第18話 文化祭② プリンス&プリンセスグランプリ
プリンス&プリンセスグランプリ当日。
楽屋は熱に包まれていた。
マリアはヘアメイク科の学生2人に、メイクとヘアメイクをしてもらう。
担当は、派手髪派手メイクのギャル2人だった。
「じゃ、ウチらが完璧にしちゃうね〜」
「マリアちゃんはそのままでも完璧だから、上限突破?」
「それな〜」
マリアはくすりと笑う。彼女達のノリは嫌いじゃない。
リハーサル通りにヘア、メイクが完成した。
「やばい、ウチら天才ぢゃね??」
「え、それな??てかマリアちゃんが天才的に可愛い」
「それはそう」
鏡を見たマリアは頷く。
目力を強調するため、ブラックのアイラインとつけまはとても長い。
シェーディングもガッツリいれ、濃厚な印象を与える。
舞台メイクでしか使えなそうな、ギラギラの緑のアイシャドウも好きだ。
リップは真っ赤。少し青みの入ったそれは、冷たく美しい印象を与える。
「……完璧よ」
自分に言い聞かせるように、マリアは呟いた。
ギャル2人がマリアの肩に手を置く。
「完璧なのは当たり前ぢゃん?」
「後はマリアちゃんの歩き次第だから。大丈夫、できるよ」
「ギャチ応援してっから。優勝掻っ攫ってこい!!!」
「えぇ。勿論よ」
マリアは笑った。
「優勝するのはこの私よ。見てなさい、恋に堕としてあげる」
そう宣告した。
舞台袖に移動する。
「っ、おぉ。……仕上げてきたね」
ケイネラはマリアを見て、息を詰め、感嘆の声を上げた。
彼は海色の髪色を活かした、青い波のような服を着ていた。裾は動きに合わせて、波のようにサラサラキラキラ動く。
正に、美。彼の魅力を引き立てる衣装だ。
「貴方も、素敵よ」
「もちろん。ありがとう」
当然だと頷いた。
そこに、ラビルナが来た。
「あら……アルテミスみたいね」
マリアはそんな感想を持った。
ラビルナは、月のような銀色の輝くドレスを着ていた。オフショルでラビルナの褐色の肌が露出しているので、対照的でよく映える。
「ありがとう。マリアは、ファムファタールみたい」
「あら、ファムファタールよ」
「あぁ、そうだった」
クスリと笑う。
3人はお互いを見つめる。
「……励みましょう」
「うん」
「そうだね」
それ以上の言葉は要らない。3人はステージを見つめた。
「さぁ、始まりました!!プリンス&プリンセスグランプリ!!」
司会が話し出す。
舞台袖で、それを見ていた。
(………)
絶対に優勝してみせる。これは証明だ。エデンで一番美しいのは、マリアだということの。
ラビルナも、並んで司会を見ていた。
ケイネラは2人を見る。
2人とも気迫が凄まじい。マリアが蛇なら、ラビルナはチーターだ。どちらも捕食者の目をしている。
だが、負ける気はない。ケイネラにもトップモデルとしての矜恃があるのだ。
やがて、演出が始まった。
既にスポットライトが当たってる所に出ていくのではなく、演者がステージに立った後に、スポットライトが当たる。だから、ライトが当たるまで観客は様子が分からない。
まずは、ケイネラから。
「ケイネラ・メリカ!!!」
カッ
ライトが点く。
ケイネラは慣れたように、ステージを歩く。自分の魅せ方を分かっている歩き方だ。
彼の海の雰囲気に、潮の匂いがするようだった。
観客は彼の美しさに焦がれた。
スポットライトが消える。
次だ。
「ラビルナ・ギザ!!!」
カッ
見た瞬間、観客は眩しさに目を細めた。
それ程までに神々しく、眩しい。スパンコールがふんだんにあしらわれたドレスは、満月の如く。
ステージを歩く。
遠くを見つめて。
フラッシュを炊かれながら、ラビルナは輝いた。
大トリは、マリアだ。
マリアは息を吸い、ステージに躍り出る。
暗闇の中、一瞬目を閉じる。そして目を開き、真っ直ぐ正面を見た。
「マリア・ファムファタール!!!」
カッ
スポットライトが点く。
マリアの姿が現れた。
一瞬、会場が静かになった。
あまりの美しさに、誰もが呼吸を忘れた。
しかし瞬時に、会場は沸騰する。
ワーッ!!!
カメラマンのシャッターが光り、会場中でもカメラが回る。
ベリーも夢中で動画を撮った。撮りながら、マリアを直接視界に収める。
あまりにも、魅惑的。あまりにも、耽美。
マリアは大輪の薔薇のように鮮やかで、蛇のように恐ろしかった。
会場の喧騒も相まって、脳が沸き立つようだ。
(可愛いっ、可愛いっ、可愛い……っ!!)
息が苦しくなるほど、可愛かった。
ふと、目が合った気がした。
バチン
マリアがウィンクした。
「っ〜〜〜!!!!」
明らかに、ベリーに向けて。ベリーは心臓を掴まれた。
それを見ていたフィリア達も、心臓がドクりと脈打つ。
「いま、なにを……」
「ウィンク、したな……」
2人はあまりの衝撃に、真っ赤な顔で、呆然とした。
ワーッ
ライトが消えても、歓声は消えない。司会が話し出すまで、それは続いた。
「では、投票です!!」
スマホを取りだし、投票する。
誰に投票するかなんて、言わなくてもわかる。3人は何も話さなかった。
そして、結果発表。
「まず、準プリンセス!!」
少し間を置いて。
「……ラビルナ・ギザ!!!」
拍手が上がる。
「決まりですね」
「あぁ」
そして、プリンセス。
「プリンセスは───────マリア・ファムファタール!!」
歓声が上がった。
「当然ですね」
「だな」
「やっぱり!!」
3人は納得の結果だった。
プリンスは、やはりケイネラであった。
「最後に、グランプリを決めます!」
ケイネラとマリアの、どちらが美しかったか。それを決める。
ステージには、マリアとケイネラが立った。
暫し、会場が騒めく。
「……集計が終わりました!」
「おっ」
「来ましたね」
勝者の顔は、スクリーンに映る。
ジャカジャカジャカ……
溜めが長い。皆は息を飲み、祈った。
映ったのは────────マリアの顔だった。
「マリア・ファムファタール!!!グランプリは、マリア・ファムファタールです!!」
ワーーーッ!!!!
大きな歓声が上がった。
「やりました……!」
「やった……!」
「わーっ!!!」
3人も喜ぶ。凛とベリーは泣いていた。
マリアは、スポットライトに照らされながら、少し安堵する。
(……良かった)
辛勝だと思った。だが、これでグランプリはマリアのものだ。
「グランプリのマリアさん!一言お願いします」
マリアは少し考えてから、言った。
「……貴方のおかげよ」
マリアは笑った。
これに会場の観客は、心臓を撃ち抜かれた。
キャーー!!!
黄色い歓声が上がる。
ケイネラは負けたが、満足した表情だった。
トロフィーを受け取る。マリアに相応しい輝きだった。
ラビルナは、舞台袖でその輝きを見ていた。
(あぁ、私はまた、届かなかった───────)
しかし、この結果にどこか納得してしまう自分がいた。
戻ってきたマリアに話しかける。
「グランプリおめでとう、マリアさん」
「えぇ、貴方も」
「……来年は、負けないよ」
「!!」
ラビルナはマリアに拳を突き出す。
少し間を置いて、マリアは静かに、拳を合わせる。
「……私も負けないわよ」
そう宣告した。
熱冷めやらぬまま、席を立つ。
「これは神の決定ですね。……マリアは神に選ばれたのです」
フィリアは感動したように語った。
「ふ、俺のお陰か……」
凛はマリアの一言を反芻していた。
ベリーは……
(……どうしよう、……大好きだ)
マリアへの好意を確かめていた。ウィンクの衝撃が、まだ胸に残っている。
暫くして、私服に戻ったマリアが楽屋から出てくる。
「おまたせ」
まだステージの光が残っているような雰囲気だった。
「グランプリ、おめでとうございます。この世のものとは思えないくらい、美しかったですよ」
「おめでとう。心臓が幾つあっても足りなかったな」
「マリアちゃん、おめでとう!!……本当に綺麗だったよ!」
ベリーは言葉に迷って、結局そんな感想になった。
「えぇ、ありがとう。皆のお陰だわ」
トロフィーを持ったマリアは、嬉しそうに笑った。
「マリアちゃん、記念に1枚!」
「えぇ、もちろん」
ベリーが写真を撮った。
それは、好意を確認するようだった。
会場を出るため、中を歩く。
片付けられたセットを見て、マリアは思う。
(あぁ……終わったのね)
マリアはその時確かに、この祭りの終わりを認識した。
「マリア、どうかしましたか?」
立ち止まったフィリアが問う。
「……いいえ。なんでもないわ」
かぶりを振った。
「……そうですか。マリア、行きましょう」
フィリアは手を差し出す。
マリアが、ゆっくり、その手を取る。
「……えぇ、行きましょう」
そして、新たなシーンへと、マリアは進んで行った。
★評価、ブックマーク、コメント、レビュー、リアクションお待ちしております。よろしくお願いします。
関係ないんですけど、トゥウェンティーズっいうブランドを見つけて……マリアに似合いそうなんです……是非調べてみてください。淡いピンクのやつとか、緑のやつとかね。いいよね。下のリンクです。
https://x.com/20s_tnewties/status/2005474101444378801?s=46&t=ys_oDGiLIdLy69bO8Z7sFA
https://x.com/20s_tnewties/status/2005609996877258959?s=46&t=ys_oDGiLIdLy69bO8Z7sFA




