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D.N.A配列:ドラゴン  作者: 吾妻 峻
第一章 鮮血街・ブラッディシティ
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Assaulted by…?/三位明崇

彼女の自宅は中央総武線の路線の高架下を通るとすぐ。到着までもう10分もかからないだろう。明崇も通学時は良くここを通る。もしかしたら今までにも、すれ違ったことくらいあったかも知れない。そう言うと、彼女は珍しいことに、その可愛らしい口を尖らせてみせた。

「そんなこと言ったってアキ君、全然学校来なかったじゃん」

ああ、それもそうだ。

「本当に心配してたんだよ、真夜ちゃん」

その発言は……どう捉えたらいいのだろう。まぁでも。

「もう勝手に休んだりすることは無いと思うから、安心してくれ」

「本当?」

「ほんとほんと」

丁度高架下だった。登田兄妹の自宅はこの高架下を抜けた先一本道の突き当たり。夕方の影が降りて少し暗い。剛や真夜が付き添う気持ちが分からないわけでもないくらいには、不気味だった。


「じゃあアキ君、指切りだ」

道の途中、立ち止まって明崇に指を向ける。

「なんで」

小学生かよ。

「だってぇ」

アキ君約束守ってくれるか怪しいもん、と亜子。

「そんなに信用ねぇのな」

「そ、そういうことじゃなくてぇ」

あたふたし始めた彼女をおいて、先を急ごうとした、その時。


違和感。


あって当然なモノの中に不自然な何かが紛れ込んだような。確実に、周囲に漂う空気が変わった――。


「どしたの?」

気がしたのだが。

振り返る。今度は亜子の方が、突然立ち止まった明崇を見て首を傾げた。

気のせいかな……。

それでも何気なく、辺りを見渡した。


湿った路地裏特有の空気。

スプレーが掠れた壁。

コンクリートに落ちる暗い影。

その端が―― 

一瞬、揺れた。


「じゃあ、アキ君。ゆーびきー、うぇっ!?」

亜子を抱きすくめ、右手を肩にかけ――

ガァンと、耳障りな金属音。

「クッソ」

左腕の中には亜子、竹刀袋で受けた一撃の重さに、腕がしびれる。

「テッ……メェ」

――一体どこから……。


そいつは、フード付きのパーカーのようなものをすっぽりと着込んでいた。


その中の顔も、羽毛のような何かで覆われ、目以外は判別がつかない。

そして襲い掛かってきた長く不釣り合いな刃は、そいつの右腕から伸びている。

獣毛と、腕から正に“生えて”いる攻撃器官。見た目はそのまま、化け物だ。先ほどの動きもどう見ても、並みの人のそれではない。

「シッ」

ヤツの右腕から伸びる刃。それより早く鳩尾に蹴り。それと同時に竹刀袋をズラし、持ち替えて打ち据える。

「ハッ」

――外した。

「え、あの、そのアキ君?」

空気の変化を感じ取ったか、亜子の目には混乱の色があった。

「どいてて」

突き飛ばす。

「さっさと行って」

見られていて気持ちのいいものでは、ない。

「えっ、なん」

「いいから行けって」

早くしないとヤツが。

「来ッ」

ギィンと、高架下に反響する。そして今度は自分から、ヤツは間合いを取った。


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