第3話 街へ遊びに行こう!①
私がしてるメイクの工程も参考にして、マリアに合わせて変えています。メイクの工程が好きな人は刺さると思います。現段階のメイクなので、段階的に変わっていきます。
マリアも部屋に戻る。
部屋はまだ飾り付けておらず、荷物を解いたのみだ。寮から抜けるわけでなければ部屋替えはないので、マリアはこの部屋に7年間お世話になる。
だからとびきり可愛くするつもりだが、如何せん、まだ来たばかりでやる時間が無い。
やるべきことは多い。
壁紙、床、照明、家具。マリアの頭の中では既にこの部屋は完成していた。
部屋の改装に関して、エデンの寮は自由である。付属の家具は、使わないなら倉庫に置いておいてもいいのだ。
またやろう。マリアは冷静に後回しにした。
未だシンプルな雰囲気の部屋もかわいいが、それを見渡し、やるべき事を思い出す。
服は昨日の夜決めておいた。ピオニーピンクのふわふわの半袖のニット。白のプリーツミニスカートを履く。
金色のネックレスと白のリボンのピアスでオシャレに決めた。
現在4月は春だが、ヴァロワールはまだ朝晩には少し寒さが残る。
時間まではあと30分程ある。30分あればメイクも終わるだろう。
マリアは顔を洗って部屋に戻ってきて、保湿する。
そして付属の机の上にハリウッドミラーを置いた。ボタンを押すと、眩く発光する。マリアの素のままの可愛らしさが照らされる。
マリアの儀式が始まった。それは美しくあるための儀式で、祈りである。
まずは日焼け止め下地からだ。マリアは冬でも日焼け止めは欠かさないので、それを塗る。美意識が高いのだ。
ファンデーションは塗らない。なくても十分綺麗なので。
パウダーを叩き、アイシャドウを塗る。
Dasiqueのバレエコアコレクションのアイシャドウだ。品番は35、ラブエンジェル。愛らしい温かみのあるピンクをしている。
黒目の上と下にラメを置く。置きすぎないことで、上品に華やかになる。
ローズカラーのアイラインは自然にかつ少し長めに。仄かな色気を出す。
涙袋は書かない。自然なままである。その方が清楚な雰囲気になるからだ。
マスカラを塗って、ピンセットで整える。マツエクもしているので、マリアのまつ毛はとても長く、くるりと上を向いている。人形のように、愛らしい。
眉毛にマスカラを塗り、シャドウ、ハイライトも塗る。
チークは人によるが、マリアは頬骨の外側から斜めに入れると自然に血色感が出てかわいくなる。色味はコーラルピンク。これにより、柔らかい血色感と多幸感が出る。
最後にリップを悩み……アイシャドウに合わせた、淡いピンクのリップを選んだ。イエベ春のマリアによく似合う色だ。
(2ndはブルベ冬だから、赤いリップも似合うのだけれど……今日のメイクには合わないわね)
唇にグロスを塗り、常よりツヤツヤさせた。思わずキスしたくなるようだ。
メイクキープミストを吹きかけ、儀式は終わりだ。
「よし」
鏡を見て、出来に満足する。
(写真撮ろうかしら。……いや、いいわね)
どうせ遊ぶ時にフィリアが撮ってくれるので撮らなくて良い。
髪型はシンプルに、ぱっつんの軽く巻いた前髪と、触覚と、後れ毛。後ろ髪も綺麗に巻いた。
マリアは美人なので前髪がないのも似合うだろうが、最近は前髪ありの気分である。
白いふわふわのカバンに荷物を入れて、準備は完了した。
時間は9:28。もうすぐ時間だ。
「やだ、急がなきゃ。いってきます」
そう呟き、マリアはヒールの入った白いブーツを履いて、部屋から出た。
集合場所には、既に皆来ていた。
「ごめんなさい、お待たせしたかしら」
「大丈夫だ、皆今来たところだ」
「えぇ。……メッセージのグループを作っておいたので、マリアも招待しておきました。後で確認してください」
「あら、ありがとう。手が早いのね」
さらりと褒める。
「ね!フィリアくん、シゴデキって感じ☆」
「ふふ、この程度。……では、行きましょうか。10分後にバスが来ます」
寮の門に行き、バス停を待つ。この学校、寮の門と学校の正門に1つずつバス停があるのだ。便利である。
バスが来た。順番に乗っていく。
後ろの方に纏まって座った。
「今日も可愛らしいですね。まるで神が遣わした天使のようだ。愛らしい、温かいピンクメイクがよく似合っています。僕たちの為にお洒落してくださるのは、胸が温かくなる喜びです」
フィリアは心底幸せそうにマリアを褒める。彼はマリアを褒め慣れている。
「ね!!ほんとに可愛すぎる、マジ天使!!そのメイク似合ってる!街で写真撮ろ〜!!」
ベリーも陽キャなので、人を褒めるのは得意だ。明るい雰囲気で、場を和ませるように褒めた。
「ありがとう。写真ね、もちろんだわ。フィリアも写真撮るの好きなの。皆で沢山撮りましょう」
「えっ、そうなの?意外〜!!」
ベリーの中で、フィリアの好感度が上がった。
「マリアを美しく撮ろうと学んでいるうちに、自然と好きになっていましたね」
フィリアは懐かしむように語る。
「ほう、面白いな。俺も写真部に入ろうか迷っているんだ。ケイネラは?」
「僕も写真撮るの好きだよ。トップモデルだから、自撮りもするし、Lumiの日常垢にアップできるやつも撮るからね」
「そうなのね!皆さんお写真上手なのね……。羨ましいわ。私はまだ勉強中なの。皆さんのも参考にするわ」
マリアはセンスはあるが、如何せん知識と技術がまだない。
「いいじゃん!迷ったらボク達にも聞いてね!何でも教えるからさ!」
「えぇ、ありがとう」
ベリー達の優しさに、胸が温かくなった。
「……ねぇ、良かったら皆さんで写真部に入らない?同じ部活だと、沢山話せるわ」
マリアは少し遠慮がちに提案する。
「え、めっちゃアリ!!そうしようよ!!」
「ふむ……アリですね。バイトがあるのでどれ程参加できるかは分かりませんが、入りましょう」
「いいな。俺も入ろう」
「あー……仕事が……」
ケイネラは眉をひそめる。断る気はないのだが、参加できるかも怪しい。
「そうよね、ケイネラは仕事が忙しいわよね……」
「うん……まぁでも、所属はしようかな。皆入るみたいだし」
「!!えぇ、ぜひそうしましょう。嬉しいわ。今度皆で入部届け出しに行きましょうね」
そうして、皆で写真部への入部が決まった。
「フィリアくん、バイトしてるの?」
「えぇ。教会のお手伝いをしています」
「へ〜!!何するの?」
「清掃と、演奏を。僕はピアノを弾きます」
「えっ、かっこよ……ボクびっくりしちゃった、似合いすぎて」
全くである。こんな儚い美男が教会でピアノなんて弾いた日には、祈りに来た人が神かと見間違うだろう。
「フィリアもピアノを弾けるのか。俺も弾ける」
「え〜!!凛くんも!?え、皆スゴ!!え、え、メリカくんは?」
「僕も少し弾けるよ。教養として習ってたんだ」
「え、えぇ……待って、もしかして、マリアちゃんも弾ける?」
ベリーは恐る恐る聞く。
「わ、私は……全く……」
「よかった〜!!仲間だ〜〜!」
マリアはしょも……としたが、喜んだベリーに抱きつかれてびっくりし、ニコニコした。
「音楽祭の時には、ピアノが取り合いになりそうね」
「そうだな。ピアノの練習も欠かさないようにしなければ」
「エデン、グランドピアノ10台くらいありますからね。どこかしら貸していただけるでしょう」
流石マンモス有名学園である。資金力の桁が違う。
バスに揺られて、街へと向かう。立地がいいので、バスで10分も行けば街に着く。
高いビルも多い街中にやってきた。ショッピングモールに着き、皆はバスを降りた。
「どこから行こっか!皆、どこ行きたい?」
「私、最上階でやってるPeonyのポップアップに行きたいわ」
「いいね!見に行こ〜!!」
ということでまずはポップアップストアへと向かった。
メリカは何も言わず、マリアの歩調に合わせていた。
「新作、どれも可愛いわ……!このホリデーボックス、買っちゃおうかしら……!」
マリアは可愛らしいコスメ達に、目をキラキラさせた。マリアはコスメが大好きである。
「……ふーん、僕買おうか?」
その様に心臓を掴まれたケイネラは、気付いたらそう言っていた。
「えっ!!でもこれ2万ルムするわよ」
マリアは驚いた。
ヴァロワールの通貨はルーメンで、皆は略してルムと呼んでいる。
「だって、どれも君に似合いそう。君がつけてるところ、見たいな。今度見せて」
ケイネラの彩度の低い薄い鍵色の目に見つめられて、心臓がどきりと跳ねる。その瞳は、真摯だ。
そんな真正面から口説かれてしまったマリアは、ぽぽぽと頬を赤くしてしまった。頬を手でパタパタして、熱を逃がす。
「あ、暑いわ……。えぇ、ぜひ。01と02なら、どちらがいいかしら?」
「ボク的には、01がいいんじゃないかな!02はくすみ系だから、華やかなマリアちゃんには01が似合うと思う!」
「同意ですね」
「そうだな……俺はこういうのには疎くてな。試しに付けてみたらわかりそうだが」
「テスターは唇にはつけられないのよ。だから手に出してスウォッチって言って、肌との相性を見るの。してみるわね」
「マナー的には、そうか。そうだよな」
凛はメイクには疎いらしい。だがだからこそ、率直に似合うかどうかだけを教えてくれる。
マリアは手にテスターを少し塗り、肌との相性を見る。
「……どう、決まった?」
「えぇ、やっぱり01のボックスが可愛いわ。お願いできる?」
「任せなよ。今買ってくるからね」
そうしてマリアはPeonyのホリデーボックスをゲットした。
ちなみにお揃いで、ケイネラは02の方を買った。
「ありがとう、ケイネラ!嬉しいわ」
マリアは満面の笑みで感謝した。
「どういたしまして、マリア。君が喜んでると、僕も嬉しい」
ケイネラも、幸せそうに笑う。
「ふふ、明日から毎日メイクで使わせてもらうわね」
「うん」
2人は恋人のように微笑みあった。
「素敵ですね。人からの贈り物は貴方の生活を煌めかせます。マリアが喜んでるようで、僕も嬉しいです」
「ふふ、フィリアもありがとう」
「よかったね〜!あ、マリアちゃん、荷物持つよ?」
「いいの?ベリーくん。ありがとうね」
「写真も撮らないと!マリアちゃん、写真撮るよ」
「そうね、撮りましょう」
そうして、0.5倍率でフラッシュを焚いて撮った。最近流行りの撮り方である。
「あら、どれも素敵だわ。流石、インフルエンサー」
「ありがと〜☆写真はボクにお任せ、だよ!」
ベリーはキュピンとウィンクした。陽気なことである。
「次は皆はどこ行きたい?ボクは服と靴見たいな〜」
「ふむ。では見て回りましょうか。どこか行きたいブランドはありますか?」
「ボク今日は狙ってるのがあって。Otteのピンクと黒のカーディガンが欲しいんだよねぇ〜!差し色にピンクが入ってる服好きなんだ♫」
「では、次はそこにしましょう。黒川さんは?」
「俺は特に。皆が見てるのを見ていよう」
「僕は……GUCCIに行きたいかな」
「ほう。GUCCIがお好きなのですね」
「流石トップモデル〜〜!!」
ということで、Otteから行くことにした。現在最上階で、GUCCIは1階にあるので。
「あ、あったあった〜♫これ!可愛くない!?」
カーディガンを体に合わせて、皆に見せる。
「ベリーくんの青紫の髪と合うわね」
「ふむ、髪色が派手ですから、派手な服も様になりますね。素敵です」
「似合っている」
「いいね」
みんな称賛した。
ということでその服をお買上げした。
次にGUCCI。
入ると、ケイネラを視認した店員さんが一斉に駆けつけて来て、お辞儀をした。
「ようこそいらっしゃいませ、ケイネラ様」
「うん、よろしくね」
そんな対応初めて見たベリーは戦々恐々とした。
「えっ、皆驚かない感じ?え、マリアちゃんも?」
ベリーは皆をきょろきょろ見て、驚いている。
「フィリアので見慣れてるわ」
「えっ?フィリアくん?」
「えぇ、貴族なんです。アメトウスト家の、本家です」
アメトウスト家は、ヴァロワールの名だたる名家。分家が多いので中には一般庶民のような家もあるが、本家は別格。大富豪中の大富豪である。
「え、本家!?!?スゴ!?!?めちゃ大富豪じゃん!?」
ベリーはそれはもう心底驚愕と言った顔で驚く。隣にいたのが大貴族なのだから、当然である。
「えぇ。僕は四男なので好きなことをできますがね」
「へぇ〜!!政治とかは興味無いの?」
「政治よりも、宗教で人を救うことを僕は好みます」
「へぇ〜、面白いね!!」
ベリーは興味深いと思った。
ということでGUCCIを見た。
「このバックいいね。ねぇマリア、このバック、白と黒、どっちがいいと思う?」
「悩むわね……。うーん、白かしら。明るい雰囲気で、好みだわ」
「マリアの好みならこっちだね。これください」
そうしてサラッとバッグを一つ買った。
その価格にメンバーの中でベリーだけが驚いていたが、皆澄ました顔をしているので、ベリーはいじけてしまった。
「ねぇ、なんか僕だけ仲間外れみたいじゃない〜〜?僕こういうのキライ〜〜」
「おやおや」
フィリアは困った顔をするが、マリア以外の人間の機嫌は取らないので、それきり何も言わない。
「あらま……ベリーくん、大丈夫よ。一緒にいればいずれ慣れるの。私も初めは驚いたわ。でも、仲良くなってくとね、自然と慣れるものよ」
「ほんと?……じゃあ、いっか!!ありがと♡マリアちゃん!」
「いいえ、ホントのことだから」
マリアの家は、他の3人みたいに特別金持ちという訳では無いが、裕福な方である。ショッピングに来た時にポンと10万円くらい出せる程度には。
「ねぇ、皆でキーホルダーを買わない?折角来たんだし」
「あら、いいわね」
「え、ここで買うの?いやまぁ、出せなくはないけど……」
ベリーは財布を握る。
「無理して買わせるのは悪いね。君は別のとこで買う?」
ケイネラは冗談めかしてそう聞く。
「ちょっと、扱い酷くない!?ボクもここで買うよ!!」
これにベリーは反抗した。そんなことしたら、仲間外れである。
「それでこそ男だね」
ケイネラは納得したように頷く。
「ケイネラもそういうことするのね……」
ケイネラの、女子に対する対応と男子に対するそれは違うらしい。マリアには新鮮であった。
「私、この女の子の猫ちゃんがいいわ。さっき見た時から気になってたの」
「では僕はそれのオス猫バージョンを」
「ふむ、この犬のキーホルダー、いいな。これにしよう」
「えーと、ボクは青とピンクの猫ちゃんかな!」
「シルバーのクマにしよう」
各々決めて、会計を済ませた。
「皆、取り出して持ってちょうだい。写真撮りましょう」
「いいね〜!!撮ろ撮ろ!!」
そうしてLumiにまたひとつ、友情の証が増えた。
マリアのフォロワーもなんだかんだ増えて、200人程まで増えている。
「フィリアくんはどこ行きたい〜??」
「僕はBrioniの服を好んで着ますので、そこに行きたいですね」
「えっ!?!?ブリオーニ!?!?超セレブが着るブランドじゃん!!フィリアくんの家ってほんとにお金持ちなんだね」
「えぇ、まぁ。ですが……」
フィリアはマリアの方を向く。
一瞬、言うべきか迷った後で、口を開いた。
「……マリア、疲れていませんか?ジュースでも飲みに行きますか」
「うん、僕もそう思ってた」
フィリアとメリカは、目敏くマリアの疲れに気付いていた。少し心配した表情だ。
「あら、相変わらず敏いのね。ケイネラも、ありがとう!そう、私疲れてきちゃって。どこかで座ってお茶でも飲まない?」
「いいよいいよ〜!ごめんね、気付かなくて!」
「いいな。ちょうど昼時だな、昼食を摂るか」
「えぇ、そうしましょう。マリアは何が食べたいですか?」
「何があるかしら?」
「なんでもありますよ。ファストフードから、レストランまで。ハンバーグ、ローストビーフ、パスタ、オムライス、中華、寿司、など」
「うーん……オムライスがいいわ」
「ではオムライスにしましょうか」
当然のように行き先が決まる。
「え、ボクたちの意見は??」
「マリアがいるのにマリア以外の希望の店に行くのですか??」
「え〜……でも希望くらい聞いてくれても良くない?」
「それはそうだな」
「僕はどこでもいいけどね」
流石に横暴であると、ベリーは思った。
「あら、私もどこでも構わないわよ」
「そうなの?うーん、じゃあ今回はオムライス行って、次は他の人が行きたいとこ行こっか!」
「それがいいわね」
「……マリアがそれでいいのであれば、それがいいのでしょう」
あくまでフィリアはマリアの自由を尊重するスタイルだ。
5人はオムライス屋さんに入った。
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なんか気になったことをポンポン口に出せるのはベリーなので、彼が嫌な役回りをしてしまっている気がします。嫌な奴にならないようにしないと。
逆に、感覚が庶民的で親しみやすいかもしれません。彼は良い人です。




