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D.N.A配列:ドラゴン  作者: 吾妻 峻
第五章 近衛兵・ジンウェイビン
121/287

視線/三位明崇

「おおっとォ。これは修羅場やでぇ」


西田が囃し立てた。


「いや、だから……」

「明崇。正直に言わないと怖いよ」


真夜に正面を向かせられる。


「なになに、真夜ちゃんどうしたの?アキ君と喧嘩?」

背後で亜子が騒ぐのも聞こえる。


「ダメッ、亜子ちゃん。子供には辛い光景よ」

「きゃ、エリちゃん」


亜子は手で目隠しをされていた。不倫現場を押さえられた夫、それを問い詰める妻、そして鉢合わせてしまった娘、みたいな爛れた絵面を想像しているのだろうか。


「いや、だから真夜、これはさ」

「あの生徒会長(オンナ)がどうしたの」


どうやら正直に話すしかないようだ。


「あの生徒会長、明らかに“俺達”を見てたろ。真夜と亜子の事も。どこまで知ってんのかなって」

――あの事件の事。



明崇は気づいていた。あの近衛という生徒会長は明らかに全校集会の時、明崇だけでなく真夜と亜子にも、あの視線を向けているように感じたのだ。


あの渋谷の一件で現場に居合わせたのはこの三人を含め、亜子の兄である剛だけだ。


あの生徒会長は、その事を知っているフシがある。


だとすれば、どうやってそれを知ったのか――


「それが気になっただけ?本当?」

真夜が目を見てきた。その目は本当に不安そうに見えた。




「まぁでも。睨まれとったんはやっぱ、確かに、あの事件以外ないやろなぁ」


そう。1-Bのみんなは特に、あの件については他の同級生よりも詳しいのだ。担任が犯人だったという事の他、世間に多くを伏せられた事と言えば。


後藤司の事だ。


1-Bのクラスメイト、後藤司は例の事件に関与していた証拠が出た他、前田君子(まえだきみこ)というB組の女子生徒に対し強姦を働いた容疑があった。渋谷の一件で重傷を負い、今は東京警察病院に収監中とされているが、実際のところがどうなのかは知らない。


「あれも……大変だったよね。ウチ相談受けてたもん」


豊栄絵里(とよさかえり)。前田君子とは親友だったという。


被害者の前田は今も精神科にかかっている。いまだ教室には顔を出していない。


「そりゃ、一番大変だったのは、明崇君たちだとは思うけど……」

いや、それはどうだろう。


最もつらかったのは、今も事件に取り残された被害者遺族だろうと、明崇は思う。




「もーみんな早く掃除してー!」

「あっちゃ、そろそろカナちゃんが激おこぷんぷん丸や」

「だね」


最後に掃いたごみを塵取りに入れ、机をもとに戻し始めた。その時だった。


ガラリと教室のドアが開く。明崇は振り向きこそしなかったが、教室の雰囲気が変わったのは、敏感に感じられた。


「明崇、お出ましだよ」


真夜が近くに寄って来て耳打ちし、明崇は促され、その人物に目をやった。


そこに立っていたのは、先ほどまでの噂の渦中の人物――


「やっほー。こんにちはー」

――三位明崇君、いる?



我が高校の生徒会長、近衛六華その人だった。



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