第4話_変身シーンは見逃せない
ある夜。
有栖川は、ビルの屋上に立っていた。
夜風に青いプリーツスカートが揺れ、
街の灯りが、その背中を縁取る。
眼下では、魔法生物が徘徊している。
「……見つけた」
小さく呟き、
彼女は胸元のアクセサリー型デバイスに触れた。
俺は、その様子を少し離れたビルの上から魔法で見ていた。
(来る……)
(この高さ、この構図……)
(原作二期、第三話と同じだ……)
ビルの縁に立った有栖川は、
一歩、前へ踏み出す。
そして――
落ちた。
否、落ちると同時に、
宙で身体をひねり、
空中で静止する。
アクセサリーが光を放ち、
澄んだ電子音が響いた。
《I believe, master》
彼女のデバイスが発光し。
光が、弾けた。
白と蒼の魔力が、
夜空に円を描くように広がり、
彼女の身体を包み込む。
(……この間)
(この“間”がいいんだ……)
(空中からの変身、そしてポーズ、この演出……)
服が魔力の光に溶け、
魔法少女戦装束へと変わっていく。
布地ではない。
鎧でもない。
魔力そのものが、
衣装の形を成していく。
足先から、腰へ、胸、肩へ、
そしてアクセサリ型デバイスが槍型の杖へと変形する。
空を飛ぶ。
(飛行魔法、解禁……)
(やっぱり……
空中変身は、地上より映える……)
魔法陣が強く輝き――
変身は、完了した。
魔法少女アリスが、
夜空に立つ。
(……っ)
思わず、息を呑む。
(美しい……)
(二期一話によりバージョンアップした新衣装)
(戦うための姿なのに……
完全に、様式美だ……)
彼女は一度、周囲を見渡し、
魔法生物の位置を確認すると、
一気に加速した。
夜の街を、
一直線に切り裂くように飛ぶ。
俺は、それを追うように、
視界を魔法で拡張する。
(変身を見守るのは……
俺の役目だ)
(幼馴染として、
魔法少女オタクとして)
(今日も、最高だった……)
空を舞うアリスの背中を、
俺はただ、黙って見送った。
昼は、同じ教室で並ぶ少女。
夜は、空を飛ぶ魔法少女。
その両方を特等席で余すことなく見る。
この想いだけは止められない――
それにしても……
現実の世界でも、
あの“謎の魔力光”は、
やっぱり突破できないらしい。
(くっ……)
(だが、いい……)
(健全なる光に守られた変身演出……
それもまた、魔法少女の様式美……!)
俺は今日も、
誰にも知られず、
夜空を舞うその姿を見送った。
幼馴染として。
そして――
魔法少女オタクとして。
作者( ゜Д゜):変身シーンは様式美




