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言い伝え その1




その四人は、部屋の真ん中の椅子に腰を掛け、テーブルを囲んでなにやら話をしていた最中であった。




そのうちの一人の男が話しかけて来た。


「ハーブから聞いたけど、ラベルお前大変だったらしいな!」


ラベルは頭上から大きな鍋を落とされたような痛みに合った。

反省と今後の課題にはなったが、あまり人に知られたくない事だった為、苦笑いで返した。


「そうだったんですよね~。ハーブ兄さんにはまた助けられましたよ。もっと鍛えます!」


「ま、頑張れよ」


話が長くなりそうで、みいさの紹介をするタイミングを逃したアンは、ここで割り込んでみいさの事を紹介した。


「あ、あの!おババ様がどこに居るか知ってますか?ディープルで出会ったみいさって子がおババ様とちょっと話がしたくて…」


そう言いながら、アンはみいさの背中を押し、みんなに紹介した。


みいさは緊張しながらも口を開いた。


『いきなりですいません。私、みいさと言いま「あーー!おま、君、ディープルでいきなり出てきた子じゃん!!」


いきなり席を立ち、みいさの話を遮り、割り込んで大声を発した男性。

みいさを指差し驚いていた。


みいさは初対面なのに、何故自分の事を知っているのか分からなかった。


すると、女性がその事について聞いてきた。


「え、この前言ってた事?本当なの?」


「本当なんだって。現に本人がいるんだし。俺さ、ラベル達が大丈夫かな~って、こっそり覗きに行ってたんだよ」


それを聞いて驚いたアン。


「えー!来てたんですか!?全然知らなかった」


「空からちょっと見ただけだからな。それで、どこにいるのか探してる途中で、草原辺りに行ったら、いきなり地面が光だしてさ!そしたら、みいさちゃんだっけ?が、突然現れたんだよ」


『私が目が覚めた時は、確かに草原にいました』


「ほら!本当だろ?それをミュールに言っても信じないんだもんな~」


ミュールとは部屋に居た女性の事である。長くて金色の髪を靡かせ、黒い瞳でとても可愛らしい人である。


「初対面でとても口裏を合わせてるとは思えないけど…」


ミュールは半信半疑である。


「あ、そういえばおババ様に用事があるんだよね?私も用事があるから一緒に行こう」


ミュールは立ち上がり、みいさの方へ歩いてきた。


『は、はい。お願いします』


ミュールはみいさの方へ行くと何かを思いついた。


「てか、私達の名前言ってなかったよね。私はミュール。そして、さっき話に割り込んできた人が、エリンダ。で、エリンダの隣がネラーラ。エリンダの向かいがエフだよ」


三人共、どうもという感じで軽く会釈をした。


「じゃ、私達、おババ様のとこに行ってくるね」


紹介を終えるとミュールはみいさの手をとり、おババの元へ向かった。





なんだか緊張が取れないみいさ。ガチガチになりながら歩いている。


『おババ様はどこにいるんですか?』


ミュールの顔を見上げて聞いた。


「この王宮に中庭があるんだけど、そこにいるの」


「ねぇ、さっきのエリンダの話って本当なの?」


エリンダの説明だけでは理解できず、ミュールは単刀直入に聞いた。


『本当です。私、本当は別の世界の人間なんですけど、気付いたらここの世界にいて…ラベルさん達とたまたま知り合って、この事を話したらおババ様なら何かわかるんじゃないかって』


「そうなんだ。ん~でも、別の世界ってあるの?そんな事って…」


ミュールは眉間にしわを寄せて、ますます考え込んだ。

普通の人なら、みいさの話が事実でも受け入れるのに時間が掛かるはずである。


「実はね、私、おババ様に用事なんてないんだ~!みいさちゃんの事を聞いた時に、すごく興味もって早く詳しい事を聞きたかっただけなの」


先程までの、考え込んだ表情からは一転。しかし、明るく振舞ってくれた方のが、みいさも少なからず落ち着く。


そして、二人は階段を降りて一階に行き、中庭へと行くガラス戸の前に着いた。


ミュールは中庭でこちらに背中を向けている人物を指差してみいさに教えた。


「みいさちゃん、あれがおババ様」


老婆と言うだけあって、あまり身長は高くはなかった。

みいさは背筋を伸ばし、気を改めた。


それを見てクスッと笑う。


「そんなに緊張することないよ~」



そして、ミュールはガラス戸を開け、中庭に入って行った。

みいさもその後に続いて中庭へ進んだ。


「おババ様!お客さんだよ」


ミュールに話し掛けられ、中庭の噴水を眺めていたおババがこちらへ向いた。


「ほぉ、誰かね」


「この子、みいさちゃんって言って、ラベル達の知り合いなの」


『初めまして!みいさと言います。あの、今日はお話がしたくて…」



続きを言おうとしたら、ラベルとアンが走って中庭までやって来た。


「ミュールお前、本当はみいさの話が聞きたくて、来たんだろ?俺たちも最初に知り合った仲として聞かないとな!」


「ビックリしたー。ラベルってたまに鋭いよね」


「ミュールが何考えてるかだいたい分かる」



おババはみいさの顔をじっと見て話し出した。


「お前さんの事は、エリンダから少し聞いておる。この世界に纏わる言い伝えで、それが確かならお前さんは、別世界から来た人間じゃ」


「うそ、言い伝えなんてあったんだ」


アンが目を丸くして呟いた。


淡々と話すおババにみいさは冷や汗をかきながら、聞き入った。

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