第22話 クリスマスパーティー
この話を書くに従い、第4話を少し修正しました。あんまり兄弟について先出しするもんじゃないですね。全然イメージとキャラ違います。
クリスマス当日。
「いらっしゃい」
両開きのドアを向こうでケイネラが微笑む。
「お邪魔します」
マフラーを巻いて冬模様のマリア達が、ケイネラの家に来た。
「兄さんもいるんだけど、いいかな?」
ケイネラは少し困ったように言う。兄はご一緒したいと言っているのだ。ケイネラは断れなかった。
「構わないわよ。一緒にパーティしましょう」
マリアは微笑み、快く引き受けた。
ケイネラは安心した。
「こんにちは。お邪魔します」
「……来たか」
男は一瞬、全員を値踏みするように見回した
「……いらっしゃい!」
パッと明るく表情を変え、歓迎した。
「オレは、ケイネラ・シリウス。よろしく」
シリウスは右手を差し出す。
「マリア・ファムファタールです。よろしくお願いします」
マリアも微笑んで握手した。
「ベリー・ランジェロです!」
「フィリア・アメトウストです」
「黒川凛です。よろしくお願いします」
順に自己紹介する。
「あぁ、よろしく。君達を歓迎しよう」
シリウスは微笑んだ。
「……さぁ、準備しましょうか」
マリアが空気を切るように言う。
「何からやる〜?」
「……仕事は二つね。飾り付けと、盛り付け」
「部屋の飾り付けは、凛さん。料理はベリーさんが向いてるでしょう」
「じゃあ僕は凛くんと飾り付けするね」
「えぇ。では僕は料理を」
「私は最終決定ね」
「えぇ」
ということで、各々作業に入る。
料理は、有名店のオードブルだ。
料理を盛り付けながら、ベリーは写真を撮る。
「こう盛り付けたらかわいいかも!」
「……」
フィリアは無言で、盛りつけを直す。
「ツリーはどこに置こう?」
「この辺でいいんじゃないか」
凛は適当に言う。彼はこういうことの善し悪しが分からない。
「あの辺の方が良くない?」
「それなら、その辺がいいと思うわ」
「あぁ、いいね」
「……そうか」
結局マリアが決めた。凛もこれなら安心である。
部屋の飾り付けが終わったので、凛はフィリアに近づく。
「……BGMが欲しいですね」
フィリアが凛に呟く。
「……そうだな」
凛は特にそう思わなかったが、同意しておいた。
「ケイネラさん。スピーカーでBGMを流しても?」
「あぁ、うん。何流す?」
「クラシックのクリスマスアレンジにしましょう」
ということで、BGMが加わった。大人っぽいBGMが、雰囲気を整える。
「ね、マリアちゃん。買ったオーナメントちょっと持ってきたんだけど、飾らない?」
「!!いいわよ」
ベリーはマリアにこっそり言った。
「いぇーい」
オーナメントを2人が手で持ってくっつけ、写真を撮る。
「……少し照明が明るいかな?」
「そうですね。少し暗くしましょうか」
照明を一段階暗くした。
「キャンドルあった方が映えない〜?」
「確かに。持ってくるよ」
火はつけないが、キャンドルを置いた。
段々整っていく雰囲気に、凛は少し落ち着かない。
シリウスはコーヒーを飲みながら、5人を眺めていた。
皆で集まり、全体を見る。
「……完成ね」
マリアが宣言する。これにより、準備は終わった。
「……兄さん、始めるよ」
ケイネラがシリウスに声をかける。
「……あぁ。皆さん、ありがとう!さぁ、座ろうか」
ケイネラは黙ってマリアの椅子を引く。マリアも無言で席に着いた。
中央にマリア、右にケイネラ、左にベリー。マリアの正面にシリウス、右にフィリア、左に凛が座る。
「お注ぎします」
マリアはシリウスにニコッと笑う。下に見られるのも嫌だが、気の利かない女だと思われたくないのだ。
シリウスは今日はシャンパンを飲む。
「あぁ、ありがとう」
シリウスは軽く微笑んで、感謝した。
マリアは自分の分のシャンメリーを注ぐと、ケイネラにボトルを渡す。それから順に、各々グラスに注ぐ。
「……さて。では、始めようか!」
シリウスはグラスを持ち、掲げる。皆もそれに合わせてグラスを持った。
マリアは一瞬目を細める。
「乾杯」
静かに乾杯する。
ベリーはグラスをぶつけるのかと思ったが、ぶつけないのがマナーらしい。少しマリアに近づけたグラスを、そっと元に戻した。
パーティが始まる。
「ベリーくんは、学校ではどんな感じなんだい?」
シリウスが気さくに話しかける。
(え、早速ボク!?)
ベリーは緊張する。
「えと、皆で一緒に過ごしてるから、楽しいです〜!」
ベリーは間が空かないよう、元気に言った。
「ふ、ベリーくんは若いな!」
シリウスは快活に笑う。
「っ、そうですかね〜??」
ベリーが少し焦ったように返事をする。これは、決してOKのサインではないと分かったからだ。
シリウスはそのまま次の話題に行く。
「……凛くんは、マリアさんのどういう所が好きなんだい?」
「!!」
凛は驚く。フォークを置き、シリウスの目を見る。
「……俺は。マリアの、自由で芯がある所が好きです。マリアといると、俺は歪まない。ありのままで愛し合えることに感謝しているし、彼女と付き合ったことについて責任を取りたい。そう思っています」
凛は真剣にそう答えた。
「……凛くんは、しっかりしてるな」
シリウスはしみじみそう答えた。
凛は安堵する。
「……時に、アメトウストくん。君は今の大統領をどう思う?」
シリウスは少し低い声で問う。
その質問に、フィリアは少し悩む。
「……そうですね。……彼は、切り捨てるのが上手いですよね」
「ふむ」
シリウスは試すような視線をやめない。
フィリアは間を置いて続ける。
「……彼は穏健に見えて、その実とても冷徹です。だから上手くいく。彼に全てを救う力はありません」
「……」
フィリアはそう言い切った。シリウスは微笑する。
「ですが、彼はそれを正義だと思い込んでいますね。それが良くない。自分を正義だと思い込んだ人間は、必ず暴走します」
「……」
「僕は、自分の罪に無自覚な大人は……少し、怖いですね。……彼は優秀ですよ」
そう締めた。
しばし、沈黙が落ちる。
「……っはは!君は面白い」
シリウスは笑い声をあげた。フィリアは内心ほっとする。
場の空気が緩んだ。
「そうそう、今の大統領は───────」
「えぇ、わかります───────」
2人は、初めてじゃないみたいに滑らかに談話していた。
(すっご〜〜……全然ついてけない)
ベリーは黙って、皿の縁をなぞった。
一頻り話した後、視線はマリアに向いた。
「さぁ……マリアさん。君とも話そう」
「!えぇ。……お話しましょう」
場に緊張が走る。マリアは緩く笑みを浮かべた。
「……もし、この輪から一人だけ外すとしたら、誰だと思う?」
「!!っふふ」
マリアは思わず笑いをこぼした。随分意地悪な質問だ。
シリウスは硬い笑みを崩さない。
「……そうね。私は、そんな質問、意味がないと思います」
「!!ほう、なぜ?」
「私は、この中の誰一人として、外す前提で見ていませんの。それに──」
マリアは一拍置き、視線をシリウスに向ける。
感情ではなく、静かな確信を湛えた眼差しで。
「外れるとしたら、“私が外れる時”ですわ」
シリウスの眉が、僅かに動く。
「私がこの輪に立つ理由を失った時、この関係は自然と形を変える。誰かを切り捨てる必要なんて、ありませんの」
指先を軽く組み、微笑む。
「人は、役割を終えれば去ります。それは敗北でも、拒絶でもない」
そして、少しだけ残酷に。
「……執着は、関係を腐らせますわ」
沈黙。
シリウスは、ようやく口元を緩める。
「なるほど。君は"選ぶ側"ではなく、"場そのもの"だ」
マリアは肩をすくめる。
「そう見えるなら、光栄ですわ」
緊張が解けた。ベリーも、無意識に張っていた肩を下ろす。
シリウスは、このマリア個人に興味があるというより、この5人の和を面白がっていた。そして、その中心にいる存在としての、マリアに。
「ぜひまた、一緒にランチでも行こう」
「えぇ、もちろんです」
マリアは外面の良い顔で微笑んだ。シリウスも微笑む。
そうしてやっと、ベリーからすれば尋問のような時間を終えた。
「……ねぇ、このチキン美味しいわね」
マリアが切り出す。
「あぁ、そうだね────────」
その後は普通に、楽しく談笑しながら食事をした。
「──────さぁ、そろそろお終いにしましょうか」
マリアが言う。
「そうだね、終わりにしようか」
ケイネラも同意する。
自然と、皆シリウスの言葉を待った。
「……そうだな。皆さん、今日は来てくれてありがとう。5人で楽しめばいい所を、無理言って悪かったな。だが……お陰で面白いものが見れた」
シリウスはマリアを見る。マリアは目を合わせて微笑む。シリウスも笑った。
「片付けはこちらでやろう」
「ありがとうございます。お言葉に甘えさせていただきます。本日はありがとうございました。皆、行きましょうか」
「はい」
「ケイネラも、今日はありがとう。また学校でね」
「うん。気をつけて帰ってね」
ケイネラは立ち上がり、玄関のドアを開けた。
「またね」
「うん、また」
手を振って、別れる。
そうして、クリスマスパーティーは終わった。
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シリウスが入ったら面白いかなと思って入れたら、面白い化学反応が起きましたね。作者としてこんなに嬉しいことはありません。緊張感が段違いでした。
ケイネラがモデル一家と第4話で書いたのですが、少し変更します。書いてみたらシリウスは経営者の器でした。キャラもイメージと違いました。




