ラピス
目を覚ますと天井が見える。
「ん…あれ?」
「あー!やっと目が覚めた!」
嬉しそうにみいさの寝ているベッドに近付いてきた少女。
「突然、気を失ったから驚いちゃった」
"私、気を失ってたんだ"
「ここは…?」
みいさは上半身だけ起こし、
その少女の方を向いて聞いた。
「ここはランギリ様のお家。もう大丈夫だよ」
「ところであなたの名前は?…あっ、こういうのは自分から名乗ってからだよね!私はアン。宜しくね」
アンという少女はウインクをして名乗った。
胸まで掛かるピンク色の髪には艶があり綺麗である。
「私は安藤みいさ。宜しく…お願いします」
「アンドウミイサ?すっごく長い名前だね!」
「ううん、安藤が名字でみいさが名前だよ」
「ミョウジ?なんだか分かんないけど、ミイサって呼んだらいいの?」
「うん」
"この世界では名字は存在しないのかな…?"
「分かった。私のこともアンって呼んでね!」
"あっ、そうだ、なんか色々と聞かなくちゃ!"
みいさはここの世界の事で聞けることはアンに聞こうと考えた。
「あの、色々と聞きたいことがあるんだけど良いかな…?」
するとアンはみいさの寝ているベッドの端にちょこんと座り、「なんでも聞いてー」と言わんばかりの笑みを浮かべている。
「アンはさっき空を飛んでたけど、あれってー…」
「あれはラピスの力で飛んでるの!…ってミイサもラピス持ってるのに何聞いてんの!?」
アンは驚いた表情で答えた。
「ラピスって何!?」
みいさは目が点の状態で質問した。
「えー!何言ってんのー!!?ラピスって石の事だよ?石の中でも魔力の秘めてる石をラピスって呼ぶの」
アンはミイサの質問することに驚きの連続であった。
この世界では、ラピスを所持している者はその力によって様々な魔力を発揮している。しかし、ラピスは誰が所持しても力を発揮するという訳ではない。その者の波長がラピスと同調しなければ全く効果がないのだ。
なので、ラピスを所持しているのにも関わらず、それを知らないミイサが信じられないのである。
「じゃ、私のこの石がラピスって事?」
みいさは左腕のブレスレットを見ながら聞いた。
「そうそう。しかもそのラピス、フロスティクォーツだよね?とっても希少価値の高いラピスだよ!?多分、この世界でまだ誰も手に入れていないと思う」
アンは珍しいフロスティクォーツを目にして鼻息を荒げていた。
「初めてミイサを見た時にすぐ目に入っちゃって、びっくりしたよ!!」
"このフロスティクォーツってそんなにすごいんだ。でも私のいた世界では、普通にお店に売ってたんだよな~。でも、お店に売ってたフロスティクォーツ全てがラピスっていうものじゃないみたいだから、すごい確率で手に入れちゃったんだ"
ミイサはじっとフロスティクォーツを見つめていた。
アンは小さい声でみいさに話し掛けた。
「そのフロスティクォーツってどこで手に入れたの?」
「えっとー、これは……」
コンコンッ
みいさが答えようとしたら、ドアをノックする音が聞こえた。
「おーい、話し声が聞こえてきたけど、ちょっと入っていいか?」
男性の声がドアの向こうから聞こえてきた。
「はいはーい!どうぞ~」
アンがドアの方を向き、そう答えるとドアが開いて男性が入ってきた。