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マリア・ファムファタールの楽園(エデン) 原案  作者: 砂之寒天
1年生

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8/27

第8話 体育祭①

明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。


マリアとモモちゃん、さっそくギスギスしてて草

フィリアにあんなことされたら私もイチコロですね。モモちゃん、心底同情します。

 5月になり、少し暑くなってくる頃。制服は半袖になり、肌の見える時期になった。

 太陽の光はまだ柔らかく、青々しい木々を包み込んでいる。


 7月には、体育祭がある。


 項目は、借り物リレー、ペア障害物競走、そして、ダンス。


 ダンスは、クラスのダンス委員が決めた曲を5月から2ヶ月間練習し、披露する。

 

 マリアはダンス委員に推薦されたので、それをやる。

 もう1人のダンス委員は百目木(ももき)モモである。モモは立候補だ。


 休み時間、モモがマリアの元に来る。


「マリアちゃん、ダンスの曲と振り付け決めよ!」


 モモは元気な声で言ってきた。マリアは視線を向ける。桃色のツインテールが揺れる。


「えぇ。どうぞ、そちらに座って。……一緒に決めましょう」

「うん!」


 マリアは正面の席を勧めた。モモは座り、後ろを向いて、マリアと向かい合う。


「私が決めてきたのは、この曲!」


 スマホの画面には、流行りのアイドルの曲が表示されている。


「可愛らしいのね」

「うん!モモ可愛いの好き!!皆でこれ踊ったら、絶対楽しいよ!!」

「……そうね。それでいいんじゃないかしら」


 マリアは、あえて何も言わなかった。


「おっけー!じゃあ1曲目はこれで決まりね!」


 モモは満足気に微笑む。


 マリアは有名な洋楽を提案した。マリアは洋楽が好きだ。


「夏らしくて、おしゃれじゃない?」


 モモの方に少し視線をやる。モモは視線を返さない。


「……いいね!マリアちゃんらしいんじゃない!」

「えぇ、じゃあこれで決まりね」

「おっけー!振り付けは……どうする?」

「各々決めてくればいいんじゃないかしら。趣味が全然違うから、お互いが口を出しても多分納得できないわ」

「……うん!分かった、じゃあ自分達で決めてこよっか!」


 まさかこの事を後悔することになるとは、マリアは知らなかった。


 ……随分冷え込んだ関係である。正直マリアはモモとあまり仲良くする気がなかった。気が合わなそうだからだ。可愛いことに全振りするのは結構だが、自分しか見てなそうな所は苦手なのだ。


 実はモモも、マリアとは気が合わなそうだと思っている。可愛い自分を差し置いて、クラスの視線を集める女。しかもその事をなんとも思ってなさそうな態度。……鼻につく。


 3日間で振り付けを決めてきた2人は、動画を撮ってお互いに共有した。


 そして4日目には、練習が始まった。


 昼休み、クラスのメンバーを体育館に集める。


「一度皆の前で踊った方が分かりやすいかしら」

「そうだね!」


 ということで、一度踊ってみることにした。


 まず、マリアが踊る。


「〜♪」


 マリアは流れる曲に合わせて口ずさみながら、上手に踊って見せた。


 それはとても美しく、とにかくカッコイイ。皆は魅了され、目が釘付けだ。

 身体の軽やかさ、指先の綺麗に整った事。マリアの長い足がステップを踏む。巻かれた長い髪が、揺れる、揺れる。


 終わった瞬間、皆は自然と、「もっと見ていたかった」そう思った。


「……こんな所かしら」


 そう言って、髪を背中に流し、整える。


 拍手が上がる。


「うぉー!!すげぇ良い!!」

「最高だな!!」


 クラスの反応も、上々。


 次に、モモ。アイドルの曲を流し、踊る。


 その内容は、男子も一緒にやることを考えると……随分可愛らしすぎる。カマトトぶっているとも見えそうな、くどさすら感じる振り付け。


「え……俺らこれ踊んの?」

「嫌だな……」


 男性陣はザワつく。一部のそういうのが苦手な女子も、嫌そうな顔をした。


 そして1人の男子が、声を上げる。


「なぁモモちゃん、俺らこれ踊りたくねぇわ」


 男子は呆れたように言う。


 これに対しモモは……


「はぁ!?可愛くていいじゃん!!」


 勿論言い返す。


「いや……可愛いとは思うんだけど。これ、妹に見られるのはさ……ちょっとキツくて」

「はぁ〜〜??知らないけど!!決めてきたんだからこれでいいじゃん!モモ可愛くないの嫌なんだけど!!」

「えー……」

「とにかくモモはこれ意外考えてないから!!」


 断固拒否であった。

 男子は方向を変え、マリアの方に来る。


「マリアさん、説得してくれませんか?」

「……そうね」


 ダンス委員であるマリアとモモにしか、決定権はない。クラスの男子はマリアが頼みの綱だった。

 マリアは組んでいた腕を解き、モモに向き直る。


「モモちゃん、もう少し中性的なダンスにできないの?」

「だからモモ、可愛くないの嫌いなんだって!!」

「でも、クラスの人達が納得しないと、進められないわよ」

「……も〜〜!!!やだ!!」


 モモは地団駄を踏んだ。

 そしてその攻撃は、マリアの方を向く。


「モモ、マリアちゃんのスカした感じ、嫌いなんだよね!!」

「……そう、興味無いわ」

「そういうとこ!!!」


 モモは爆発したように、キンキンと耳障りな声で叫ぶ。

 マリアはどうでも良さそうだ。が、フィリアは彼女の僅かな陰りを見逃さなかった。


「大体さぁ、皆も文句ばっかでなんなの!?じゃあ皆が考えてきなよ!!」

「はぁ!?それは違うだろ!!」

「ダンス委員なんだから仕事しろ!!」

「でも考えてきたの納得してないの皆の方じゃん!!」


 水掛け論であった。

 マリアは溜息をつく。全く、手間のかかる人達だ。


「……じゃあ、私がもう一曲作ってくるわよ。それじゃダメ?」

「えっ……」


 モモは絶句した。それでは、自分の役割は?


「い、いいんすかマリアさん!!」

「マリアさんのセンスなら信じられるな!!」


 男子達は喜んだ。マリアの苦労も知らずに。


「モモちゃんも、それでいい?」

「……勝手にしたら!!!モモもう知らない!!」


 モモは出口の方に歩いていってしまった。

 別に誰もそれを止めない。モモはそれすら虚しかった。


「あら……」


 マリアは少し困ったような顔をする。


 フィリアはマリアのその姿を、見つめていた。

 その様に宿る疲れを、フィリアは見逃さない。


 少し気まずい空気のまま、マリアは皆にダンスを教えた。


 昼休み、最前列の机に突っ伏すモモに、フィリアが近づく。


「モモさん」

「……?」


 モモは怪訝な顔をして、フィリアを向く。


「……なに」


 こんなタイミングで話しかけにくるなんて、なんの用があるのだろう。モモには分からなかった。


 フィリアは自然に隣に座る。


「……貴方のあのダンス、可愛らしかったですよ」

「っ……!」


 モモに衝撃が走った。


「は、は」

「ですが、あのダンスは貴方が踊る前提のものだ。皆で踊るダンスには、皆の形があります。分かりますか?」

「う、うん……」

「貴方が全部背負わなくてもいいのです。僕で良ければ、相談に乗りますよ」


 景色が桃色に変わる。視界の中で光が散る。


(も、モモの事特別に……気にかけてくれてる!?)


 そう勘違いして、惚れてしまった。

 モモはフィリアに、救われてしまった。


 実際フィリアは、マリアの苦労が増えるのを避けたいから、こうした訳だが。そのことをモモは知らない。


 モモの中に、フィリアの役に立ちたい、という気持ちが芽生えた。


「……モモ、皆も踊りやすいダンス、作り直してくる!」

「えぇ、素敵なことです。応援しておりますよ」


 フィリアはモモに微笑んだ。

 その微笑みすら、天使のように見える。モモは全身が熱くって仕方ない。


「マリアちゃんに謝ってくる!!」

「!えぇ、そうしましょう」


 フィリアはこれに喜んだ。その表情の明るみに、モモは目ざとく気づく。

 そして、その事実に気づいてしまった。


(あ、この人は私を見てくれたけど、私を選ぶ人じゃない)


 あくまで彼が見ているのは、マリア・ファムファタールなのだ。


(あ………)


 そしてここで、芽生えたての恋が、失恋の痛みを知る。胸がツキツキと痛む。


 呆然としたまま、マリアの元へ向かった。


「……マリアちゃん」

「あら、モモちゃん。もう大丈夫なの」


 マリアは少しだけ、モモに気遣った。その優しさが傷に染みる。


「うん。……その……ごめんね。モモ、ちゃんとダンス作り直してくる」


 モモは目を見て、謝った。その目には、僅かに涙が浮かんでいる。


「……!そう。わかったわ。次は一緒に作りましょう。私も手伝うわ」


 マリアはこれに同情した。そして、歩み寄りの姿勢を見せる。その優しさに、モモは少し胸が温かくなった。


「うん。……モモだけで作ると、多分可愛くなっちゃうから」

「ふふ、そうね」


 モモは本気で言ったが、マリアは冗談と受け取った。


(なんだ……マリアちゃん、悪い人じゃないじゃん)


 この間の国語の授業でも彼女がただ美しいだけの人ではないとは分かっていたが、自分にも優しくしてくれるのか。マリアは意外といい人かもしれない。


 そして……彼女に惚れているであろう、フィリア。


 思い出すと、涙が出てくる。


(モモは、フィリアさんには見て貰えないんだ)


 ただ、悲しかった。


(じゃあ、モモが見てもらうために、何が足りないんだろう……)


 段々、そう思うようになった。


 まだ昼休みである。


 多分、可愛いだけじゃダメなんだろう。マリアにあって、モモに無いもの。


(〜〜っ、わかんない!!)


 モモは考えても分からなかった。

 なので、マリアに聞くことにした。


「……周りをよく見ること。かしらね」

「周りをみる……」


 なるほど、そういうことらしい。モモには鼻からなかった視点であった。


「わかった、ありがとう!」

「えぇ。大丈夫?話くらいは聞くわよ」


 その気遣いが、フィリアを思い出す。


 あぁ、きっと2人はお似合いだ。モモは直観的にそう思った。


「っ……ううん、いいの!大丈夫!ありがとう!」


 涙が零れてきた。モモはとっさに顔を背けて、前の席に戻った。


「ううん、いいのよ。それじゃあね」


 マリアは少し困惑しながら、柔らかく手を振った。


 2人で振り付けを決めると、2日で出来上がった。これなら、練習にも支障がないだろう。


 練習は今度こそ上手く行き、3週間後、クラスはダンスを完成させた。


 そうして一同は、体育祭を迎えた。


 体操服を着て、5人はグラウンドに集まる。


「今日は頑張りましょうね」


 マリアは胸の横に小さく握り拳を作る。


「えぇ、励みましょう」


 フィリアも頷く。


「頑張ろう」


 凛も背筋を伸ばす。


「1位狙っちゃお〜☆」

「お互い頑張ろうね」


 ベリーとケイネラも、気合い十分だ。


 それを見て、マリアが拳を出す。それだけで十分だった。

 次の瞬間、皆の拳がそこに重なった。


「行くわよ!!」

「おー!!!」


 鬨の声を上げた。


 カシャ。


 ベリーが写真を撮る。


(……うん、良い写真♫)


 青春の記録係は、今日も記録する。


 クラスメイトが、眩しいものを見るようにそれを見ていたのだった。


 開会式が終わり、ラジオ体操をする。


 この時は、マリアもフィリアも皆も、真面目にラジオ体操をしなければならない。


 フィリアは虚弱なので、怪我をしないように念入りに準備運動をする。長い手足を持て余したようにラジオ体操をしているのを見たマリアは、少し笑ってしまった。


 モモも、それを見ていた。

 少しぎこちないが真面目なラジオ体操に、心臓がキュンと音を立てるのが分かった。


(可愛い……フィリアさんって運動苦手なのかな)


 頬が桃色に染まった。


 少しして、借り物競争が始まった。


 皆はマリアに視線が行ってしまう。マリアは誰かに借りられるのだろうか。

 

 傍にいるクラスの人も、マリアを見る。


 腕を組み、愉しそうに笑みを浮かべて、誰かを見つめるマリア。その視線の先が誰なのかは、見ても分からなかった。


 ふと、他のクラスの男子と、凛がマリアの方向に走ってきた。


 お代は──────────好きな人。


 2人は同時にマリアの元に着き、同時に手を差し伸べ、言う。


「マリア、俺と一緒に来てくれ」

「マリアさん、僕と来てくれませんか!!」


 マリアは笑う。


 そして───────手を取った。



 ……凛の手を。


「あら……ごめんなさいね。私、彼氏は裏切れないの。ごめんあそばせ」


 マリアは少しも悪いと思ってなさそうな声で、少し意地悪に言う。


 その声は、よく響いた。瞬間、グラウンドが静かになる。


 そして、歓声が湧き上がった。


「っ〜〜!?!?!?」


 その言葉の衝撃といえば、言葉にできない。

 好きだったマリアが凛の彼女という事実。そして、断られたという事実。二重の衝撃が、男子を襲った。


 凛は驚く。皆の前で、ハッキリと「彼氏」と言ったことに。そして、花が咲くように、胸の内から歓喜が湧き上がった。


 凛は喜びを隠せない。どうしても頬が緩んでしまう。それは選ばれた幸せ者の顔だった。


「行こう」


 マリアを優しく横抱きにし、凛は走った。


「きゃあ!速いわ」


 マリアは凛に抱きつく。そのせいか、凛は心臓がうるさくて仕方なかった。


 凛は堂々の1位でゴール。マリアは楽しそうに笑った。


「うふ、あはは!凛、貴方凄いわ」


 マリアは、凛を手で招く。


 凛は、なんだ?と思って少し屈んだ。


 そして──────────マリアは、凛の頬にキスを送った。


「……よく頑張りました」


 またもや歓声が上がる。


「っ〜〜!?!?」

「ふふ、ご褒美よ」


 凛は頬を抑えて、真っ赤になった。驚き、マリアを見つめる。


 そして、感極まって、マリアを抱きしめた。


「きゃっ」

「……ありがとう。マリアのお陰だ」


 凛はマリアの耳元で、低くそう囁いた。


 マリアはゾクリとして、唇を舐める。蛇のような目付きだった。


「……えぇ。次も頑張りましょう」

「あぁ」


 近づくと、凛のミントと、少し汗の甘い匂いがする。魅惑的だった。


★評価、ブックマーク、コメント、レビュー、リアクションお待ちしております。よろしくお願いします。


マリアが可愛すぎて声を上げました、私が。凛も。


在り来りというか、体育祭で起きた事実を述べるだけにならないように気をつけました。


あとマリアが初め、モモちゃんを隣の席じゃなくて正面に行かせるとこ。まだ仲良くない証です。まだ仲良くないから正しい距離に置く、ということです。

国語の授業のこと、モモちゃんが覚えてるとこもミソです。彼女は真面目に、人の話を聞く能力があるんです。

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― 新着の感想 ―
やっぱり、魔性の女じゃないか(歓喜)
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