狙い/三位明崇
「じゃあさじゃあさ。代わりにその桑折真夜ちゃん、やってくれない」
「は、あたしですか」
「実は赤組男子メンもそうだけど、女子メンバーも全く足りてないのよねー」
彼女は説明した。
「毎回体育祭の昼休み開けに応援団で演舞やるんだけどさ。基本女子と男子が別々に立ち代わりで交代して踊るの。男子が前半、女子が後半」
「真夜ちゃんにはその、私も踊る後半をお願いしたい、ってことなんだけど、ほら」
――真夜ちゃん華やかだし。
「明崇には……何も強制しないって事でいいんですよね」
「それはもちろん!」
「受けます。でもその代わり」
――私の練習の時は、明崇に常に付き添ってもらいます。
今度は明崇が真っ赤になる番だった。
「あはは、君たちそんなに仲良いんだー」
「言ったでしょ会長、脈ナシです」
なんかそう言う割に、相手の思惑通りに事が進んでしまった気が、明崇にはしていた。
「なんか、すごい通り越してなんやろなぁ」
――大丈夫かいなウチの生徒会。
放課後、中野駅への一本道を行きながら。話題はつい先ほどの“生徒会長B組襲撃事件”についてだった。
「そんなにオカシい人だったか?ウチの生徒会長って」
発言したのは登田剛。別クラス所属の亜子の双子の兄だ。
「いや、何か別の目的があるんだろうな、あの会長には」
あの近衛という生徒会長は本心を平気で偽れるタイプの人間と明崇は判断していた。体育祭の応援団というのも、どこか口実に思えてならない。
「目的って、そんなの見てたら一つじゃん」
――明崇君ってことにならない?
絵里がそう言うのを聞いて、真夜は眉根を寄せている。亜子は当然の疑問を口にした。
「エリッカさんは、アキ君に何を、させたいんだろう……」
何をさせたい、か――
確かに。そこに彼女の狙いは隠れていそうな気がする。
体育祭練習は週末開けから。当日は10日後に迫っていた。