マーチとワルツのシンフォニー
おれはハイドリッヒが投げつけた手袋を拾い上げた。
ヒュプノスネットで作法を調べまくったと言うのは秘密だ。フリーの百科事典とは便利なもんだ。
それはさておき、おれたちはコンバットゾーンに移動した。
ハイドリッヒはバンパイアの魔法戦士。夜が得意とはいえ、おれ悪魔ですよ?
顔を見る限り、侘びの代わりにぶち殺されるってわけでもないらしい。
勝算があるのか・・
おれはタヌキを呼んだ。
合図とともに二人の剣舞が始まる。
ハイドリッヒの剣はスキルの美しい軌跡うを描き、おれの聖剣の軌跡がそれと交わり澄んだ音を立てる。
ハイドリッヒの重いマーチとおれの軽やかなワルツがふしぎなハーモニーで共鳴する。
大勢の人がいるのにおれたちの奏でる剣のシンフォニー以外の音は全く聞こえない。
そのうち何人かは気づいた、おれが全くスキルを使っていないことを。
また何人かは気づいた、ハイドリッヒの浮かべる焦りを。
おれだけは感じている、ヒュプノスからの不協和音を。
視界の隅でタヌキがうなづくのが見えた。
おれの剣は一気に加速しフォルテッシモ!
漆黒の大剣がすっと紙が切られるように二つになった。
ハイドリッヒの首筋に刃を当てておれは言った。
「もう、終わりにしようや。」
ハイドリッヒのひざが崩れる。
GMの本性を現したタヌキが宣言した。
「ハイドリッヒさん。不正改造ツールの使用を確認しました。事情を聞いたうえ、アカウントを抹消します。」
チリ~ン おれが剣を戻すと同時にタヌキとハイドリッヒは消えた。
何人かは深く考え込み、何人かは驚愕し、一人は憎悪を込めておれを見た。
人ごみがまたおれの前でふたつにわかれた。
エキストラだったくせに大暴れして困ります。
いやぁこまった。
鬼が泣いてくれなさそうで困ってます。




