扉
漫画喫茶にむちゃくちゃ行ってるわけではないが、全く行かないわけでもない。
俺の行く漫画喫茶にはオープン席とブース席があり、俺はいつもブース席のリクライニングを選択して、だいたい3時間パックのフリードリンクのみで利用している。
ネットは、ほぼ利用せずに漫画をひたすら読みまくって3時間を過ごす。
この際に、フリードリンクのために席を立つことがめんどくさいと思ってしまい、いつも3杯ぐらいしか飲んでいないと思う。
久々に行ってみるかな、漫画喫茶。
今日は平日、そして一日中暇な日。
最近急に寒くなったこともあり、遅起きが当然の選択肢だよね。 二度寝も終えて、正午が過ぎた。
昨日コンビニで買ったスナック菓子を食べて、歯を磨いて、着替えて、少しだけ新聞を見てから家を出て、車に乗って、漫画喫茶に着いた。
約1時に受付を済ませ、新刊コーナーを真っ先にチェックし、そこから2冊を手に取り、フリードリンクでペプシ多めとジンジャーエール少しの絶妙なミックスを選び、個室へ入った。
新刊だけは読んだらすぐに戻す心遣いは最低限のマナーだと思うので、2冊読み終えて直ぐに戻しに行き、そのついでに読みたかった漫画の単行本全12巻を取りに、少し離れた棚まで行く。
そこの棚の隣に女性客がいた。
ここは少女漫画コーナーではないが、これもまたよく目にする光景だ。
個室で読むわけだから、誰が何を読もうが関係がないし、少年が大人の雑誌をキョロキョロしながらジャンプとマガジンの間に入れて素早く手にする光景だって別に気にしない。
個室空間というものは、人目を気にしないでいいからこそ、オープン席との差別化ができているというものだ。
ただ、その人目を気にしない空間だからといって何をしてもいいわけではない。
カップルシートで、あんなことをしている奴等は許せない。
ここは誰かの家でもなく、ラブホテルでもない。
漫画喫茶での非常識な行為だと思う。
例えるなら、コンビニで剣道の試合をしているような、それぐらいの場違いだと思う。
それはさておき、俺は俺で読みたい漫画があるんだ。
ごっそり12冊を今は見たことない蕎麦屋の出前を思わせるような持ち方の形に整える。
安定した持ち方になり、立ち上がった瞬間、隣の女性も俺と同じ格好で立ち上がった。
お互いに目が合い、コミュ障混じりな俺はすぐに視線を逸らして、棚に目をやり、女性がその場を離れてから個室に向かった。
視界の遠くにいる女性は俺の個室の隣の個室に入っていった。
隣にいようがそこは個室だから関係のない話だが、少し意識をして自分のブースへと戻った。
漫画を机に積み重ね、さっきの女性がいる方の仕切りを見ると、普段気にしていなかったが、個室の仕切り壁は扉となっていた。
横にスライドさせれば隣との境界がなくなる。
だが、その扉にはスライド式扉ならではの鍵があった。
ばあちゃんの家のトイレのドアと同じタイプの鍵、引っかかってる部分を上げるだけで、外れるタイプの鍵だ。
でも、この場合だとこちらの鍵を開けたところで、隣の方の鍵も開けない限り、開くことはない。
そして、こちらが鍵を開けたところで、隣からは鍵を開けてることも把握できない。
なんとなくだが、音を立てないようにそっと鍵を開けた状態にした。
結局のところ、出て行くときに締めた状態にすれば、一時でも開けていたことは店側にもわからないし、問題はないと思う。
結局のところ、鍵を開けたところで、隣が開けてあるはずもないし、開けてある状態にたまたまなっていたとしても、このドアをスライドさせ開ける勇気も勿論ない。
だから、俺はすぐに漫画を読むことにした。
4冊を読み終えたところで、2杯目のドリンクを取りに行くことにした。
時間もちょうど1時間になったところだ。
2杯目は、違う種類のジュースにする。そのほうが得した気分になるからだ。
メロンソーダとカルピスを半分くらい混ぜたやつを作り、個室に戻ろうとする。
だが、隣に女性がいることを常に頭に入れていたからか、その人の顔を覚えていたからか、普段はあまり目にしない、成人向け雑誌に目が止まった。
だって、表紙を飾るセクシーな女性と、隣に入っていった女性の顔が、シンクロしているからだ。
思わず、普通の雑誌の間にその雑誌を手にしてしまった。
やってることが少年と同じなのはすまん。
そして、誰も見ていないことを確認しようと後ろを向くと、ちょうど珈琲を手にした隣の女性がいた。
まさか、見られたのか。。。?
いや、見られていない!!
すぐさま早歩きでブースに戻り、さっき見た顔と同じ顔をした雑誌を広げた。
サービスショット満載の雑誌をドキドキさせながら見ていると、隣の個室のドアが開く音がして女性が戻ってきた。
隣との扉を意識していた俺は、今は違うものに意識をしている。
防犯カメラの有無だ。
見る限り、ついてないよな?
そして膨らんだズボンに手を当てた瞬間
ガラガラガラ、ゆっくりと扉が開いた...