第6話 『言葉は刃になる』
2日間で全10話連続投稿企画実施中!
「Re:Genesis」の事務所、兼 練習場所 に使っている倉庫。
5人は新しい曲の振り入れを行っていた。
ゼノヴィアが中心となって、振り付けを作ってもらった。
そこに僕があわただしく入室する。
「みんな!予選通ったぞ!」
「ええーーーーー!!!!!!」
驚く5人。クールなゼノヴィアも今日ばかりは嬉しさをこらえ切れていない。
――異種族が星魂祭の予選を史上初めて通過した。
その噂は見る見るうちに王国中に広まり、
事務所(倉庫)にもメディアの取材が押し寄せるようになった。
正直、彼女たちを応援している、というよりも面白がっているゴシップ的なニュアンスが強かったが星魂祭の審査には一般投票もあるので認知度が上がるに越したことはない。「物珍しさ」上等だ。
――そう思った、僕がバカだった。
各メディアが魔法写真を撮り、メンバーたちへ取材していく。
センターということもあって、リョーカを中心に行われることも多かった。
そんな取材中、中年の記者がつぶやいた。
「センターの君、どこかで見た顔なんだよな」
「…...え……?」
「そうだ、『夜香草―ナイトハーブ―』で働いてるでしょ!風営法違反で問題になってたところ!」
周りの記者がざわつく。
「ナイトハーブってあの?」「最近、権力者との不倫密会で話題になってた……」
記者たちの見る目が変わる。
「物珍しいアイドル」から「スクープの対象」へ。
リョーカのことを無遠慮に撮影し始める。
「……たしかに過去にそのお店で働いてました。でも私はその問題に関わってないです!」
現場が混乱の気配を帯び始めた時、僕は記者とリョーカの間に入る。
「すみません、今日の取材はこれで終わりにさせてください。
何か質問がある場合は、手紙でお願いします!
必ずご返答させていただきます」
「なんだよ!」と文句を言い続ける記者を事務所から追い出し、
僕はリョーカとメンバーに向き合った。
リョーカは過呼吸になっていた。
無理もない、あまりにも似ている。
謂れのない罪、大衆の批判……前世で彼女を追い詰めた状況と。
過呼吸とは不安や恐怖などの精神的なストレスが引き金となり、脳の中にある呼吸中枢が刺激され、呼吸が早く、短くなってしまうことだ。
呼吸のリズムを正常に戻すため、僕は彼女に声をかける。
「僕がついてます、大丈夫ですよ。ちょっと座って前かがみになりましょうか」
ルルナが椅子を持ってきて、彼女を座らせてくれる。
この時、周囲にいる人間が過剰に反応すると、悪化することがあるので
声掛けをする人間はあくまで冷静に対応することが重要となる。
「空気はちゃんと吸えてますよ、1回しっかり吐いてみましょうか。
吸って、吐いて、吐いてーー……」
そしてゆっくり背中をたたき、呼吸の正しいリズムを思い出させてやる。
リョーカの呼吸がだんだん落ち着いてきた。
「リョーカさん、もし僕の声が聞こえたら、何か喋ってくれませんか?」
「……」
「リョーカさん?」
彼女は口をぱくぱくとさせていて、その隙間から空気だけが漏れている。
口を開けてもらい、喉を確認するも異常なし。
リョーカも異常を感じたのか
喉をさすったり、ゴホゴホと咳払いをしている。
――咳払いは、できている。
しかしやはり声が出ないようで、リョーカは口を開いては首をかしげていた。
――これは……心因性失声だ。
リョーカの精神安定値がAからEまで下降していた。
本日はここまで。
お読み下さりありがとうございました。
明日、最終話まで投稿予定です。
お楽しみに!




