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マリア・ファムファタールの楽園(エデン)  作者: 砂之寒天
1年生

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第21話 雪の降る街

クリスマスマーケットに行ったことがないのに、小説で書くのが2回目です。

ちょっと流行りの情報が古いですが、クリスマスあたりに流行ってたと思うので取り入れました。

 12月、2週目の土曜日。マリアとベリーは、クリスマスマーケットに行った。


「わぁ……!綺麗ね」

「ね〜!!めちゃ大きなクリスマスツリー!!」


 イルミネーションでキラキラ光るクリスマスツリーをバックに、写真を撮る。

 二人で盛り上がる。ベリーの明るい声はよく目立った。


「顔の近くに、ピンクの画面を映すのが流行りなのよね」

「そーそー!!」


 そうすると血色が良くなって盛れるのだ。マリアも少しずつ、流行りの写真の撮り方が分かってきた。


 マリアが出店を指さす。


「あれ、美味しそう」

「買ってくるね!!」


 マリアは欲しいものを分かりやすく教えた。ベリーは喜んで買いに行く。

 サンタさんのクッキーと、雪だるまのマシュマロが乗ったホットチョコ。甘い香りがする。


「映えるね〜!マリアちゃんと一緒だと、尚更!」

「ふふ、ありがとう」


 マリアがホットチョコの熱で頬を赤くする。その顔を正面から見る。


(あぁ〜〜、満たされる!!)


 ベリーは幸福が最高潮だった。


 今マリアの瞳に写っているのは、ベリーだけだ。その事実が、最近荒んでいた心を撫でてくれた。


 クリスマスグッズのお店で、2人は立ち止まる。


「マグカップお揃いにしない!?」

「あら、いいわよ。どれにしましょうか……」


 暫く吟味する。


「皆にも買う?」

「えっ────────」


 ベリーは動揺した。マリアは本気で言っているようだ。


「その……」


 言い淀む。


「……ボクは、マリアちゃんとお揃いにしたいんだけど」


 ベリーは斜め下を見ながら、頬をベリー色に染めた。

 チラリとマリアを見る。マリアはびっくりした顔をしていた。


「!!あらあら、ごめんなさいね。皆には買わないわ」


 マリアはこれにキュンと来て、ベリーの頭を撫でた。ベリーは下を向いたままそれを受け入れた。


「……これなんかどうかな?」

「それ、かわいいわね」


 蓋が付いていて、クリスマスツリーの見た目になるマグカップを指した。


「それにしましょう」

「おっけー!これください!」


 ベリーは店員さんに元気よく声をかける。


「あぁ、私が買うわ」


 マリアがベリーの肩を叩く。


「えっ!いいよいいよ、ボクが買うよ」

「いつものお礼よ。ここは私に買わせて頂戴」

「……分かった!ありがとう!」


 ということで、マリアが買った。ちょっとだけ、さっきのお詫びも入っているかもしれない。


「冬のうちは使えるし、使わなくなっても暫く飾って可愛がれるわ」

「!!うんうん!!」


 そんなに大事にしてくれるのが、ベリーは嬉しかった。


 別の店も見る。


「オーナメント売ってるよ!」

「ほんとね。ツリー買ってつけようかしら」

「……それなら、ボクとオーナメント決めない?」

「いいわよ」


 ベリーは少し勇気を出して言ったのに、マリアはサラッと承諾した。


「何色イメージ?」

「そうね、白かピンクがいいわ。部屋に合うように」

「おっけー!!」


 2人はオーナメントを吟味した。


「これ可愛くない?」

「えぇ、いいわね。それも買いましょう」


 二人で商品を見つめるのは、幸福の1ページだった。


「いっぱい買ったね〜!!」

「えぇ。ありがとう。飾るのが楽しみだわ」


 マリアの満足そうな顔を見て、ベリーも大満足であった。


「あ、雪降ってきた!」

「ほんと」


 頬が冷たくなったので何かと思えば、雪である。


「ねぇ、せっかくだし、街中も歩かない?」

「……いいわよ」


 少し冷えるが、まぁいいだろう。


 2人はクリスマスマーケットを後にし、街中へ歩き出した。


 雪の降る街を、二人で歩く。

 明かりは、淡いオレンジの街灯と、窓から漏れる光のみだった。


 雪がそれらを反射して、白く光る。


「真っ白ね」

「ね!綺麗〜☆」


 ベリーはマリアの横顔を見つめる。マリアは空から雪が降るのを見つめていた。


「あっ、ちょっとそのまま止まって!」


 突然、ベリーはそう言った。


「……ん」


 マリアは驚かず、視線を止めて固まる。


 ベリーは急いでスマホを取り出して、画角を探す。


 写真を撮る。


「うんうん、いい感じ!」


 ありのままのマリアの美しさを写真に切り取り収めることは、ベリーの幸福だった。


 マリアは視線を動かし、ベリーがスマホを下げたことを確認する。


「行きましょ─────きゃっ!!」


 瞬間、マリアが滑った。


「っ!!」


 ベリーは咄嗟にマリアを抱きしめ、支える。


 ……なんとか、転ぶのは回避できた。ドキドキと脈打つ心臓だけが、残された。


「……よかった」

「……」


 ベリーはホッとしたように言う。

 マリアは俯いている。


「……大丈夫?」

「っ……えぇ」


 その声は少し、低かった。機嫌を損ねただろうか。


 そして、たっぷり溜めた後、マリアは顔を上げた。その顔は、赤かった。

 そして、小さく言う。


「……恥ずかしいわ」


 その言葉に、いじらしい表情に。ベリーは心臓を鷲掴みにされてしまった。


「っ……」


 言葉が出ない。


 ただ、思えたことは。


(──────ボクが、守らないと)


 それだけだった。


 ベリーはずっと、自分を強いとも弱いとも思ってこなかった。ただ、強者じゃないことだけは、知っていた。


 でも、マリアと一緒にいると────守りたい者が、確かな形を持ってしまう。


(弱いままじゃ、ここにはいられない)


 それは選択だった。ずっと、目を逸らし続けてきたものを、見つめ直す。そんな選択。


 マリアは拗ねたように、ツンと尖った仄かに赤い鼻から、スンと息を吸う。


 ベリーはマリアの手を、そっと握る。

 マリアはベリーを見上げる。この1年で、すっかり身長を追い越されてしまった彼を。


「ボクが───────君に、綺麗な景色を見せる」


 それは告白ではなく、確信であった。

 マリアはそれに、目をぱちぱちと瞬く。


 そして、ふ、と息を吐いた。


「……えぇ。楽しみにしてるわ」


 そう返した。


 暫く歩いた。


「……疲れたわ」

「座ろっか!」


 近くのベンチを指す。


 ベリーが雪をどかして、マリアを座らせる。


「〜♪」


 マリアが小さく鼻歌を歌う。その音は雪に吸われるが、隣にいるベリーには聞こえた。


「あ、All I Want for Christmas Is You?」

「ふふ、そう。貴方、発音綺麗ね」

「うん!ボク中学生の頃、海外に短期留学してたんだよね」

「!!そうなの?どおりで」


 マリアは驚く。だが、ベリーらしいと思った。


「All I want for Christmas is you〜♪」


 2人は雪を見ながら、一緒に歌った。


「……そろそろ帰ろっか!」

「えぇ」


 2人は立ち上がる。


「手、つなご?」

「ふふ、いいわよ。少し寒いと思っていたの」

「!!ごめん気づかなくて!!」

「いいわよ」


(次から気をつけなきゃ)


 ベリーはそう思った。


 2人は、雪の中を手を繋いで帰ったのだった。


 寮に帰ったベリーは、写真をマリアに送りながら、見返す。


「あぁ〜、かわいい……」


 どの画角から撮っても、どこで撮っても、マリアは可愛かった。捨てる写真なんて1枚もない。


(幸せだ〜〜)


 噛み締めるように、目を閉じた。


 

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