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D.N.A配列:ドラゴン  作者: 吾妻 峻
第五章 近衛兵・ジンウェイビン
129/287

巻角の鬼人/三位明崇

8月27日、土曜日。

明崇と真夜は放課後、中野のお気に入りの喫茶店で人を待っていた。話す内容が内容だけに明崇の義姉、伽耶奈もつれてきたかったのだが、彼女自身が関わっている研究のため、伽耶奈は筑波の研究機関に出張中。そのため二人で、その人物を待っていた。

「進展、あると良いけど」

真夜が注文したのは、あっさりとしたアメリカン。こういうところにもさっぱりとした彼女の性格が出るのだろうか。

「進展か」

分からないことだらけだけどな。

明崇は待ち人が現れたのを見て、エスプレッソを勢いよく飲みほした。


「遅れてすまん」

「気にしないでください」

明崇も真夜も席を立ち、礼をした。

現れたのは警視庁捜査一課に所属する現役刑事、藤堂浩人巡査部長、その横で控えた小柄な女性は彼の相方、キャリア警部補の門田璃砂だ。

「すまん、映像処理が何かともたついてな」

アイス二つ。そう注文しながら浩人はそう言った。

「だから気にしないでください。連絡いただけただけで十分すぎるくらいですから」

「で、どうなんですか」

明崇よりも先に、真夜が口火を切った。

――明羅、見つかったんですか。

璃砂が真夜の問いかけに答えた。

「見つかったというよりは……防犯カメラの映像にそれらしき物が映っているって程度なの……」

それに応じて浩人が小さな、タブレット型のデバイスを取りだした。

「だから二人に、確認してほしいんだ」


映像は、思ったよりも不鮮明だった。しかし先ほどの浩人の口ぶりからすると、これでもまだ、見やすい方なのだろう。

細く暗い路地が映し出されている。そこに映っているのは、何とも奇妙な集団だった。真ん中に、白いワンピースの女、そしてそれを取り囲む、動物の覆面を被った、異様な雰囲気の男達――。

真夜も食い入るように、その映像を見ている。

「で、この女が、明羅だっていうんですか」


にわかには、信じられない。


明崇には4年前から行方不明の弟、明羅がいる。明崇にとって真夜、伽耶奈と同じくらい、大事な存在だ。明崇が鬼人に身を落とした時支えになったのは何より、真夜と明羅の存在だったのだから。

しかし明崇が鬼人としての運命を自覚した時、ちょうどそのころ、明崇の両親は殺され、明羅は行方不明となった。明崇はこの四年間をその、弟を探し出すため、そして家族を失った事件、その真相を確かめるために生きてきた。

そんな中、最近になって、とんでもない噂が、明崇の耳に漏れ聞こえてきた。


早稲田通り沿いの連続強姦殺人、その仕切りをしていたのはアキラという、若い女――。


この噂は信用のある筋から耳に入ったため、明崇は酷く混乱した。

そもそも明羅は男だ。しかし明羅はそれこそ幼い当時から女の子に見間違えられてもおかしくないくらいの美青年だったのは確か。実際に警察はアキラという少女が関わっているとして、あの事件の継続捜査を続けている。

本当はその事実すらも、受け入れたくはない。

「……まだそれは分からない。だが」

――これを見てくれ。

浩人が画面をスクロールすると、次は動画ではなく、今の場面をアップした画像の様だった。白いワンピースの女、その隣。一番奥まった位置に、映っているのは――

「巻き、角」

湾曲し円を描く巨大な角。それを頭部に頂く鬼人。明崇はこの鬼人と、四年前と二カ月前の二回、対峙した事があった。そいつが、なぜこの画面に映り込んでいるのか。

「やっぱり、そうなんだな」

そう、事実この鬼人は、二度とも明崇が真相に近づこうとする場面で現れた。

最初出会ったのは、両親が殺された三位家のリビング。

となると、この鬼人の、隣にいる少女は、やはり。

「明、羅……」

画像を見つめ、呟いた。本当に、お前なのか。だとしたらお前がなぜ、こんな事を――。


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