第20話 12月初頭
12月。寒さが身に染みる季節となった。
動物も冬毛になり、マリアの服装もモコモコしてくる。
(冬毛のマリアちゃんかわい〜〜)
ベリーはキュンキュンした。
休み時間。マリアを中心に屯す4人がいた。
クリスマスマーケットの宣伝動画が、ベリーの動画に回ってきた。
「みてみて!マリアちゃん。今週末ここ行かない?」
ベリーがスマホを指しながら言う。
「……あぁ、ごめんなさいね。今週末はラビちゃんと遊ぶの」
マリアは申し訳なさそうに言った。
「ら、ラビちゃん??」
ベリーは困惑しながら聞き返す。そこには、僅かな焦りが。
「えぇ。文化祭で、同じステージにいたでしょう?ラビルナ・ギザちゃんよ」
「あ、ラビルナさんね!!あのチーターみたいな女の子だ」
「……貴方、人の事そうやって覚えるのね。そう、彼女よ」
「ふーん……ラビルナさんかー……」
ベリーはつまらないという顔を全面的に押し出して、視線を逸らした。
マリアが意外と、素のままのベリーを好きなこと。それに気付いたからだ。
「ふふ、そんな顔しなくても」
案の定、マリアは仕方なさそうに笑う。
「……ま、いーよ?クリスマスはボク達と過ごすんでしょ?」
ベリーの中では、クリスマス=恋人が過ごす日として、当たり前に一緒にいると思っている。が、これが良くない。
「ちゃんと誘ってくれたら、行くわよ」
マリアは少しツンとした顔で言った。
「っ、あぁ、ごめんごめん!クリスマス皆で過ごそ?」
ベリーはすぐマリアの不機嫌の理由を察知し、そう言い直す。要は、誘わずに一緒に居れる女として扱われるのが、マリアは嫌なのだ。
「えぇ。……貴方達もそれでいいわよね?」
マリアは当然のように言う。
「勿論です。……僕から誘うべきでしたね。すみません」
フィリアは眉を顰めてそう言った。
「いいのよ。今のは流れが悪いわ」
マリアは気にしないように言った。
「俺も構わない。楽しみにしていよう」
「ケイネラくんも誘いに行こ!!」
「えぇ、行きましょう」
B組のクラスに行った。
「ケイネラくーん!!!」
クラス中の人がこちらを見た。ベリーは気にしない。
「……ん?」
クラスメイトと話していたケイネラが、こちらに来る。
「どうかしたの」
ケイネラが首を傾げる。
「クリスマス皆で過ごそ!!」
ベリーは持ち前の明るさと共に誘った。
「あぁ、クリスマス……。うん、いいよ。皆で過ごそう」
「おっけ〜!!」
ということで、5人で過ごすことが決まった。
「ケイネラは毎年誰と過ごしていたの?」
「家族と。まぁでも、今年はいいかな。……恋人もできたし」
ケイネラは少し頬を染めて、マリアに微笑んだ。
「あら、そう」
マリアは少し嬉しそうに目を伏せた。ケイネラの手の甲を優しく掻く。
そこにラビルナが来た。
「マリア」
「あ、ラビちゃん。今週末、楽しみにしてるわ」
「うん」
嬉しそうに笑う二人。
ベリーはそれを見て、胸がモヤモヤした。
(……ボクが先に仲良くなったのに。)
ムスッとした顔で、見てしまう。
ラビルナがそれに気付いた。
「……ふふっ、マリアの彼氏は可愛いね」
「!!」
ベリーは驚き、顔を赤くした。
「……そうね。少し可愛らしすぎるかしら」
「まぁまぁ」
マリアは仕方がないと言ったふうだ。
「……でも、面白そう。マリア、退屈しないんじゃない?」
「……それはそうね」
ラビルナは首を傾げる。ブロンドの髪が揺れた。
「見てると、フィリアが楽しそうだわ」
マリアはフィリアの頬をつつく。フィリアは特に嫌がらず、受け入れる。
「おや、気付いていましたか」
「あ!そうそう、フィリアくん、意地悪なんだよ〜!!」
「……好意ですよ」
フィリアは心外そうに言う。
「ふふ、許してあげて。男友達には意地悪しちゃうのよ」
「え〜」
マリアからの意地悪なら喜んで受けるが、フィリアからの意地悪は別に嬉しくなかった。
だが、マリアが許せと言うなら許すしかない。ベリーは観念した。
「そうそう、ベリーさんは意地悪される運命なんだよ」
「ラビルナさんまで〜!!」
からかわれるから、立場がなかった。
「……さぁ、行きましょうか。またね、ラビちゃん。ケイネラも」
「うん、またね」
「また後で」
そうして、授業に戻った。
ベリーは思う。
「マリアちゃんのこと独占したいけど、ムリだよな〜〜」
隣にいたフィリアはクスリと笑う。
「それは無理ですよ。観念しなさい」
「えっ、ボク、声にでてた!?」
「少し。僕にしか聞こえていません」
「良かったッ!!」
肝が冷えた。
「貴方は認めるべきですよ。マリアの自由を。二度言いますが、観念しなさい」
「は〜い……」
言う通りにした方がいい気がした。
「……でも、嫉妬しちゃうんだよね。皆に」
「それは、貴方がまだマリアとの関係に満足していないからでしょうね。時間が経てば自ずと無くなりますよ」
「……確かに」
フィリアはよく、的を射る発言をする。
「結局、時間か〜〜」
「えぇ、時間ですね。いずれ安定しますよ。僕とマリアのように」
「そっか〜」
さり気なくマウントを取られたことは気にしない。
なんとなく、胸のつっかえが取れた。
「……ありがと」
「!おや。いえいえ」
ベリーは小さく礼を告げた。それが本心だと分かったフィリアは驚いたが、なんでもないように言う。
放課後、ベリーはマリアの部屋に行った。恋人になってからというもの、よく入り浸っているのである。
️「……ラビルナさんとは、どこに行くの」
ベリーは少し拗ねながら聞く。
「ふふ、気になる?……内緒」
「も〜〜!!」
ただでさえ嫉妬で落ち着かないのに、秘密にされてしまうから、ベリーはおかしくなりそうだった。
「来週末は、デートしよ?」
「いいわよ」
ベリーはホッとした。大丈夫、まだボクは選ばれてる。
耐えられたと、思い込もうとした。
マリアはベリーの心情を薄々察していたが、何もしなかった。
ラビルナと遊ぶ日になった。
2人は寒地に旅行に行っていた。
2人は一緒に雪だるまを作っていた。
Lumiに投稿された2人は、仲睦まじく笑っている。距離も近い。
それを見て、ベリーは拗ねる。
(あーあ、ボクの場所なんだけどな)
スマホを放り投げて、ふて寝した。
……
「ん……あれ、今何時?」
スマホを見る。
18時であった。
「やば、めっちゃ寝てた……ん?」
マリアからメッセージが来てることに気付く。
グループチャットに、動画が投げられていた。5人が入ってるチャットだ。
「なんだろ……」
少しワクワクしながら、動画を開く。
……マリアが雪をハート型にくり抜き、カメラに向けて差し出す。
「……どーぞ♡」
赤くなった鼻と、ふわふわのウシャンカ。冬らしい赤色を使ったメイクをしたマリアは、雪で真っ白な背景の中、林檎のように鮮やかだった。
「か、かわい〜〜!!!」
ベリーは口を抑えて、そう叫ぶ。あまりの可愛らしさで、泣いてるようにも聞こえた。
「どうしよう、可愛すぎる……」
仰向けになって、天を仰ぐ。
この胸の熱は、暫く冷めそうになかった。
ラビルナ、名前からウサギちゃんのイメージがあります。全然本人とは関係ないのに。チーターだってば。
マリアがフィリアの頬をつつくところで、なんだろう、、長年の信頼関係が透けて見えて尊かったです。ありがとう。
マリアにハートを差し出されたイメージで叫びました。どうしよう、マリアが可愛すぎる。
マリアの嫉妬させるのと供給のさじ加減が絶妙ですよね。狂わせるのが上手いです。私がベリーの立場だったらとても耐えられませんでした。作者でよかった。




