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D.N.A配列:ドラゴン  作者: 吾妻 峻
第五章 近衛兵・ジンウェイビン
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急襲と迎撃/三位明崇

振り返っている、暇はない――。


凌げるか?


足を後方に突き出す、襲い掛ってくる敵に、半身で向き合う形になる。


袈裟に背負った金剛骨製の日本刀・神薙(カンナ)に、竹刀袋のまま手をかけて――。


「……ングッ」


受け止めたその物質は、想定していたもの、その想像を遥かに上回っていた。


手に伝う痛み、衝撃、間違いない。


鬼人の、金剛骨――。


襲い掛かってきた二人は、誰が見ても分かるほどに、既に怪物染みた形相をしている。


明崇が受け止めた一撃は、鬼人化した一人目の迷彩服の男、どうやらその腰の下から伸びた、灰色の金剛骨によるもの。


そしてもう一人が、背後から、形状、色ともに似た金剛骨の尾を突き刺すように放ってくる。


時間差。


二本の尾を利用して一撃目のガードで(ラグ)を作り、確実に一撃を当てる。

――そういう作戦だったんだろうけど。


素早く、神薙を竹刀袋から振りぬく。追撃、二本目の尾とタイミングを合わせて――。


「ギィン」


反響する耳障りな金属音。明崇は二撃目を、神薙を適切な位置にぶつけることで衝撃を可能な限り軽減。その攻撃を凌いだ。


「聞く耳、ナシですか」


取りあえず、明崇は会話を試みた。大黒が今どこにいるかもわからない。彼も鬼人である可能性がある。背後にも注意を配りながら。


が。


「チッ……」

返事代わりか。再びその尾を振るってくる。

――そうですか。まぁそうですよね。



それならこっちも――

「それなりで行かせてもらいます」

尾の一撃は、大振りだ。これは躱しやすい。後は。


こっちのもんだ。


前方の一人目に対し神薙を突き出す。狙いは首元――

突き。


と見せかけた、袈裟斬り。


どのような動物でも、急所を守る防衛本能は働く。首元を狙われれば、首を傾げて躱す。訓練以前に、本能的に。だからこそ、伸ばした刀が突然下方に沈めば――


「イッ……」


当然肩からバッサリ斬られることになる。


さあ――。


次はどう来る?



地面まで振り切った神薙。そのためにノーガードになる明崇の上半身。


怯まずチャンスとばかりに突き出される、拳。


それには素早く神薙を逆手に戻し、刃をぶつける。


形勢は、圧倒的に明崇に傾いていた。


自身の尾以外に武器を持たない徒手空拳に対し、明崇は神薙の刃でガードし続ける。


相手の拳も、足も、攻撃するたびに傷ついていく。


時折灰色の金剛骨の尾が繰り出されるが、これが明崇に直撃するはずもない。


もう一人の鬼人は中々手が出せない、その状況に歯ぎしりしているようだった。


そう、二人掛かりというのは、互いが邪魔になってなかなか上手く立ち回れないものだ。



しかし相手もさるもの、といったところだろうか――。


「ンッ……」


神薙で上部から切り込む一手。なんとそれを、捌かれた。


――確実に、もらった。そう思ったのに。


間違いない。恐らくこの二人は、訓練されている。


――手練れ、だ。


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