EP10:奴隷の堕天使
一人の少女が血溜りだらけの村で必死に逃げていた。
ローアシュタイン帝国軍が少女が今まで普通に暮らしていた普通の村を焼き尽くしている。
少女の両親も友人も死んだ。無論、彼らに死ななければならない咎など無い。
けれども帝国軍は殺し続ける。理不尽な大義名分を掲げた『正義』の名の下に。
少女は怒りを抱いていない。
これが常識だったから。これが普通だったから。自分達が虐げられることに何の疑問も抱いてなんて無い。けれども怨んだ事はある。なぜ世界はこんなに自分達に残酷なのだろうかと。
だから逃げた。生きるために、死なないために、自分を殺そうとしている殺戮者達から。
少女の瞳に涙が溜まる。
死屍累々の世界の一員になるのが怖かったから。本能が拒絶している、死にたくないと死を拒絶している。生きていたいと生を願望している。全てを投げ捨ててでも自分の命を守りたい。
当ても無く無限に走り続ける。
兵士達を畏怖しながら走り続ける。あるかもしれない天国を求めて。少女は地獄を走り続ける。
少女は子供のように祈っていた。
もしも、この世界に『救世主』が存在したのなら、どれほど幸福な世界だったのだろうかと思い、『救世主』の出現を祈っていた。
こんな祈りが叶うわけがないと悟っていても祈らずにはいられなかった。
この世界に神は居ない、もしも慈愛に満ちた神様が居るならもっと素敵な世界になったはずだから。
でも、この祈りが叶うなら『悪魔』でも良いと少女は思ってきた。




