その思惑/桑折真夜
「明崇のヤツ……何見てんのよ」
「アキ君ずっと真夜ちゃんの事見てたよ」
「は、何あいつ……きもいんですけど」
と言いつつ、顔がカッと熱くなるのを感じる。もう目を合わせられない。明崇から目を逸らす
「んふふ、真夜ちゃん。顔もっと赤くなったね」
何よ。亜子の癖に。
「ませた事言わないの」
むぎゅっと、そのほっぺをつねる。
「うふぉあっ、痛ひよ真夜ひゃん!」
すると背中に、別の種類の視線を感じた。明崇の向けてくる見守るようなそれではない。
「お疲れ桑折ちゃん」
近衛、六華。
「どうだった?三位君の前だと、緊張しない?」
「しませんよ」
むしろ、安心する。そう言いたくなるのを、ぐっと抑える。
「私はやっぱり緊張しちゃうかなぁ!ゾクゾクしちゃう」
――私は、この女が好きになれない。
全ての発言が、真夜を苛立たせるために言っているように聞こえる。ただ明崇の事を狙っているわけじゃない。直感的にそう思う。普段の接しやすいキャラも、何かを隠す仮面なのだろう。
――あんたの目的は、何。
「緊張すること、無いと思いますけど」
――明崇はあんたに、興味ないんだし。
挑むように、睨む。
彼女は、悠然と睨み返してきた。そして。
「桑折ちゃん。三位君は、あなただけのものじゃないよ」
「は、あんた、何言って」
思わずの口調の後、感じた違和感。そして振り返ると……
「明、崇……。どこ」
明崇がいない。さっきまで剛のとなりにいた明崇が、いない――。
「何をしたの」
近衛六華は、依然、その傲慢に見える笑みを浮かべている。
真夜は自覚しないまま、教室を飛び出してしまっていた。