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第12話_ダブルデートは止められない

俺は――

とんでもない選択をしてしまったのかもしれない。


有栖川時寧。

小早川エリザ。

この二人をデートに同時に誘う。


いわゆる――

ダブルデートである。

言い方、合ってるか?


両手に華。

人生のピーク。

……のはずなのに。


同時に、

地雷原をスキップ移動している気分でもあった。

(選択肢、間違えたら即バッドエンドだぞこれ)


俺はこの瞬間だけ、

ギャルゲー主人公の精神をインストールする必要がある。

・片方だけ見すぎない

・両方を相手に話する

・沈黙は敗北

・笑顔は最大火力


(好感度パラメータが見える魔法、欲しい……)


くだらないことを考えながら、

目的地に到着した。


噴水の前。

挿絵(By みてみん)


俺が走ってくると、

二人はすでに並んで待っていた。


「ちょっと遅いわよ」

「……ですわ」


アリスとエリザは頬をふくらませている。


「ごめんごめん、怒ってる?」

「……遅れたこと?」


アリスは一瞬だけ視線を逸らした。

「……別に怒ってない」


沈黙。

噴水の水音だけが響く。


(やばい、空気が重い)


「その……」

俺が言いかけた、その時。


通り過ぎた子どもが走ってきて、

噴水の縁で足を滑らせた。


「わっ――」


ぶつかる。


その拍子に、

アリスの身体が俺の方へ傾いた。


「きゃ――っ」


反射的に、抱き止める。

腕の中で、アリスが固まる。


「……っ」

距離、近い。

近すぎる。


「……ご、ごめん!」


慌てて離そうとした瞬間。

今度は、エリザがよろけた。


「きゃ……!」


結果。

左右から、同時に。

俺に、抱き着く形になる。


「…………」

「…………」

「…………」


完全にフリーズ。

周囲の通行人が、ちらっと見る。


「……あの」


アリスの声。

「……離して」


「ご、ごめん!!」


アリスは頬を赤くしてるが、

言葉とは裏腹に手を離してくれない

挿絵(By みてみん)


(離せない…)


エリザは、ワンテンポ遅れて。


「……ずるいですわ」

ぽつり言う。


「え?」


「いえ……なんでも」


(なんでもじゃなさそう)


アリスは小さく咳払いしてから言った。

「……別に、怒ってるわけじゃないの」

「ただ」

「最近、ちょっと……」


言葉を探すみたいに、間が空く。

「……距離、遠い気がして」


胸がちくっとした。


「俺?」


「……うん」

「エリザとばっかり話してるし」


エリザが、ぴくっと反応する。

「……そう、見えますの?」


「見える」

きっぱり言われる。


「……二人でいると、私、邪魔みたいで」


沈黙。


「…そんなつもり、なかったんだけどな」

「エリザと話すのは……」


言いかけて、止める。

(魔法のことは言えないし、変に嘘言うと地雷になりそうだ)

(俺のアリスへの本心を告げる)


「……幼馴染として甘えてたかも。アリスの方が、話しやすいことも多いし」


アリスが、少しだけ目を丸くする。

「……ほんと?」


「ほんと」

「むしろ」

「最近、元気ないの、気になってた」


アリスは、驚いた顔で俺を見てから。


ふっと、力を抜いた。

「……ばか」


気まずい雰囲気になってしまった。

話題を変えるためにエリザが話を振る


「……それよりも」

「今日は、どこに行きますの?」


俺は、少し考えてから言った。


「映画館」

二人が同時に、俺を見る。


「祐司、考えてたんだ」

「……そうですわね」

「俺を何だと思っているんだ」


物語は、

静かに進んでいく。


俺たちは、歩き出した


アリスのこと、エリザのこと。

考えなきゃいけない。これからの行動


でも今は、デートを楽しもう。


噴水の水音が、

少しだけ遠くに聞こえた。


映画館に到着し、チケットカウンターを前にして、俺は本日二度目の「究極の選択」を突きつけられた。


「……ねえ、何の映画を見るの?」


アリスが掲示板を見上げながら、上目遣いで聞いてくる。

その後ろで、エリザがすかさず言葉を重ねた。


「わたくし、最近話題の全米が泣いたラブストーリーが見たいですわ」

「えっ……。私は、あの新作のアクション映画が気になってたんだけど」


……始まった。好みの不一致。だが、これは想定内だ。

(ここでどちらかに加担すれば、もう片方の好感度が死ぬ。ここは……!)


「……両方の要素がある『スパイ・ロマンス』はどうだ? 爆発もするし、愛も語るぞ」


俺の提案に、二人は顔を見合わせ、渋々といった様子で頷いた。

ひとまず第一関門突破。だが、本当の地獄(天国)はここからだった。


シアター内に入り、座席を探す。当然、並び順はこうなる。

【アリス】―【俺】―【エリザ】


左右から漂う、異なる二つの甘い香り。暗転し、本編が始まる。

(……集中できるわけがないだろ、こんなの)


スクリーンでは派手なカーチェイスが繰り広げられているが、俺の意識は左右の「肘置き」に集中していた。アリスの体温が左腕に、エリザの指先が右腕の袖に、かすかに触れている気がする。

すると、不意に左から小さな震えが伝わってきた。劇中のスパイが絶体絶命のピンチに陥ったシーンだ。

(アリス、そういえば意外とビビりだったな……)


そう思って左手を動かそうとした瞬間、右側からエリザがぐいっと俺の腕を引き寄せ、小声で囁いた。

「……祐司。少し、怖いですわ」


確信犯だ。このお嬢様、絶対怖がってない。だが、その瞳は潤んでいて、拒絶を許さない破壊力がある。

(待て。ここでエリザに応じれば、左側のアリスから『冷気』が飛んでくるぞ……!)


アリスを見ると、案の定、彼女はスクリーンを凝視したまま、俺のジャケットの裾をぎゅっと握りしめていた。

言葉には出さないが、その拳が「私だって怖い」と雄弁に語っている。

俺は覚悟を決めた。


「……ったく。二人とも、騒ぐなよ」


俺は両方の肘置きを放棄し、左右の手で、それぞれの指先にそっと触れた。


「……っ」

「……あ」


暗闇の中、二人の呼吸が止まるのがわかった。これでいい。平等だ。俺の心臓はもう、映画の爆発音よりうるさく鳴っているけれど。

(ギャルゲーの主人公……これ、心臓いくつあっても足りねーわ)


映画が終わる頃には、俺の精神ゲージは真っ赤に点滅していた。しかし、明るくなった館内で、二人の頬がほんり赤いことを見逃さなかった。


「……まあ、悪くない映画でしたわね」

「……うん。次は、私が選んでいいなら、また来てもいいかな」


……どうやら、即バッドエンドは回避できたらしい。

作者( ゜Д゜):ギャルゲー回は必要だよな

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