第8話_魔法少女同士の絡みは見逃せない
今日は、魔法少女アリスと魔法少女エリザが出会う日だ。
原作でも、ここは重要イベント。
魔法少女同士の初接触。
すれ違いと誤解、そして戦闘。
――見逃すわけにはいかない。
「夜まで待てるか……!」
俺は朝から落ち着かなかった。
魔力視、解放。
自宅の自室から、有栖川の様子を探る。
(まずはアリスの状態確認だ)
視界が切り替わった瞬間、
俺は息を止めた。
「……!!」
映ったのは、白く曇った浴室だった。
シャワーの音が、規則正しく響いている。
湯気で画面はぼんやりと滲み、輪郭ははっきりしない。
「……シャワー中、だと……」
思考が一瞬、止まる。
(推しが風呂)
(これは……)
(ラッキースケベイベント……?)
だが、すぐに我に返る。
「ダメだダメだ」
(俺は観測者だ)
(これは違う、違うぞ俺)
魔力視を解除しようとして、
なぜか一瞬だけ視界が揺れた。
水音。
「……くっ」
「違う、これは不可抗力だ」
(不可抗力という名の事故だ)
俺は深呼吸して、魔力視を切った。
「よし……じゃあ、小早川の様子でも見るか」
魔力視、再展開。
「……」
次に映ったのも、同じように湯気に包まれた空間だった。
「…………」
数秒、無言。
「……なんでだよ!!」
(なぜ二人とも今なんだ)
(風呂率、高すぎだろ!!)
偶然にしては出来すぎている。
俺は額を押さえた。
「今日は……そういう日なのか……?」
魔力視を即座に解除する。
「……夜だ」
「本番は夜だ」
そして――夜。
街の上空に、高い魔力反応。
有栖川はすでに、魔法少女アリスとして飛んでいた。
「この反応……」
ビルの屋上から、魔力の源を見下ろす。
そこにいたのは。
――見知らぬ魔法少女。
黒と紫を基調にした戦装束。
六芒星の魔法陣を背負うように展開している。
魔法少女エリザ。
「……そこで、何してるの」
アリスが警戒した声で問いかける。
しかし、エリザは答えない。
ただ、じっとこちらを見返してくる。
(原作通りだ)
(ここで、すれ違う)
アリスは魔法生物を倒すために戦う魔法少女。
だが、エリザは違う。
――願いのために、魔結晶を集めている。
目的が違う。
だから、言葉が噛み合わない。
「……邪魔、しないで」
エリザが低く言った。
次の瞬間。
魔力が衝突した。
戦闘開始。
アリスは、円形の魔法陣を二重展開。
まだ基礎形だけの構成。
対して、エリザは六芒星魔法陣を複数展開する。
魔法陣を重ねる二重展開はできないみたいだが、
六芒星魔法陣は単純に出力が高い。
(原作なら……ここはエリザ優勢)
だが。
「……ん?」
俺は違和感を覚えた。
アリスの瞳。
その中に――
六芒星が浮かんでいる。
(あれは……)
(魔力特異体質)
(本人はまだ自覚してないが……)
オッドアイに宿る魔力が、
魔法陣と共鳴している。
円形二重魔法陣が、わずかに歪み――
構造を変える。
「……バスター、シュート!」
アリスの魔法が放たれた。
光。
衝撃。
爆音。
煙が晴れたとき。
「……まさか」
魔法少女エリザが、片膝をついていた。
完全な敗北ではない。
だが、明らかに撃ち負けている。
「……今日は、引くわ」
そう言い残し、エリザは後退した。
(原作と……違う)
あの夕暮れの敗北。
そこから、アリスは確実に強くなっている。
魔力が増している。
魔法陣の構造も、変化し始めている。
円形から、六芒星へ。
(原作改変……進行中、か)
俺は空の上で、静かに息を吐いた。
魔法少女同士の出会いは、
本来なら、すれ違い、エリザ優勢で終わるはずだった。
だが――
この世界は、少しずつ、
“俺の知っている物語”からズレ始めている。
それでも。
(やっぱり……)
(魔法少女同士の絡みは、最高だな)
俺は、夜空の下で小さく笑った。
作者( ゜Д゜):設定が複雑になろうが、目に魔法陣を入れたかったのだ




