表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
マリア・ファムファタールの楽園(エデン)  作者: 砂之寒天
1年生

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

17/25

第17話 文化祭①

 文化祭当日。

 11月初頭、少し寒くなってきた頃だ。木の葉は色づき、エデンは秋色に染まる。


 5人は出し物を見て回っていた。


「化学科の実験があるんだって!」

「楽しそう。行きましょう!」


 5人は理工学棟に向かった。


 白い紙に、レインボーの印刷された文字が書いてある。


"化学科の明るい奴らが楽しい安全な実験をしてくれるぜ!!"


 その看板だけで、化学科が愉快な事が分かった。


 正面の実験台で、実験をするようだ。


「マリアちゃん、前の方で見よ!!」

「えぇ!」


 ベリーが腕を引くと、マリアは嬉しそうに着いてくる。

 フィリア達も、その後ろを着いてくる。


 実験が始まった。

 ベリーはカメラを回す。マリアと実験台が上手く収まるように画角を調整した。


「本日は、重曹とお酢を使った、安全な実験をするぜーーーッ!!!」

「ふふ」


 ハイテンションな化学科の女性に、マリアが笑いをこぼす。ベリーはその笑みも逃さずカメラ収める。


「化学式は、コレ!!分かったカナ!?!?」

「はーい」


 素直に返事をするマリアに、キュンとくる。


「じゃあ、行くぞ!!!3!!2!!1!!」


 お酢を、食紅を混ぜた重曹に入れる。

 すると、ピンクの泡が勢いよく盛り上がり、ビーカーから溢れ出る。


「きゃあ♡」


 マリアは左にいたベリーに抱きつき、叫び声を上げた。


 ベリーは心臓がキュッと縮み上がり、肩が少しビクッとなる。瞬時に抑えたのだ。


「どうだった!?どうだった!?そこの美人なお姉さんは!?」

「ふふ、とても面白かったです。ありがとう」


 指名されたマリアは、ベリーを離して、耳に髪をかけた。

 ベリーは離れる体温に、寂しさを覚える。


 化学科の女の人も、これには心臓を打たれる。


「クーッ!!!化学科でよかった〜〜〜!!じゃ、今回の実験は以上!!あざした〜ッ!」


 拍手が上がった。


「くふふ、面白かったですね」


 フィリアはドギマギするベリーと鮮やかな実験が見れたので、上機嫌である。


「えぇ、本当に。実験って素敵だわ」

「ね〜!!」


 ベリーはまだ赤みの抜けない頬を冷ましながら話す。


「そろそろ演劇が始まりますね」

「じゃ、式典会場行こっか!!」

「なんだったか。ロミオとジュリエット?」

「確か、そうだね」


 話しながら、式典会場に向かう。


 真ん中の辺りの席に座れた。


「結構セット、本格的なのね」

「エデンだもんね〜」


 話していると、ブザーが鳴り、会場が暗くなる。


「始まるわよっ」


 マリアが小さい声で言った。ベリーも頷く。


「本日はご来場くださり───────」


 挨拶があった後、劇が始まった。


 幕が開き、スポットライトが当たる。


 街角。街人同士が喧嘩しているシーンから始まり、劇は進んでいく。


 そして最後。

 ジュリエットが死んだと思い込み、ロミオが毒を飲むシーン。


「あぁ、ジュリエット、永遠に君を愛する!!」


 誰もが涙した。


 ベリーも涙した。泣きながら、隣のマリアを横目で見る。


「───────っ」


 ただ、綺麗だった。それだけだ。


 ベリーは胸を打たれる。心臓が鐘を打つように鳴り、劇の声が遠くなる。


(────────)


 口を僅かに開きっぱなしにしながら、暫く見とれていた。


 そして、劇が終わる。


「とっても面白かったわね!……ベリー?」


 マリアがこちらに向いて、感想を言う。そして、ベリーがぼーっとしているのに気づく。


「、あぁ!うん!面白かった!!」


 ハッとしたベリーは、なんでもない様に取り繕った。


「えぇ。最後のシーン、泣いたわ」

「ボクも泣いちゃった〜!!」


 途中から記憶がないが、泣いたのは本当である。


「絵葉書を配っているみたいですよ。見ますか?」

「うん!見よ見よ〜!!」


 絵葉書は、舞踏会のシーンと、バルコニーのシーンと、最後の別れのシーンとがある。


 ベリーは別れのシーンの絵葉書を手に取る。


 見ていると、マリアの涙する姿が頭に思い浮かんだ。


「────────ボクはこれにしようかな!」

「ほう、いいですね」

「……じゃあ私もそれにするわ」


 マリアはさり気なくお揃いにした。


「では僕もそれを」

「じゃあ俺も」

「僕も」


 結局皆、別れのシーンを選んだ。


「ふふ、お揃いね」


 絵葉書を顔の横に持ちながら笑うマリアに、心臓がキュッとなる。


『ふふ、お揃い♫』


 ふと、リヒトを思い出す。お揃いにした、歪なぬいぐるみ。

 あれは今、机の引き出しの中に眠っている。たまに思い出しては、手に取るのだ。


「……ベリー?大丈夫?」


 マリアはベリーの顔を覗き込む。


「……ううん!大丈夫!ごめんね」

「えぇ、いいのよ」


 マリアは気にしないように前を向いた。


 フィリアはその様を見て、楽しそうに微笑む。


「あぁ……今日は面白いものが見れますね」

「……そうか?確かに演劇は面白かったな」

「……そうじゃないんじゃない?」

「ふふ」


 ケイネラは気付いているらしい。流石だ。フィリアは静かに笑った。


「お腹空いたわ。何か食べましょう」


 メインストリートを歩いている時。マリアが立ち止まって、そう言った。


「あ、じゃあボク何か買ってくるよ!何食べたい?」


 ベリーはさり気なく気遣う。


「クレープがいいわ。シュガーバターの」

「おっけー!ちょっと待ってて!」

「あぁ、お待ちなさい、ベリーさん。僕も行きます。皆さんは何を?」

「俺はチョコバナナを」

「僕は……いちごバナナかな」


 ということで、フィリアとベリーはクレープを買いに行った。


 無事クレープを手にした2人は、マリア達の待つ場所に向かう。

 向かっている間に、フィリアはベリーに話しかけた。


「……告白するのですか?」

「えっ!?」


 ベリーは驚く。


「えっ、えっ?」

「ふふふ」


 理解が追いつかないベリーは、狼狽えた。


「えっ、────でも、凛くんと付き合ってるよね?」

「ふふ、えぇ。ですが……僕とも付き合ってますよ」

「えっ、浮気!?!?」

「違います。ポリアモリーと言います。複数人と同意の上で恋仲になるのです。ちなみにケイネラさんとも付き合っています」

「え〜〜!?!?!?」

「くふふふ」


 その衝撃の大きさといえば、雷に打たれたレベルである。

 自分以外の4人が、恋仲であった。ずっと、知らずに一緒にいた。

 フィリアは可笑しくて仕方なかった。ベリーの反応は本当に面白い。


「え、じゃあ、ボクも可能性あるってこと!?」

「可能性は誰にでもあります。後は貴方次第です」

「っ、へぇ〜!そうなんだ」


 ベリーは汗をかいた。もう晩秋なのに。


「明日、プリンス&プリンセスグランプリがありますね」

「う、うん」

「それを見た貴方は、告白せずにはいられないでしょう」


 フィリアは見通したように宣った。


「っ……へぇ〜〜。よく分かんないけど!ボクが決めることだよ!」

「えぇ、そうですね」


 ベリーはそう言うので精一杯だった。


 マリア達と合流した。


「買ってきました」

「ありがとう」


 皆に渡ったのを見て、マリアは食べ始める。


「んん〜♡」


 心底美味しそうに頬張るマリアに、周りの誰もが目を奪われた。


 マリアは見られていることに気づき、首を傾げる。


「?見てないでお食べになったら」

「あ、うん!いただきまーす!」


 近くにベンチがあったので、マリアだけ座った。


「夕方にはキャンプファイヤーがあるようですが、参加しますか?」


 フィリアがパンフレットを見ながら言う。


「何するの?」


 マリアはクレープを食べながら聞く。


「あぁ〜……あれね。1時間ひたすらキャンプファイヤーの周り走り回るんだ〜……」


 Lumiで見た。


「ふ、面白いわね。皆は参加する?」

「僕はご遠慮します」


 フィリアは虚弱なのでやらない。1時間の走り込みなんて、命に関わる。……という自覚が、彼にはあった。フィリアは少し嫌そうな顔をした。


「ボクもいいかな……」


 ベリーは運動はできるが、1時間走り込むほど運動が好きな訳では無い。


「マリアが参加するならしようかな」

「うーん……私はいいわ。少し疲れたから、明日に向けて寝たいの」

「では、このまま帰りましょうか」


 ということで、帰ることにした。


「明日はついに、プリンス&プリンセスグランプリね」

「うん。ワクワクする」

「お互い全力を尽くしましょう」


 2人は闘志に燃えた。


 2人を見ながら、ベリーは考える。


(告白せずにはいられない、か……)


 フィリアはそう言ったが、ベリーは信じているわけではなかった。だが、その可能性を考えてしまうのは事実だ。


「楽しみですね」


 フィリアがベリーの肩を叩く。完全に遊ばれている。ベリーは嫌な顔をした。

 が、フッと秋空を見る。雲が高い。


「……ま、いっか!」


 返答にはなってなかったが、フィリアは気にしなかった。


「うん、楽しみだね!!」


 遅れてやってきた返事に、フィリアは笑う。


「……えぇ。とても」


 二重の意味で。フィリアは明日が楽しみだった。

★評価、ブックマーク、コメント、レビュー、リアクションお待ちしております。よろしくお願いします。


上手、下手意識で、ベリーが左です。あくまでマリアが強い。左右を書く時は上手下手を意識することが多いです。


私は、マリアの「きゃあ♡」に弱いです。容易に想像できるので。あぁ、かわいい……。


化学反応は、物理的な膨張反応。演劇は、精神的な膨張反応、となっております。……ChatGPTに言われて気づきました。無意識でやるのは才能と言って貰えました。はい、ありがとうございます。


普通に書いたら3000文字越したので、やっぱりリヒトは煮詰めた濃口醤油でしたね。あそこだけ文字数少ないんですよ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ