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D.N.A配列:ドラゴン  作者: 吾妻 峻
第五章 近衛兵・ジンウェイビン
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練習風景/三位明崇

「はい、じゃーいったん休憩しよっかー」

近衛六華の鶴の一声で、その場の全員が動きを止め、腰を下ろした。

八月も正に終わる。放課後。明崇は体育祭の演舞練習、その付き添いに来ていた。もちろん隣には亜子と剛も一緒だ。

二階の多目的室を貸し切り、女子の演舞練習は行われていた。もちろん、今この教室にいるのはほとんどが演舞を踊る女子生徒。男子生徒は明崇と剛だけ、というなんとも肩身の狭い状況に追い込まれていた。

「はい真夜ちゃん、アクエリ」

練習が終わるとすぐに亜子が、真夜にスポーツドリンクとタオルを渡しに行く。

「あ、ありがと……亜子」

「んーん、お疲れ様!」

さすがの真夜も連続した練習に汗だくだった。玉のような汗が頬を流れる。ショートの黒髪がしっとりと張り付き、しなりと揺れる。

「真夜ってすごいよな。あそこまで動けると思わなかった」

明崇はここまでの練習風景を見て、至極当然の感想を言った。実際真夜は途中からこの演舞のメンバーに参加したのだ。それなのに飲み込みも異常に早いと近衛六華は言っていた。

「お前は人の事言えないだろ明崇……っておい、なんか睨まれてんぞ」

目を向けると明崇の視線を感じた真夜が、安堵とも、羞恥ともとれるような、どっちつかずの顔をし、睨んでいた。遅れて亜子がこちらを向き、もう一回真夜を見て、何をどう解釈したのか真夜同様、こちらをキッと睨み始める。

「何やってんだあいつ」

明崇が何気なく真夜の、正にその目を見つめると、次は何に耐え切れなくなったのか、ついにその視線を逸らす。

――付き添えって言ったのは真夜なのに。

「見るなって事かな」

「まぁ、気持ちは分かるかもしれないな。見られたくない事もあるんだよ女子には……多分」

真夜から視線を外し、安物の腕時計をちらりと見た。五時十五分。

「帰るの、また遅くなりそうだな」

「そうですね」

剛の声じゃない。顔を上げる。

「どうも、三位明崇君。暇つぶしがてら」

――少しお話し、しませんか。

話しかけてきたのはあの、生徒会の、大黒と呼ばれていた上級生だった。


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