Assaulted by…?/三位明崇
彼女の自宅は中央総武線の路線の高架下を通るとすぐ。到着までもう10分もかからないだろう。明崇も通学時は良くここを通る。もしかしたら今までにも、すれ違ったことくらいあったかも知れない。そう言うと、彼女は珍しいことに、その可愛らしい口を尖らせてみせた。
「そんなこと言ったってアキ君、全然学校来なかったじゃん」
ああ、それもそうだ。
「本当に心配してたんだよ、真夜ちゃん」
その発言は……どう捉えたらいいのだろう。まぁでも。
「もう勝手に休んだりすることは無いと思うから、安心してくれ」
「本当?」
「ほんとほんと」
丁度高架下だった。登田兄妹の自宅はこの高架下を抜けた先一本道の突き当たり。夕方の影が降りて少し暗い。剛や真夜が付き添う気持ちが分からないわけでもないくらいには、不気味だった。
「じゃあアキ君、指切りだ」
道の途中、立ち止まって明崇に指を向ける。
「なんで」
小学生かよ。
「だってぇ」
アキ君約束守ってくれるか怪しいもん、と亜子。
「そんなに信用ねぇのな」
「そ、そういうことじゃなくてぇ」
あたふたし始めた彼女をおいて、先を急ごうとした、その時。
違和感。
あって当然なモノの中に不自然な何かが紛れ込んだような。確実に、周囲に漂う空気が変わった――。
「どしたの?」
気がしたのだが。
振り返る。今度は亜子の方が、突然立ち止まった明崇を見て首を傾げた。
気のせいかな……。
それでも何気なく、辺りを見渡した。
湿った路地裏特有の空気。
スプレーが掠れた壁。
コンクリートに落ちる暗い影。
その端が――
一瞬、揺れた。
「じゃあ、アキ君。ゆーびきー、うぇっ!?」
亜子を抱きすくめ、右手を肩にかけ――
ガァンと、耳障りな金属音。
「クッソ」
左腕の中には亜子、竹刀袋で受けた一撃の重さに、腕がしびれる。
「テッ……メェ」
――一体どこから……。
そいつは、フード付きのパーカーのようなものをすっぽりと着込んでいた。
その中の顔も、羽毛のような何かで覆われ、目以外は判別がつかない。
そして襲い掛かってきた長く不釣り合いな刃は、そいつの右腕から伸びている。
獣毛と、腕から正に“生えて”いる攻撃器官。見た目はそのまま、化け物だ。先ほどの動きもどう見ても、並みの人のそれではない。
「シッ」
ヤツの右腕から伸びる刃。それより早く鳩尾に蹴り。それと同時に竹刀袋をズラし、持ち替えて打ち据える。
「ハッ」
――外した。
「え、あの、そのアキ君?」
空気の変化を感じ取ったか、亜子の目には混乱の色があった。
「どいてて」
突き飛ばす。
「さっさと行って」
見られていて気持ちのいいものでは、ない。
「えっ、なん」
「いいから行けって」
早くしないとヤツが。
「来ッ」
ギィンと、高架下に反響する。そして今度は自分から、ヤツは間合いを取った。