アンコール 『また会えてよかった』
2日間で全10話連続投稿企画実施中!
星魂祭から一夜明け、
僕はみんなの朝食を買いに市場を歩いていると、あの青年とすれ違った。
予選でも、本戦でも真っ先にRe:Genesisに拍手を送ってくれた黒髪の青年。
僕はすぐ気づき、声をかける
「あ!あの、Re:Genesisを最前列で見に来てくれた…!」
青年が「え?」と言って振り向く。初めて顔をしっかり見た。
その瞬間、僕の頭は真っ白になった。
「……星也?」
無意識に口から出たのは12年前に失ってしまった親友の名だった。
時が経っているためか、髪形や体形は記憶の中の彼よりも少し年齢を重ねているように見える。
だけどあの優しげな瞳は、同じ学び舎で夢を語ったあの瞳と同じだった。
もう二度と、開かないと思っていた、あの瞳。
彼も確かに、転移前はアイドルが好きで、僕はよく話を聞かされていた。
「……? どなたか人違いじゃないでしょうか」
青年は不思議そうに首をかしげる。その姿は本当にピンと来ていないようだった。
僕はハッとする。
「いいえ……でもそういう事に、します」
転移前の記憶は持っていたほうがいいとは限らない。
「そうですか、あ、Re:Genesisのライブは2回とも見ましたよ。素晴らしかったです」
僕はお礼をいうと、青年はじゃあ、と言って去っていた。
奥さんと娘らしい小さい女の子が、彼に駆け寄って手をつないだ。
僕はその幸せそうな背中を人混みで見えなくなるまで、ずっと見送った。
≪ 完 ≫
あとがき小話「タロウの握手会初参戦」
越知内タロウは北関東医科大学合格を目指して絶賛4浪中である。
この日、タロウは息抜きと称して談合坂45の握手会に来ていた。
タロウは列に並びながら、胸の高鳴りを必死に抑えていた。
初めての握手会。参考書に埋もれる毎日とは違う、
まったく別の世界に足を踏み入れた気分だ。
「次の方どうぞ!」
スタッフの声に促され、タロウは震える手を前に差し出す。
目の前に立つのは、深夜帯にやっている談合坂45の冠番組に登場していたそのままの宮坂涼香。
髪は光を受けて輝き、微笑みはテレビの中と同じ――でも、今 目の前にいる。
「こ、ここここ、こんにちは!」
ぎこちなく手を握るタロウ。緊張で頭が真っ白だ。
それでも、彼女の手の温かさに触れるだけで胸がいっぱいになる。
「こうして会いに来てくれる人がいると、本当に嬉しいな」
涼香は優しい声でささやいた。
「応援してくれる人がいると、私ももっと頑張れる。……これからも、楽しみにしててね」
タロウは心の中で小さく笑った。
まるで読者の皆に向けて、涼香がそっと「応援してね」と言っているようだ。
握手を終え、列を抜けると、手には残らないけれど確かな幸福感と、
ちょっとした“お願い”が胸に残った。
(……読んでくれるみんなの応援が、俺たちの物語を動かしてくれるんだな)
初めての握手会は、タロウにとって夢と現実が溶け合う、
甘くてちょっと背伸びした特別な時間になったのだった。
◆◆◆
「精神科医召喚 ~推しが死んだので異世界でセンターにします~」をここまでお読みいただき心より感謝申し上げます。
もしよろしければ、ポイント等で応援頂けるととっても嬉しいです。
涼香の握手会に参加している越知内タロウは
拙作「タロウの医学部浪人生活」に登場致しますので
こちらもよろしければ、是非に。
またお目にかかれるよう、精進してまいります。




