。
二本の尾を利用して一撃目のガードで隙を作り、確実に一撃を当てる。
――そういう作戦だったんだろうけど。
素早く、神薙を竹刀袋から振りぬく。追撃、二本目の尾とタイミングを合わせて――。
「ギィン」
反響する耳障りな金属音。明崇は二撃目を、神薙を適切な位置にぶつけることで衝撃を可能な限り軽減。その攻撃を凌いだ。
「聞く耳、ナシですか」
取りあえず、明崇は会話を試みた。大黒が今どこにいるかもわからない。彼も鬼人である可能性がある。背後にも注意を配りながら。
が。
「チッ……」
返事代わりか。再びその尾を振るってくる。
――そうですか。まぁそうですよね。
それならこっちも――
「それなりで行かせてもらいます」
尾の一撃は、大振りだ。これは躱しやすい。後は。
こっちのもんだ。
前方の一人目に対し神薙を突き出す。狙いは首元――
突き。
と見せかけた、袈裟斬り。
どのような動物でも、急所を守る防衛本能は働く。首元を狙われれば、首を傾げて躱す。訓練以前に、本能的に。だからこそ、伸ばした刀が突然下方に沈めば――
「イッ……」
当然肩からバッサリ斬られることになる。
さあ――。
次はどう来る?
地面まで振り切った神薙。そのためにノーガードになる明崇の上半身。
怯まずチャンスとばかりに突き出される、拳。
それには素早く神薙を逆手に戻し、刃をぶつける。
形勢は、圧倒的に明崇に傾いていた。
自身の尾以外に武器を持たない徒手空拳に対し、明崇は神薙の刃でガードし続ける。
相手の拳も、足も、攻撃するたびに傷ついていく。
時折灰色の金剛骨の尾が繰り出されるが、これが明崇に直撃するはずもない。
もう一人の鬼人は中々手が出せない、その状況に歯ぎしりしているようだった。
そう、二人掛かりというのは、互いが邪魔になってなかなか上手く立ち回れないものだ。
しかし相手もさるもの、といったところだろうか――。
「ンッ……」
神薙で上部から切り込む一手。なんとそれを、捌かれた。
――確実に、もらった。そう思ったのに。
間違いない。恐らくこの二人は、訓練されている。
――手練れ、だ。