みいさの心境
ラベルとアンは先日の任務の疲れが取れていないのか、すぐに寝入ってしまった。
『二人共、相当疲れてるんだね』
みいさは自分の座っているベッドから二人を見てそう呟いた。
生まれて初めての船旅をまさか別世界で体験するとは。
これからの壮大な冒険に不安や緊張がますます増していく。
"私、本当に元の世界に戻れるのかな?"
この不安な気持ちをアスール国のオババによって早く拭いたい、と思うばかりである。
『ちょっと、外の風に当たってこようかな』
みいさは立ち上がり、小部屋を出た。
ー・ー・ー・ー
『気持ち良いー!』
晴天のもと、船はすでに出港しており潮風の良い香りが透き通るように感じる。
空を見上げれば鳥が数羽飛んでいる。
『眩しい。あれはカモメかな?』
正面を見ると水平線がはっきりと伺える。海はエメラルドグリーンで、まるで南の海にいるような感覚になる。
みいさは船の淵に両肘を置き、美しい景色に浸っていた。
ー・ー・ー・ー
「んー、いつの間にか寝ちゃった」
目が覚めたアンは寝た姿勢のまま伸びをしていた。
ふと横を見ると、ベッドにみいさがいない事に気付く。
「あれ?どこ行ったのかな?船酔いでもしたのかな?」
「違うよ。外にいるよ」
寝転がったままラベルが言う。
「俺ら二人が寝てから、外の風に当たってこようって言って出てったよ。ま、俺はその時、目は閉じてたけどまだ意識はあったよ」
「そうなんだー。ねぇラベル、私かなりクタクタだよぉ」
「お前はもっと体力をつけないとな」
「だよね。頑張ってるつもりなんだけどね」
ラピスは所持者の体力に比例して魔法の威力が違う。体力の少ない者は魔法の威力が弱く、逆に体力のある者は魔法の威力が強い。
だから、体力をつける事は必須なのである。
アンは技術はあるのだが、体力は人並み程度である。
人並みでも充分戦えるのだが、長期戦となるとなかなか体力が持たないのだ。
実はこの二人、ディープルに来る前は、2週間にも及ぶ戦いをしてきたばかりなのである。
ラベルはそこそこの体力がある為、今はさほど疲れは残ってはいない。
しかし、アンは体力の限界であった。
ー・ー・ー・ー
『そういえば、この世界に来てから何日経ったんだろう』
みいさは水平線の向こうを見つめている。
『お父さん、お母さん、やっぱり心配してるよね。警察に捜索願いとか出してるのかな?』
『ここで私はどうやって生きていけばいいのかな?』
独り言を言っているとみいさの背後に誰かが近寄って来た。




