第19話 文化祭後 遊園地デート
ベリーがLumiに上げた、プリンス&プリンセスグランプリの動画。
それはバズり、マリアは時の人となった。
「マリアちゃーん、見てみて!万バズ!」
「わ、凄いわ!」
マリアは手を合わせて喜んだ。
それから数日は、学校まで取材が来ては、対応する日々。モデルのスカウトもされたが、マリアは悩んだ末、断った。まだ自分の道を決めたくなかったのだ。
数多の人の目に触れたその動画だが、一番見ているのは、ベリーだろう。ベリーはそう思った。
(………)
特に、マリアがウィンクするシーン。何度見てもここは心臓がドキッとする。
放課後。ベリーはマリアの部屋に行った。
ベリーが撮った他の動画を、マリアと一緒に見る。
「上手に撮れてるのね」
そう言いながら嬉しそうにするマリアを、ベリーは幸福そうに見ていた。
マリアに焦がれる目に、かつての影はなかった。
「ねぇ……」
「?」
ベリーはマリアを呼ぶ。
「……、今週末、デートしない?」
「!!」
ベリーが、遊ぶことをデートと言うのは、初めてだった。
「……えぇ。良いわよ。しましょう、デート」
マリアは微笑んだ。
「……やった〜☆どこ行く?遊園地とか?」
「あ、良いわね。それにしましょう」
「決まり!!ね、回る順番考えよ!!」
「ベリーくんってこういう時、計画立てるのね」
「うん!だって、効率よく回った方が沢山楽しめるじゃん?」
「そうね。どこから回りましょうか……」
2人はテーマパークの地図をスマホで見たり、攻略動画を見たりしながら話し合った。
週末。
2人は遊園地に来ていた。
開園と同時にパーク内に入る。
プライオリティパスを取得し、カチューシャを買いに来た。
「これね」
買うものは決めてあった。
リボン部分がブラウンのチェックになった、うさぎ耳のカチューシャ。マリアはこれに合わせて今日はコーディネートしてきたのだ。
ベリーも同じものを手に取る。
今日、ベリーはマリアに財布を出させる気はなかった。
「じゃ、買ってくるね!」
「お願いね」
カチューシャを着けたマリアの写真を撮る。
「少し斜めに視線向けて……いいね!そう」
写真のポーズならベリーの方が詳しい。そのままでもマリアは可愛いが。
「どうかしら?」
「バッチリ!」
「ふふ、ベリーくんはお写真上手ね」
「!!」
ベリーは思わず照れる。褒められ慣れた事でも、マリアに言われると嬉しくて、胸が温かかった。
先にフードを食べた。朝食でもあるし、写真のためでもある。髪型やメイクが崩れる前に済ませたいのだ。
「マリアちゃん、これ食べる?」
「ん、食べるわ」
前は叶わなかったあーんを、ベリーは叶えた。
目を軽く伏せて、無防備に口を小さく開けるマリア。
それを見つめて、静かに胸を震わせる。
歩きながら、ベリーはマリアと手を繋ごうか迷っていた。
(繋ぎたい……けど)
まだ告白してないのに、いいのだろうか。遊ぶ時に手を繋ぐのとは、意味が違う。
勇気を出して、そっとマリアの手を取ってみる。
「……」
マリアは少し逡巡した後、優しく解いた。細くて柔らかい手が、離れていく。
「っ、え」
「ふふ」
マリアは悪戯っぽく笑う。
「……ダメよ。……まだ」
弓なりの、少し鋭さのある目。ベリーは蛇に絡め取られた気分だった。
「〜〜っ、ごめん!」
「いいのよ」
気にしない風に言うが、ベリーは少し後悔していた。
(あ〜〜、もう、上手くいかない!!)
これ一つでそう思ってしまうくらい、緊張していた。
ジェットコースターに着いた。
パスのお陰で、すぐ乗れる。
「楽しみね」
「うん!!」
バーを下ろしながら、マリアは微笑む。
「それでは、行ってらっしゃい♫」
キャストさんに手を振られて、コースターは発進した。
ゆっくり登っていき、緊張が高まる。
マリアは一瞬、ベリーに手を伸ばしかけたが、やめた。
ベリーは気がつかなかった。
「キャーーー!!!!」
「わーーーっ!!」
ジェットコースターが、落ちる。浮遊感に2人は叫んだ。
勢いよく進んでいき、強いGがかかる。
「きゃあはは!!」
「すごいすごいっ!!」
2人は大はしゃぎだった。
やがて、コースターは止まる。
マリアは乱れた髪を整えながら、笑った。
「はぁ、面白かった」
「ね〜!最高だった!!」
2人は楽しい気持ちを共有した。
次は、コーヒーカップ。
「全力で回すのと、全く回らないのどっちがいい?」
「そんなこと出来るの?……全く回らないのに乗ってみたいわ」
「おっけー!」
ベリーは友達と何度も来ているので、そんな技術も持っている。
ベリーは高度な運転技術で、全く動かないコーヒーカップを実現した。
「あはは、ははは!本当に回らないのね!!」
「そうっ、酔いたくない友達の為にっ、習得したんだっ」
「きゃぁはは!」
本当に全く動かないのに、マリアは心底楽しそうだった。
「きゃはははは!!」
マリアは無邪気に笑っていた。
「……」
ベリーはその顔をチラリと見ていた。
終わった時、マリアはすっかり笑い疲れていた。
「はー、笑ったわ」
「それは良かった!!」
ベリーは笑いすぎて濡らした目尻を拭く、マリアの横顔を眺める。
思わず、写真を撮った。
(……これは上げたくないな)
自分だけの宝物にしたい。そう思うような1枚だった。
その後も、色んなジェットコースターに3回乗り、シューティングに乗り、メリーゴランドに乗った。
「乗れる?」
「大丈夫よ」
メリーゴランドの馬の横で、2人は話す。
ベリーもこの1年で身長が伸びて、マリアと同じくらいになった。
「めっちゃ可愛い!!」
「ふふ、ありがとう」
ピンクのメルヘンな馬に乗るマリアは、本当に可愛らしかった。一回目は一緒に乗り、2回目は写真を撮るためにベリーは外にいた。
こちらに手を振るマリアに、手を振り返す。
(あぁ、この時間が───────)
ずっと続けばいいのに。そう思ってしまうのだった。メリーゴランドが、少しゆっくりに見えた。
夕方。日が落ちて、ライトが点く。
「……」
「……」
少し口数が減って、静かな時間が増えた。
「……次、何乗る!?」
「ふふ、何に乗ろうかしら……」
その声は、少し柔らかい。
マリアは視線を上げる。
そして、ゆるりと指を指す。
「……あれ」
それは、観覧車だった。
「っ……おっけ〜!じゃあ行こっか☆」
ベリーは少し足がはやるのを抑える。
マリアは無意識に、ベリーの歩幅に合わせた。
チラリチラリと、マリアを見る。マリアもたまに、視線を返す。
(………)
少し切ない気持ちだった。泣きそうな顔をしてしまう。
(例え、友達でいられなくなっても……)
ベリーは思った。
観覧車に着く。覚悟は決まっていた。
先に乗ったベリーは、マリアに手を差し出し、エスコートする。
対面。
少しして、段々高くなってきた。
マリアは窓に向いて、景色を見る。
「わ、凄いわ」
「……」
マリアの感動する声が、静かな機内に染みる。
そして、頂上に到達した時。ベリーは声をかけた。
「……ねぇ、マリアちゃん」
マリアは振り返る。
「ボク……」
少し躊躇う。息を吸う。
「……キミに……もっと、沢山の綺麗な景色を見せたい。キミと──────」
ベリーはマリアを見つめた。
「──────付き合いたい。ボクを選んでくれませんか」
振られても良かった。それでも、この想いを伝えたかった。
マリアはその気持ちを、すぐ理解した。
「……泣きそうな顔してるわ」
「っ、」
「……」
ベリーは俯いた。
「……いいわよ」
「っ!!」
ベリーはバッと顔を上げる。
「私に───────綺麗な景色、沢山見せて」
マリアはベリーの頬に手を添えた。
ベリーは涙腺が緩み……泣いてしまった。
「あら……ふふ」
「っ……ズッ……」
必死に泣き声を抑える。
「あ"りがとう"」
「ふふ、いいのよ。貴方の覚悟、受け取ったわ」
「よ"かった〜〜」
「あらあら」
全く、様にならない。だが、こんなに幸せなことはなかった。
思わず抱きしめる。
ベリーの香りがした。ここで初めて、その香水をつけてる事に気がついた。
「……マリアちゃん、この香水……」
「……やっと、気付いた?」
マリアは笑う。ベリーは照れた。泣いてしまったことの羞恥も追いついた。
「カッコつかない"〜〜〜」
「ふふふ、ベリーらしかったわよ」
「ねぇそれってどういうこと〜!?」
「ふふふ」
空気も緩み、マリアは楽しそうに笑う。
「ね、写真撮っていい?」
「いいわよ。……あぁ、でも、もう下りてきたわね」
「いいよ、それでも」
カッコつかないのは同じだが、ベリーはもうそれでもよかった。
ベリーは涙を拭いた。
「はい、チーズ!!」
パシャリ。
この世で一番幸福な1枚だった。
帰り道。
「……冷えるね」
「そうね」
11月だ。夜になると、よく冷えた。
ベリーはポッケに手を突っ込んでいた。
その手を取りだし、マリアに差し出す。
「……手、つなご」
「……ふふ、いいわよ」
今度は、繋げた。マリアの温もりが、手に染みる。
「あったか〜〜……」
「ふふ、ベリーも」
「ボク?温かいかな……?」
そうは思わないが。
「……温かいわよ。……貴方の近くは、ずっと」
マリアは小さくそう呟いた。
ベリーは驚いてマリアを見る。目は合わない。マリアは斜め下を見ていた。
「え、それって」
「ふふ」
「え、え〜〜!!」
(それって、ボクのこと好きだったってこと!?)
ベリーはそう認識した。マリアはそこまでは言ってないが。
「〜〜、へへっ、楽し!!」
ベリーは軽く跳ねた。
「ふ、そうね!」
マリアもそれに釣られて、軽く跳ねる。
……まぁるいお月様が、2人を見下ろしていた。
★評価、ブックマーク、コメント、レビュー、リアクションお待ちしております。よろしくお願いします。
中々壊れねぇな…と思ってるかと思いますが、私のペースで壊していくのでお待ちください。
マリアの呼び方が、ベリーくんから、ベリーになったのに気付きましたか?私は読み返して気づきました。作者なのに。




