町長さん
長い廊下を3人で歩いて行く。
廊下の突き当たりを左に曲がってすぐの扉の前で2人が立ち止まった。
「ここだよ」
そうラベルが言うと扉を2回ノックした。
「ラベルと他2名参りました。入室の許可をお願いします」
"ひゃ~。こんなに堅苦しく言うんだ。ますます緊張するよ"
みいさはガチガチに緊張した状態だ。
扉の向こうから声が聞こえてきた。
「おぉ、来たか。入ってよいぞ」
「失礼します」
ラベルが扉を開け、中に入って行く。
アンとみいさも続いて入室した。
中はさほど広くはなかった。
客用のテーブル、ソファとランギリの座る椅子と机、他には本棚や植木などといった至って殺風景な部屋であった。
入室すると、ランギリは椅子に座っていた。
見た目はおじいちゃんという感じで、ゆったりとした布製の服装であった。
3人はランギリの正面に立った。
「ランギリ様。先程お話ししました、みいさです」
そうラベルが紹介すると、みいさは慌てて口を開いた。
『は、はじめまして。みいさと申します。この度はお部屋をお借りさせていただきありがとうございました』
するとランギリは笑いながら応えた。
「はっはっはっ、ご丁寧にどうも。ところで君、ここらの住民ではないようだね」
ランギリはみいさの服装を見てそう尋ねた。
みいさはこの世界に来てから今までの事を全て話した。
ー・ー・ー・ー・ー・ー
「うーん、信じ難い内容だなぁ。ラピスといい、この世界は謎に包まれている。ワシは何十年と生きているが残念だが分からんのだ。君が異世界からこちらの世界に来た理由も。
…だが、ラベルとアンのいるアスール国へ行けば何かヒントは得られるかもなぁ」
「それはオババの事ですか?」
アンが聞いた。
「そうじゃ。それに、あの国はラピス所持者が多いからの」
「はい!なのでディープルでの件が終わり次第、みいさも連れてアスールへ帰国するつもりです」
「そうかそうか。では、それまでゆっくりしていきなさい。あの部屋は自由に使って良いから」
「ありがとうございます。お世話になります」
「では、これで失礼します」と挨拶を告げ、3人は退室した。
部屋を出て歩いている途中にみいさが安堵した様子で話した。
『最初はすごく緊張したけど、ランギリ様優しくて安心した』
「だろう?ランギリ様は良いお方だからな!」
ラベルは和やかに答えた。
3人で話しながらもと来た道を歩き、先程の部屋へ入った。
「あっ、そうだ。俺たち、怪物狩りに行ったりするけどその間、みいさは危ないからこの部屋で待機な?報告はちゃんとするからさ」
「あんなの、ちょちょいっと倒せるから安心してね」
『はい…』
なんだかこれから想像を絶する日々になりそうだなぁと感じた。
「これから外に出たりするのに、その洋服じゃ違和感あるから出店で洋服買いに行こっ!」
アンはみいさの手を引っ張り走り出した。
「じゃラベル、私達ちょっと買い物に行ってくるね」
「おう。じゃな」
ラベルは軽く手を振り見送った。
「アン、私もこの町の服を着るの?お金持ってないんだけど」
道を歩きながらみいさが不安げに聞いた。
アンは笑顔で答えた。
「お金なら私が出すよ!これはプレゼント!それに私、王様からお金沢山持たされてるから全然大丈夫だし!」
『そうなんだ』
「だから、欲しい物とかあったら遠慮しないで言ってね」
『ありがとう。あっ、服屋あった!』
みいさはどの服にしようか少し悩んだが、割りとすぐに決めた。
アンがお会計を済まし、ランギリの家へ帰るべく歩き始めた。
到着後、別室でみいさは着替えて元の部屋に戻って来た。
『どう?似合う?』
「うんうん!すごく似合うよ!可愛い」
「似合ってるよ」
2人から好評を受けた。
みいさの服装は半袖にキュロットスカートといった布製の物である。
『見た目は違うけど、これなら違和感ないね』
そう言うとみいさは、綺麗に畳んだ服を部屋の隅に置いた。