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記憶と憎悪

私は考えていた。

「(私...術なんて知らないよぉ...)」

そもそもレオは一体、何が欲しいのだろうか...。



「あ!将軍!

いました!

フローラ姫です!!!」

聞き慣れた声に振り向くと...遠くからフランベールジュ王国の軍隊がやって来た。


やっと私、国へ帰れるんだ!


振り向けば、レオは消えうせていた。





私は兵士たちに囲われ、フランベールジュ王国にたどり着いた。

「大丈夫?」

マーガレット姉様が青ざめた顔で私を抱きしめる。


嬉しいのに...なんでだろう?

...寂しい気持ちがする。

着ているレオのプレゼントを侍女が脱がす。


なんだろう...この胸の痛みは...こんな気持ちは...あの時以来だった。




翌日、改めて私は花嫁衣装に着替えて化粧をし、馬車に乗った。

私の頭の中はレオの欲しかったものを考えることで一杯で何度も話しを聞きそびれた。






そして、私はついに嫁ぎ先の城にたどり着いた。

城の前には結婚式を祝うべく大勢の人が見守っていた。

そして、王子様もイケメン。

なんにも申し分ないはずなのに....



「さぁ、おいで...」

王子様は右手を差し出した。

私も向かおうとしたその時、私の後ろに...

「失礼。

三分だけ時間をくれ。」なんとレオが現れた。

「レオ!どこに行ってたの!?」

私の心は「君への最後のテストだ。

俺が何を欲しがっているか分かったか?」

私は首を横に振った。


「ならいい。」

レオはポケットから何かを取り出すと私に握らせる。


「これは返す。


今まで...ありがとう...。

幸せにな....。」


渡されたのは一枚のハンカチだった。



私の記憶のピースが...繋がった。




「そんな.....」




*********

あれは私が8歳の時でした。

あの時の私はひとりぼっち...私には他のお兄様やお姉様のような特技はなく、いつもひとりぼっちで大好きなダンスを踊っていました...。

「はぁ...つまんないの...」そんな時は花畑に行き、横になります。

私は誰よりも影が薄く、お付きの兵士すら私に気づかなかったのです。

だから私には話し相手もいません。


「こんにちは?」

「きゃっ!」

突然、私の視界に男の子の顔が見え、私は飛び起きました。


「お姫様、ひとりぼっちなのか?」

「うん...」


男の子はやつれた目に、ボサボサの髪をしていました。


「なら、今日から俺、お姫様のナイトになるよ!俺、クリフトっていうんだ!」

それが私とクリフトという男の子との出会いでした...。





あれから私たちはよく出会い、遊ぶようになりました。

庶民の言葉で言う「幼なじみ」という所でしょうか。


「ほら、じゃーん!」「わぁー、すごーい!!!」

クリフトはとても手品が上手でした。

会う度に彼は即興の手品を見せてくれました。


私は、彼を練習台にダンスの特訓をしました。

いつか嫁ぐ王子様に褒められたくて...。



でも...そんな生活も長くは続きませんでした。


「いやああああっ!痛い!痛いよぉ...」

「ええい!やかましい!そんな事もできないのか!この出来損ないが!!!」

私は父に英才教育という名の虐待を受けていました....その時、クリフトは来てしまったのです。

「その手を離せ!

このくそじじぃ!!!」

クリフトは腰にさしていた短剣を抜き放つと父の心臓目掛けて突き刺しました....。



その傷が原因で父は死に、クリフトはその罪で国外へ追放されてしまったのです。

ですが、その前に私はクリフトにプレゼントをしました。


「汗をかいたらこれで綺麗に拭いてね!

クリフト!」

「うわぁ...ハンカチか~。

こんな上物、いいのか?

うん!なんといったってクリフトは私の大事な人だから。」

「そうか...」

クリフトは背を向けました。


「達者でな。」

「待って、」

「?」

チュッ....

クリフトは顔を赤くした。

「次に会ったら結婚しようね♪

私、あなたのことが大好きだから...」



*********

目尻が熱くなる。


そう、彼の正体はクリフト。


私の...最初のお友達で...初恋の人...。

「達者でな...」

私はまたあの時と同じ...辛い思いを私は抱える...。


クリフトがいなくなった後、私は部屋を閉ざし、全てを拒んだ。



あの時のような悲しい記憶を....

私の琥珀色の髪が風に靡く。




そして、憎悪のスイッチが...今、入ろうとしている。


式は順調に進み、私の憎悪もそれに比例するように増幅していった...。

これが、舞剣姫の憎悪。

その憎悪はかつてないほどの力を与える...。


「―愛を誓いますか?」

「はい。」

私は隙を伺う。

一撃で全てを奪う隙を...。


そして、キスの時....

私は動いた。



王子の腰から剣を引き抜くとそのまま喉を掻き切る。

会場に悲鳴が巻き起こり、惨劇の火蓋が落とされた...。





「ん?」

レオが振り向く。

そこに異様な殺気を感じて。


「なっ!?」

レオはその惨劇を見てしまった。

そして、軽はずみに言ってしまった思い出話に...一生後悔することになった....。




私の目には憎悪と、悲しみしかなかった。

奪った剣を使い、美しく恐怖の舞を舞う。

その前にはどんな強者も太刀打ちできず、切り刻まれる。



「ウフフ...フフフフフ」

「もう殺すの楽し♪

まるでゴキブリみた~い♪」


私の舞は無差別殺戮を行う。

人々は泣き叫び、逃げ惑う。

舞に剣の切れ味は悪くなることを知らず、獰猛な牙を見せる。


「あはっ☆

アハハハハハ☆」





レオが着いた頃には、会場にいた人間は死に、有機物の塊と化していた...。


「あら、お帰りなさいませ。」

鮮血に染まったウエディングドレスに点いた脳のかけらを指で掬うと、私は微笑みながら舐めた。


「わたくし、フローラは貴方を愛していますわ。

ですから、結婚は破棄させていただきました♪」

レオは呆気にとられて立ち尽くした...。





フローラ:「あれ?私、何かしてた?

ここは?私の婚約者は?」

レオ:「フローラが二重人格になってしまった~!!!これはまずい、本人がこれを知ればかなり傷つく。ここは適当にやり過ごそう...。(小声)」

フローラ:「あれ?

これは...血?」

レオ:「違う。これはトマトだ。」

フローラ:「トマトなの!?これ!?」

レオ:「そうだ。

今回のトマトは触れると爆発するトマトだった。

死なずに済んでよかったな。」

フローラ:「じゃあ、この死体の山は?」

レオ:「毎年恒例らしい。」

フローラ:「恒例なの!?これ!?」

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