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1.僕の事情

「いいですか、殿下。殿下には御兄弟はいらっしゃいません。殿下が唯一のこの国の跡取りなのです。ですから、わたくしは殿下のためを思って、こう毎日、言っているのです。殿下、お目に入るような令嬢はいらっしゃらないのですか?結婚したいとは少しも考えられないのですか?ここにある絵姿の令嬢たちはみな、見目麗しく、心根もきれいな素晴らしい令嬢たちばかりです。グラマーな美人から清楚ではかなげな感じまで選びたい放題ですよ。少しでもいいと思われる方はいらっしゃらないのですか?」


(結婚、結婚っていわれてもねぇ~)


このマシンガントークを右から左に聞き流しながら、一応、絵姿をめくる。


「この令嬢はクリマト子爵の令嬢リディア様。バイオリンがお得意です。髪の色はブルネットで刺繍もお得意だそうですよ。妹君はハープがお得意だそうですよ。」


次の絵姿をめくる。


「この方はキド伯爵家のリリー様。めずらしい銀の髪をお持ちです。瞳は赤くて、シルフのようだといわれているそうです。お得意なのは詩集の暗唱です。物語を読むのが好きな物静かなかたのようですよ。」


次の絵姿をめくる。


「次の方はラクード男爵家のサナ様。このかたは何と女性ながらに剣を扱うのがお上手とのことです。毎日馬術の訓練も欠かさず行うそうですよ。」


(こいつ、全部覚えているのか。)


思わず呆れてため息がでてしまった。

すかさず注意が入る。


「殿下、ため息をつかれている場合ではありません。殿下もあと、半年で20はたちにおなりです

。もう何年も前から結婚をといわれているではありませんか?少しでも会ってみる気はないのですか?」

「エド。」

「この絵姿ファイルは国内編ですが、国外編もそろえてありますよ。国王陛下はどちらでも、殿下の気に入るかたがいればどこの国のかたにアプローチをかけてよいとおっしゃっています。」

「…エド。」

「政略結婚ではなくて、自分で選んでアプローチできるんですよ。うれしい限りではありませんか。私は心から殿下に幸せになっていただきたい。」

「……エド。」

「国王陛下の例を見ておりますと、必ずしも政略結婚がうまくいかないというわけではないことはわかっております。しかしながら、わが君にはぜひとも、おめがねにかなった方をと思うのです。ですから…」

「エド!!」


大声をだすと、さっきから話続けていた僕の補佐官であり乳兄弟であるエリックは黙る。

ため息をつきながら話す。


「お前の心配してくれる気持ちはわかるが、もうちょっと待ってくれ。今はまだ、父上の仕事を覚えていくのに精一杯だ。それに僕と同い年のアーサーだって独身だ。僕には早い。」

「何を仰せられます。その父君様であられる国王陛下は殿下のお年ですでに殿下がお生まれでした。従兄弟君でいらっしゃいますが、アーサー様は公爵家の若君。殿下とは立場が違います。」

「……」

「何事も早めに準備しておけば、苦労することも少なくて済みます。ですから今のうちに…」


ートン、トン。


ドアをノックする音が聞こえる。

入室を許可すると、隣からは舌打ちが聞こえた。


「失礼します。殿下。国王陛下がおよびです。」

迎えにきたのはさっき話にでてきた僕の従兄弟にあたるアーサー・ミーレッシュだった。

彼は騎士団のなかで近衛隊に配属されていて、よく僕の警護につく。

エリックの小言から逃げられるのなら、だれの呼び出しでも構わない。

これ幸いと警護のアーサーとともに、父の元に急いだ。


「また、エドに痛くやられてたな。」

ニヤっといやな笑みを浮かべてアーサーが言う。


「ドアの外まで響いていたか?」

憮然として答えると、

「いや、お前の顔と、エドの顔をみればわかる。」


なんだかおもしろくなかった。


そういえば、僕が誰だか、言っていなかった。

僕の名前フレデリック。フレデリック・イキシア・ランドウィル。親しい人はフレッドと呼ぶ。

この国の王太子、つまり次期国王だ。

金髪・碧眼の王家の特徴を引き継いだ容姿をしている。


僕らみたいな立場だと、幼いころから婚約者とかが決められていてもおかしくはないんだけど、ここ最近は周囲の国との関係も平和なこともあって、僕は特にそういうのは決められずに過ごしていた。

そんな僕もいいお年頃、つまり、絶賛花嫁募集中となった。

僕の花嫁となると、つまりは王太子妃。次期王妃となる。

未婚の女性たち、またその親たちから見れば、相当な優良物件らしい。

立場上、どうしても夜会とかに出席することになることも多いが、そういうところに行くと、周りの目線が怖い。


僕自身は、あまり興味がない。

周りが盛り上がりすぎてしまっていて、引いてしまっているというのが正直なところだ。

焦りもない。

一緒にいて落ち着く人がいいなとは思うが、立場が立場だからこの責任を一緒に背負える人でなくてはいけないとは思う。

お互いの気持ちとかよりも、責任や立場で生涯の伴侶を選ばなければならないかと思うと、ただただ疲れてくるのだった。

登場人物の名前を一人間違えていたのを訂正。何度も連呼された彼です。

なぜ、間違えてしまったのか…敗因は寝不足でしょうか?(10/25)

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