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マリア・ファムファタールの楽園(エデン)  作者: 砂之寒天
1年生

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19/25

第19話 文化祭後 遊園地デート

 ベリーがLumiに上げた、プリンス&プリンセスグランプリの動画。

 それはバズり、マリアは時の人となった。


「マリアちゃーん、見てみて!万バズ!」

「わ、凄いわ!」


 マリアは手を合わせて喜んだ。


 それから数日は、学校まで取材が来ては、対応する日々。モデルのスカウトもされたが、マリアは悩んだ末、断った。まだ自分の道を決めたくなかったのだ。


 数多の人の目に触れたその動画だが、一番見ているのは、ベリーだろう。ベリーはそう思った。


(………)


 特に、マリアがウィンクするシーン。何度見てもここは心臓がドキッとする。


 放課後。ベリーはマリアの部屋に行った。


 ベリーが撮った他の動画を、マリアと一緒に見る。


「上手に撮れてるのね」


 そう言いながら嬉しそうにするマリアを、ベリーは幸福そうに見ていた。


 マリアに焦がれる目に、かつての影はなかった。


「ねぇ……」

「?」


 ベリーはマリアを呼ぶ。


「……、今週末、デートしない?」

「!!」


 ベリーが、遊ぶことをデートと言うのは、初めてだった。


「……えぇ。良いわよ。しましょう、デート」


 マリアは微笑んだ。


「……やった〜☆どこ行く?遊園地とか?」

「あ、良いわね。それにしましょう」

「決まり!!ね、回る順番考えよ!!」

「ベリーくんってこういう時、計画立てるのね」

「うん!だって、効率よく回った方が沢山楽しめるじゃん?」

「そうね。どこから回りましょうか……」


 2人はテーマパークの地図をスマホで見たり、攻略動画を見たりしながら話し合った。


 週末。

 2人は遊園地に来ていた。


 開園と同時にパーク内に入る。


 プライオリティパスを取得し、カチューシャを買いに来た。


「これね」


 買うものは決めてあった。

 リボン部分がブラウンのチェックになった、うさぎ耳のカチューシャ。マリアはこれに合わせて今日はコーディネートしてきたのだ。


 ベリーも同じものを手に取る。


 今日、ベリーはマリアに財布を出させる気はなかった。


「じゃ、買ってくるね!」

「お願いね」


 カチューシャを着けたマリアの写真を撮る。


「少し斜めに視線向けて……いいね!そう」


 写真のポーズならベリーの方が詳しい。そのままでもマリアは可愛いが。


「どうかしら?」

「バッチリ!」

「ふふ、ベリーくんはお写真上手ね」

「!!」


 ベリーは思わず照れる。褒められ慣れた事でも、マリアに言われると嬉しくて、胸が温かかった。


 先にフードを食べた。朝食でもあるし、写真のためでもある。髪型やメイクが崩れる前に済ませたいのだ。


「マリアちゃん、これ食べる?」

「ん、食べるわ」


 前は叶わなかったあーんを、ベリーは叶えた。


 目を軽く伏せて、無防備に口を小さく開けるマリア。

 それを見つめて、静かに胸を震わせる。


 歩きながら、ベリーはマリアと手を繋ごうか迷っていた。


(繋ぎたい……けど)


 まだ告白してないのに、いいのだろうか。遊ぶ時に手を繋ぐのとは、意味が違う。


 勇気を出して、そっとマリアの手を取ってみる。


「……」


 マリアは少し逡巡した後、優しく解いた。細くて柔らかい手が、離れていく。


「っ、え」

「ふふ」


 マリアは悪戯っぽく笑う。


「……ダメよ。……まだ」


 弓なりの、少し鋭さのある目。ベリーは蛇に絡め取られた気分だった。


「〜〜っ、ごめん!」

「いいのよ」


 気にしない風に言うが、ベリーは少し後悔していた。


(あ〜〜、もう、上手くいかない!!)


 これ一つでそう思ってしまうくらい、緊張していた。


 ジェットコースターに着いた。


 パスのお陰で、すぐ乗れる。


「楽しみね」

「うん!!」


 バーを下ろしながら、マリアは微笑む。


「それでは、行ってらっしゃい♫」


 キャストさんに手を振られて、コースターは発進した。


 ゆっくり登っていき、緊張が高まる。


 マリアは一瞬、ベリーに手を伸ばしかけたが、やめた。

 ベリーは気がつかなかった。


「キャーーー!!!!」

「わーーーっ!!」


 ジェットコースターが、落ちる。浮遊感に2人は叫んだ。


 勢いよく進んでいき、強いGがかかる。


「きゃあはは!!」

「すごいすごいっ!!」


 2人は大はしゃぎだった。


 やがて、コースターは止まる。

 マリアは乱れた髪を整えながら、笑った。


「はぁ、面白かった」

「ね〜!最高だった!!」


 2人は楽しい気持ちを共有した。


 次は、コーヒーカップ。


「全力で回すのと、全く回らないのどっちがいい?」

「そんなこと出来るの?……全く回らないのに乗ってみたいわ」

「おっけー!」


 ベリーは友達と何度も来ているので、そんな技術も持っている。


 ベリーは高度な運転技術で、全く動かないコーヒーカップを実現した。


「あはは、ははは!本当に回らないのね!!」

「そうっ、酔いたくない友達の為にっ、習得したんだっ」

「きゃぁはは!」


 本当に全く動かないのに、マリアは心底楽しそうだった。


「きゃはははは!!」


 マリアは無邪気に笑っていた。


「……」


 ベリーはその顔をチラリと見ていた。


 終わった時、マリアはすっかり笑い疲れていた。


「はー、笑ったわ」

「それは良かった!!」


 ベリーは笑いすぎて濡らした目尻を拭く、マリアの横顔を眺める。


 思わず、写真を撮った。


(……これは上げたくないな)


 自分だけの宝物にしたい。そう思うような1枚だった。


 その後も、色んなジェットコースターに3回乗り、シューティングに乗り、メリーゴランドに乗った。


「乗れる?」

「大丈夫よ」


 メリーゴランドの馬の横で、2人は話す。

 ベリーもこの1年で身長が伸びて、マリアと同じくらいになった。


「めっちゃ可愛い!!」

「ふふ、ありがとう」


 ピンクのメルヘンな馬に乗るマリアは、本当に可愛らしかった。一回目は一緒に乗り、2回目は写真を撮るためにベリーは外にいた。


 こちらに手を振るマリアに、手を振り返す。


(あぁ、この時間が───────)


 ずっと続けばいいのに。そう思ってしまうのだった。メリーゴランドが、少しゆっくりに見えた。


 夕方。日が落ちて、ライトが点く。


「……」

「……」


 少し口数が減って、静かな時間が増えた。


「……次、何乗る!?」

「ふふ、何に乗ろうかしら……」


 その声は、少し柔らかい。

 マリアは視線を上げる。


 そして、ゆるりと指を指す。


「……あれ」


 それは、観覧車だった。


「っ……おっけ〜!じゃあ行こっか☆」


 ベリーは少し足がはやるのを抑える。

 マリアは無意識に、ベリーの歩幅に合わせた。


 チラリチラリと、マリアを見る。マリアもたまに、視線を返す。


(………)


 少し切ない気持ちだった。泣きそうな顔をしてしまう。


(例え、友達でいられなくなっても……)


 ベリーは思った。


 観覧車に着く。覚悟は決まっていた。


 先に乗ったベリーは、マリアに手を差し出し、エスコートする。


 対面。

 少しして、段々高くなってきた。

 マリアは窓に向いて、景色を見る。


「わ、凄いわ」

「……」


 マリアの感動する声が、静かな機内に染みる。


 そして、頂上に到達した時。ベリーは声をかけた。


「……ねぇ、マリアちゃん」


 マリアは振り返る。


「ボク……」


 少し躊躇う。息を吸う。


「……キミに……もっと、沢山の綺麗な景色を見せたい。キミと──────」


 ベリーはマリアを見つめた。


「──────付き合いたい。ボクを選んでくれませんか」


 振られても良かった。それでも、この想いを伝えたかった。


 マリアはその気持ちを、すぐ理解した。


「……泣きそうな顔してるわ」

「っ、」

「……」


 ベリーは俯いた。


「……いいわよ」

「っ!!」


 ベリーはバッと顔を上げる。


「私に───────綺麗な景色、沢山見せて」


 マリアはベリーの頬に手を添えた。


 ベリーは涙腺が緩み……泣いてしまった。


「あら……ふふ」

「っ……ズッ……」


 必死に泣き声を抑える。


「あ"りがとう"」

「ふふ、いいのよ。貴方の覚悟、受け取ったわ」

「よ"かった〜〜」

「あらあら」


 全く、様にならない。だが、こんなに幸せなことはなかった。


 思わず抱きしめる。


 ベリーの香りがした。ここで初めて、その香水をつけてる事に気がついた。


「……マリアちゃん、この香水……」

「……やっと、気付いた?」


  マリアは笑う。ベリーは照れた。泣いてしまったことの羞恥も追いついた。


「カッコつかない"〜〜〜」

「ふふふ、ベリーらしかったわよ」

「ねぇそれってどういうこと〜!?」

「ふふふ」


 空気も緩み、マリアは楽しそうに笑う。


「ね、写真撮っていい?」

「いいわよ。……あぁ、でも、もう下りてきたわね」

「いいよ、それでも」


 カッコつかないのは同じだが、ベリーはもうそれでもよかった。


 ベリーは涙を拭いた。


「はい、チーズ!!」


 パシャリ。

 この世で一番幸福な1枚だった。


 帰り道。


「……冷えるね」

「そうね」


 11月だ。夜になると、よく冷えた。


 ベリーはポッケに手を突っ込んでいた。

 その手を取りだし、マリアに差し出す。


「……手、つなご」

「……ふふ、いいわよ」


 今度は、繋げた。マリアの温もりが、手に染みる。


「あったか〜〜……」

「ふふ、ベリーも」

「ボク?温かいかな……?」


 そうは思わないが。


「……温かいわよ。……貴方の近くは、ずっと」


 マリアは小さくそう呟いた。


 ベリーは驚いてマリアを見る。目は合わない。マリアは斜め下を見ていた。


「え、それって」

「ふふ」

「え、え〜〜!!」


(それって、ボクのこと好きだったってこと!?)


 ベリーはそう認識した。マリアはそこまでは言ってないが。


「〜〜、へへっ、楽し!!」


 ベリーは軽く跳ねた。


「ふ、そうね!」


 マリアもそれに釣られて、軽く跳ねる。


 ……まぁるいお月様が、2人を見下ろしていた。

★評価、ブックマーク、コメント、レビュー、リアクションお待ちしております。よろしくお願いします。


中々壊れねぇな…と思ってるかと思いますが、私のペースで壊していくのでお待ちください。


マリアの呼び方が、ベリーくんから、ベリーになったのに気付きましたか?私は読み返して気づきました。作者なのに。

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