暴かれる事実/藤堂浩人
「藤堂さんどーでした、そっちの」
健人、朱里、璃砂と共に、支給された幕の内弁当を食べる。
「なんていうのかな、新宿の傷害事件とか……暴走族の記事とか、ちょっとピンとこない感じだったな」
「多いですよね。その手の記事」
それを受けて、健人が言う。
「なんか、ただの刑事事件への興味だけじゃなくて、なんすかね。新宿とかそこら辺の土地勘が働いている感じっすよね。新宿の暴力団とか、それこそ半グレ、チャイニーズも、記事多いですもん」
「てことは、そっちの内容も歌舞伎町関連に手広くって感じか」
「そうっすね。チャイニーズといえば歌舞伎町にも多いですし」
新宿の栄華と暗黒、二面性を持つアジア最大の繁華街、歌舞伎町。実際はそこに出入りしている人間、最も多いのは華僑系、チャイニーズなのだという。
「それこそ……アキラに関する記事でも見つかれば、って感じなんすけどね」
そう。捜査員皆、それを期待している。
そしてその記事が見つかったのは、それから5時間後の事だった。
「ちょっと藤堂さん、来てください」
見つかったのは璃砂が見ていたファイルから。どうしても、他の署員には見せたくない書類だという。実はこの手の作業に関しては璃砂はとかく優秀で、その処理スピードは浩人よりも早かったのだ。
「これは……」
ファイル名は、『疑問点:早稲田通り沿い連続婦女暴行事件について.docx』となっている。
あの事件についても、調べていたのか……
――アキラについては、どうだ。
慌ててダブルクリックし、浩人は文書を表示した。
“例の事件、早稲田通り沿いの事件には不可解な点が多すぎる。それに対して世論は、まったく注目していない。そもそも捜査本部の動きからも、連続事件としての認識がなされておらず、新宿に捜査本部がたったのは、すでに件目の事件が起きた後だったように思える……”
文書の書き出しは、そう始まっていた。確かにこの事件の捜査では、連続殺人事件としての初動が遅かった。それは一部のマスコミが注目していた通りの事実だ。
しかしその他にも、彼の言う“疑問点”が列挙されていた。
“また、報道の仕方にも何か思惑が隠されているように感じる。刑事部、公安部、警備部の合同記者会見というのは異常だ。こんなことが今までにもあったのだろうか”
これはさすがに言いがかりだ。本人もその違和感というのを形にできてないというのが大きいのだろう。
しかしこの次に書かれていた内容に、浩人は絶句してしまった。
“そして私はこの事件の不可解な部分に、報道されていない関係者が深く関与したと考えている。まずこれまで報道されなかった関係者、その代表例が実名公表の控えられた未成年者、である。”
未成年者。いや、そんな、まさか……。
“未成年者はどのような形であれ、刑事民事問わず実名公表されることはない。しかしだからと言って、どのような事情であれその罪が問われないのは間違っていると、私は思うのだ。”
そして、スクロールした、次のページに書かれていたのは。
“日宮高校1-B、三位明崇、15歳。彼がこの事件に深く関わっていると、私は見ている。そして5日、私は彼にあいにいk”
そこで、文章は途切れていた。
なんで……、なんで三位明崇の名前が――