第15話_初めての思い出は色あせない
夢を見ていた。
懐かしい記憶の断片を、ひとつずつ拾い集める夢。
「わたし……ありす……って呼んで」
それは、陽だまりのような記憶。
幼稚園のブランコ。
まだ幼い有栖川時寧が、少し照れくさそうに、けれど真っ直ぐに俺を見つめて言った言葉だった。
あの日、俺は悟った。
この世界が、かつて俺が知っていた――
『魔法少女アリス』の世界だということを。
同時に、一人の転生者として、
彼女の隣で平穏を守り抜くと誓った日でもある。
(……昨日、魔法幼女を見たからだろうか)
(思い出が、こんなにも鮮明に蘇ってくる)
最初は、隣の家に住んでいるのが彼女だなんて、考えもしなかった。
俺たちは当たり前のように一緒に遊び、
俺は転生者のアドバンテージを使って勉強を教えたり、
ただの幼馴染として、代わり映えのない、けれど愛おしい日々を重ねてきた。
(俺が十歳の時に起きた、あの「超次元振動」……)
(今思い出しても、冷や汗が出る)
夜の富士樹海へ、黙って向かったせいで、大人たちは大騒ぎになった。
その混乱はお隣にも伝わり、
アリスは「俺がいなくなる」と泣きじゃくっていた。
(……あの涙が、今も胸に残っている)
そして季節は巡り、十一歳。
原作アニメ第一期の時間軸と、現実が重なった。
学校帰りの裏道。
俺は物陰から、魔法で作った「覗き窓」を通し、その光景を見守っていた。
路地裏の隅で、力なく横たわる一匹のオコジョ。
傷つき、魔力を失いかけたその存在を、アリスは敏感に察知していた。
魔力と親和性が高すぎる、彼女の特異体質。
魔法という概念を知らなくとも、
「そこに何かがいる」
「助けを求めている」
それを、本能で感じ取っていたのだ。
絶望の淵にいたオコジョは、
その純粋な光に、最後の力を振り絞った。
『……僕が、僕の魔力と、周囲に漂う高濃度魔力を無理やり制御する』
『だから……』
震える声が、アリスの意識に直接響く。
『君は、強く願って……魔法少女になる、と』
理由なんて、必要なかった。
目の前で消えかけている命を救いたい。
その想いだけで、彼女は小さく、しかし迷いなく答えた。
「……うん」
次の瞬間、路地裏を青白い光が満たした。
魔力が渦を巻き、
彼女の願いを糧に、世界の理が書き換えられていく。
(始まったな……)
(魔法少女アリスの物語が)
光に包まれる幼馴染の背中を見つめながら、
俺は静かに覚悟を固めた。
これから彼女が歩むであろう過酷な道。
それを、誰よりも近くで、
誰にも知られずに支え続ける。
それが、この世界に招かれた
「俺」にしかできない、唯一の役割なのだから。
――魔法少女アリスの始まりの物語。
*
朝、目を覚ました。
「……懐かしい夢だったな」
天井を見上げて、息をつく。
「原作アニメ一期、一話……」
「何度見ても、いい話だよ……」
作者( ゜Д゜):原作アニメ一期は正統派、魔法少女スタイル
オコジョ:キュ、キュィ……ッ(オコジョ語は魔力を感じられないと理解できないよ。)
作者( ゜Д゜):じー。オコジョしっぽ白いぞ。今は、こすり過ぎて黒くなったのか?
オコジョ:キュィ……ッ(願った後から黒くなったんだよ。擦ったわけではないぞ)




