EP :覇王の惨死
『少女』の鮮血で汚れた朱い長剣を持った初老の男の目の前には異様な光景が広がっている。
『初老の男』の部下が『魔王』によって四肢をもぎ取られていたり、内蔵をかきむしられたりと悲惨な死に方をしていた。
百近くの死体の中で『魔王』が『初老の男』を憤慨を孕んだ瞳で睨みつける。
「ほぅ、これが魔王ハデスか……まさかシュオルの前にハデスが生まれるとは……」
『初老の男』が目の前の『魔王』に対して独り言を語る。
長年待ちわびた『魔王』の存在に、世界を滅ぼす『魔王』の1人に。
『魔王』は緋色の鎧を身に纏いながら『初老の男』に迫って来る。
紅蓮のカギ爪が男の部下の血で汚れている、男の長剣で汚している血とは別の血で紅蓮のカギ爪は汚れている。
「惨殺す……惨殺す…惨殺す惨殺す惨殺す!!」
『魔王』は憎む、男の罪に。男に罰を与えるために呪文のように言葉を繰り返す。殺意と憤怒と悲嘆を巨大な腕部に込めて叫ぶ、男が殺した人物へのせめてもの鎮魂として。
「惨死ね!!」
『魔王』は怒りに身を任せて拳に全力を込める。感情のまま、目の前の男を惨殺するために声を轟かせて紅蓮のカギ爪から必殺の一撃を放ち、大地を蹂躙する衝撃がその空間に充満する。
これは『正義』の物語。
自分の『正義』を信じ、自分の『正義』に殉じた少年の物語。