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マリア・ファムファタールの楽園(エデン)  作者: 砂之寒天
1年生

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第25話 神にしてしまった人①

何も知らなくて恥ずかしいんですけど、非公開に出来ないそうなので検索除外だけしました。カクヨムの方を推敲したので、そちらも確認してくださると幸いです。

 年が明けて、少し経った頃。


 ベリーはベッドの上で、動画を見ていた。


 プリンス&プリンセスグランプリの、マリアの動画だ。


(あ"ぁ〜、可愛い……)


 こんな可愛い人が、自分の彼女だなんて。


「夢みたいだよねぇ……」


 スマホを胸に抱き、目を閉じる。


 幸せを噛み締めた。


「あー、マリアちゃんのこと皆に自慢したいなぁ……」


 マリアと撮った写真を見返す。


(投稿するなら、どれがいいかな〜♪)


 一緒に撮った写真は沢山あるが。


「あ、そうだ」


 一応確認は取っておこう。


『マリアちゃんのこと、彼女って言ってLumiに上げてもいい?』


 既読が着き、数分後。


『いいわよ』


 マリアは少し悩んだが、許可した。


「やった〜♫」


 上げる写真はもう決めた。


 あの日、観覧車から見下ろした夜景。端っこにスモーキーピンクのコートの袖が写っている。


「幸せの頂上、と。投稿!」


 ベリーはにんまり笑った。


「……課題やんなきゃ!」


 ベリーはスマホをベッドに放り投げ、机に向かった。


 それが、着火剤となった。


 ボッ、と火はつき、燃え広がっていく。


『ベリーくんは私だけの光なのに。他の女に取られるなんて許せないんだけど。裏切り者』

『ベリーくん恋人できた??匂わせだよね??』


 ガチ恋ファンの呟き。それがバズってしまったのだ。つまり、炎上であった。


 ベリーはいいね数が多いので通知は付けてない。


 だから、気づくのが遅れた。


 課題の途中、スマホを見る。


「反応どうかな〜……って、なにコレ!?!?」


 大量のコメント、いいね、リポストの通知。


「え、なに、ナニ!?」


 慌ててコメントを見る。


『炎上男さんチーッスwww』

『聖地巡礼』

『恋人いたんだ。裏切り者』

『私だけのベリーくんだと思ってた』


 内容はそんな感じ。


「えっ、えっ、」


 指先が冷たくなり、呼吸が浅くなる。ベリーは完全にパニックだった。


 慌ててエゴサする。


「っ……」


 見るも無惨な、大炎上だった。


「どう、しよう」


 目の前が真っ暗になる。


「とりあえず、投稿、消さなきゃ」


 震える手で、削除ボタンをタップする。


 少しホッとした。


「ま、マリアちゃんに……報告……」


 ベリーはマリアに電話をかける。


「どうかしたの?」

「ま、マリアちゃん、ボク、炎上、しちゃって」

「!!まぁ、大変。調べてみるわ」


 少し待つ。マリアのネイルが画面に当たる、かすかな音だけがマイク越しに響く。


「……これは、大変ね」


 マリアは少し低い声で言った。深刻さが分かったらしい。


「でしょ〜!?やばいよね……どうしよう」

「放置するしかないでしょう……今反応すると火に油を注ぐわ」

「そうだよね……」


 ベリーは泣きそうな気持ちだ。


(マリアちゃんに、これで嫌われちゃったらどうしよう……!)


 そんな不安も湧き出てきた。


「ねぇ、マリアちゃん、これでボクのこと嫌いになったりしない?」


 ベリーは涙声で聞いた。


 マリアは少し困り眉になる。不安が伝わったからだ。


 だがすぐ落ち着いた顔に戻った。


「……私はそのまま、貴方といるだけよ」


 冷静な声で、マリアはそう言った。


 言い回しは婉曲的だが、それはつまり、"ベリーから離れる気はない"ということだろう。


「〜〜っ、よかったぁ……」

「不安ならいつでもお話しましょう。気を紛らわすくらいはするわ」

「う"ん、ありがとう!……ね、もう少し通話繋げててもいい?」

「あら、いいわよ」


 その後も、何か話す訳でもなく、暫く通話を繋いでいた。


 スマホから、食器がカチャカチャするような音が聞こえる。


「マリアちゃん、食器弄ってる?」

「紅茶を飲んでいるの。ティースプーンの音ね」

「……そーなんだ!何て紅茶?」

「アールグレイよ」

「へー!いい匂いしそう、今度飲ませて!」

「いいわよ」


 マリアと何気ない会話をしていると、段々心が落ち着いてきた。

 アールグレイのベルガモットの香り、温かい紅茶の温度。想像するだけで、落ち着く。


「……うん、落ち着いてきた。大丈夫そう!」

「良かったわ。じゃあ、また学校でね」

「うん!またね〜」


 通話を終了する。


(あ、やばいかも……)


 通話を終えた途端、思考が濁り始めるのを自覚した。


(ボクのLuminer人生終わり?てかボクの学校での居場所なくなる?明日どんな顔して学校行けばいいんだろ)


 暗い思考が脳内を渦巻く。それは滝のような濁流だ。


 思わず涙が滲む。


「……やめ、やめ!お風呂入って寝よ!!」


 無理やり気分を切り替えた。


 シャワーをしている間も思考は途切れなかったが、なんとか終えた。


「……」


 布団の中で寝返りを打つ。


 癒される動画を流し続け、いつの間にか寝落ちしていた。


〜♪


「ん……」


 アラームの音で起きる。遮光カーテンにより、部屋の中は暗い。ベリーは明るいと眠れないのだ。


「……朝」


 憂鬱この上ない朝だった。頭は重く、布団は温い。


「……学校、行かなきゃ」


 重い体をのそりと起こして、準備を始める。


「……まだ寝てたいな」


 そう呟きながら。


 学校に行くと、マリア達がいた。


「おはよー……」


 気分が上がりきらなくて、そんな挨拶になる。それでも明るくない自分を見せられるのは、信頼の証かもしれない。


「!、ベリーくん」


 マリアがこちらを見て、心配そうな顔をする。


「……」

「……」


 マリアは話さない。ベリーも言葉少なだ。


 ただ、マリアがベリーの手を取った。


 ベリーはマリアの目を見る。


 マリアの目は、手は、温かかった。


 にこり、と微笑む。

 室内に光が差して、瞬く間に明るくなった。


「っ……!!」


 マリアの姿が、発光するように輝く。

 その姿が、神様みたいに見えた。

 思わず、息を忘れた。


「マリア、ちゃん……」


 思わず名前を呼ぶ。マリアは手を少し強く握った。


「……」


 呆然とする。2人は見つめ合っていた。


 少ししてから、ベリーは意識を取り戻す。


「……ありがとう!」


 弾けるようにそう言った。


 マリアは満足そうに微笑む。


「……えぇ」


 手を離そうとする。ベリーは名残惜しくて、少し手を伸ばしてしまった。


 マリアは小さくそれを止めて、手を離す。


「……」


 眩い光は落ち着いてきた。

 でもベリーの心には、神様の慈愛を賜ったような、確かな熱が残った。

★評価、ブックマーク、コメント、レビュー、リアクションお待ちしております。よろしくお願いします。


「炎上男さん、チーッスwww」こういうコメントだけ流れるように出てくるの、何なんですかね。ネット人間の性なんでしょうか。


書いていて辛かったです。ベリーくん(T_T)

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