第17話 文化祭①
文化祭当日。
11月初頭、少し寒くなってきた頃だ。木の葉は色づき、エデンは秋色に染まる。
5人は出し物を見て回っていた。
「化学科の実験があるんだって!」
「楽しそう。行きましょう!」
5人は理工学棟に向かった。
白い紙に、レインボーの印刷された文字が書いてある。
"化学科の明るい奴らが楽しい安全な実験をしてくれるぜ!!"
その看板だけで、化学科が愉快な事が分かった。
正面の実験台で、実験をするようだ。
「マリアちゃん、前の方で見よ!!」
「えぇ!」
ベリーが腕を引くと、マリアは嬉しそうに着いてくる。
フィリア達も、その後ろを着いてくる。
実験が始まった。
ベリーはカメラを回す。マリアと実験台が上手く収まるように画角を調整した。
「本日は、重曹とお酢を使った、安全な実験をするぜーーーッ!!!」
「ふふ」
ハイテンションな化学科の女性に、マリアが笑いをこぼす。ベリーはその笑みも逃さずカメラ収める。
「化学式は、コレ!!分かったカナ!?!?」
「はーい」
素直に返事をするマリアに、キュンとくる。
「じゃあ、行くぞ!!!3!!2!!1!!」
お酢を、食紅を混ぜた重曹に入れる。
すると、ピンクの泡が勢いよく盛り上がり、ビーカーから溢れ出る。
「きゃあ♡」
マリアは左にいたベリーに抱きつき、叫び声を上げた。
ベリーは心臓がキュッと縮み上がり、肩が少しビクッとなる。瞬時に抑えたのだ。
「どうだった!?どうだった!?そこの美人なお姉さんは!?」
「ふふ、とても面白かったです。ありがとう」
指名されたマリアは、ベリーを離して、耳に髪をかけた。
ベリーは離れる体温に、寂しさを覚える。
化学科の女の人も、これには心臓を打たれる。
「クーッ!!!化学科でよかった〜〜〜!!じゃ、今回の実験は以上!!あざした〜ッ!」
拍手が上がった。
「くふふ、面白かったですね」
フィリアはドギマギするベリーと鮮やかな実験が見れたので、上機嫌である。
「えぇ、本当に。実験って素敵だわ」
「ね〜!!」
ベリーはまだ赤みの抜けない頬を冷ましながら話す。
「そろそろ演劇が始まりますね」
「じゃ、式典会場行こっか!!」
「なんだったか。ロミオとジュリエット?」
「確か、そうだね」
話しながら、式典会場に向かう。
真ん中の辺りの席に座れた。
「結構セット、本格的なのね」
「エデンだもんね〜」
話していると、ブザーが鳴り、会場が暗くなる。
「始まるわよっ」
マリアが小さい声で言った。ベリーも頷く。
「本日はご来場くださり───────」
挨拶があった後、劇が始まった。
幕が開き、スポットライトが当たる。
街角。街人同士が喧嘩しているシーンから始まり、劇は進んでいく。
そして最後。
ジュリエットが死んだと思い込み、ロミオが毒を飲むシーン。
「あぁ、ジュリエット、永遠に君を愛する!!」
誰もが涙した。
ベリーも涙した。泣きながら、隣のマリアを横目で見る。
「───────っ」
ただ、綺麗だった。それだけだ。
ベリーは胸を打たれる。心臓が鐘を打つように鳴り、劇の声が遠くなる。
(────────)
口を僅かに開きっぱなしにしながら、暫く見とれていた。
そして、劇が終わる。
「とっても面白かったわね!……ベリー?」
マリアがこちらに向いて、感想を言う。そして、ベリーがぼーっとしているのに気づく。
「、あぁ!うん!面白かった!!」
ハッとしたベリーは、なんでもない様に取り繕った。
「えぇ。最後のシーン、泣いたわ」
「ボクも泣いちゃった〜!!」
途中から記憶がないが、泣いたのは本当である。
「絵葉書を配っているみたいですよ。見ますか?」
「うん!見よ見よ〜!!」
絵葉書は、舞踏会のシーンと、バルコニーのシーンと、最後の別れのシーンとがある。
ベリーは別れのシーンの絵葉書を手に取る。
見ていると、マリアの涙する姿が頭に思い浮かんだ。
「────────ボクはこれにしようかな!」
「ほう、いいですね」
「……じゃあ私もそれにするわ」
マリアはさり気なくお揃いにした。
「では僕もそれを」
「じゃあ俺も」
「僕も」
結局皆、別れのシーンを選んだ。
「ふふ、お揃いね」
絵葉書を顔の横に持ちながら笑うマリアに、心臓がキュッとなる。
『ふふ、お揃い♫』
ふと、リヒトを思い出す。お揃いにした、歪なぬいぐるみ。
あれは今、机の引き出しの中に眠っている。たまに思い出しては、手に取るのだ。
「……ベリー?大丈夫?」
マリアはベリーの顔を覗き込む。
「……ううん!大丈夫!ごめんね」
「えぇ、いいのよ」
マリアは気にしないように前を向いた。
フィリアはその様を見て、楽しそうに微笑む。
「あぁ……今日は面白いものが見れますね」
「……そうか?確かに演劇は面白かったな」
「……そうじゃないんじゃない?」
「ふふ」
ケイネラは気付いているらしい。流石だ。フィリアは静かに笑った。
「お腹空いたわ。何か食べましょう」
メインストリートを歩いている時。マリアが立ち止まって、そう言った。
「あ、じゃあボク何か買ってくるよ!何食べたい?」
ベリーはさり気なく気遣う。
「クレープがいいわ。シュガーバターの」
「おっけー!ちょっと待ってて!」
「あぁ、お待ちなさい、ベリーさん。僕も行きます。皆さんは何を?」
「俺はチョコバナナを」
「僕は……いちごバナナかな」
ということで、フィリアとベリーはクレープを買いに行った。
無事クレープを手にした2人は、マリア達の待つ場所に向かう。
向かっている間に、フィリアはベリーに話しかけた。
「……告白するのですか?」
「えっ!?」
ベリーは驚く。
「えっ、えっ?」
「ふふふ」
理解が追いつかないベリーは、狼狽えた。
「えっ、────でも、凛くんと付き合ってるよね?」
「ふふ、えぇ。ですが……僕とも付き合ってますよ」
「えっ、浮気!?!?」
「違います。ポリアモリーと言います。複数人と同意の上で恋仲になるのです。ちなみにケイネラさんとも付き合っています」
「え〜〜!?!?!?」
「くふふふ」
その衝撃の大きさといえば、雷に打たれたレベルである。
自分以外の4人が、恋仲であった。ずっと、知らずに一緒にいた。
フィリアは可笑しくて仕方なかった。ベリーの反応は本当に面白い。
「え、じゃあ、ボクも可能性あるってこと!?」
「可能性は誰にでもあります。後は貴方次第です」
「っ、へぇ〜!そうなんだ」
ベリーは汗をかいた。もう晩秋なのに。
「明日、プリンス&プリンセスグランプリがありますね」
「う、うん」
「それを見た貴方は、告白せずにはいられないでしょう」
フィリアは見通したように宣った。
「っ……へぇ〜〜。よく分かんないけど!ボクが決めることだよ!」
「えぇ、そうですね」
ベリーはそう言うので精一杯だった。
マリア達と合流した。
「買ってきました」
「ありがとう」
皆に渡ったのを見て、マリアは食べ始める。
「んん〜♡」
心底美味しそうに頬張るマリアに、周りの誰もが目を奪われた。
マリアは見られていることに気づき、首を傾げる。
「?見てないでお食べになったら」
「あ、うん!いただきまーす!」
近くにベンチがあったので、マリアだけ座った。
「夕方にはキャンプファイヤーがあるようですが、参加しますか?」
フィリアがパンフレットを見ながら言う。
「何するの?」
マリアはクレープを食べながら聞く。
「あぁ〜……あれね。1時間ひたすらキャンプファイヤーの周り走り回るんだ〜……」
Lumiで見た。
「ふ、面白いわね。皆は参加する?」
「僕はご遠慮します」
フィリアは虚弱なのでやらない。1時間の走り込みなんて、命に関わる。……という自覚が、彼にはあった。フィリアは少し嫌そうな顔をした。
「ボクもいいかな……」
ベリーは運動はできるが、1時間走り込むほど運動が好きな訳では無い。
「マリアが参加するならしようかな」
「うーん……私はいいわ。少し疲れたから、明日に向けて寝たいの」
「では、このまま帰りましょうか」
ということで、帰ることにした。
「明日はついに、プリンス&プリンセスグランプリね」
「うん。ワクワクする」
「お互い全力を尽くしましょう」
2人は闘志に燃えた。
2人を見ながら、ベリーは考える。
(告白せずにはいられない、か……)
フィリアはそう言ったが、ベリーは信じているわけではなかった。だが、その可能性を考えてしまうのは事実だ。
「楽しみですね」
フィリアがベリーの肩を叩く。完全に遊ばれている。ベリーは嫌な顔をした。
が、フッと秋空を見る。雲が高い。
「……ま、いっか!」
返答にはなってなかったが、フィリアは気にしなかった。
「うん、楽しみだね!!」
遅れてやってきた返事に、フィリアは笑う。
「……えぇ。とても」
二重の意味で。フィリアは明日が楽しみだった。
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上手、下手意識で、ベリーが左です。あくまでマリアが強い。左右を書く時は上手下手を意識することが多いです。
私は、マリアの「きゃあ♡」に弱いです。容易に想像できるので。あぁ、かわいい……。
化学反応は、物理的な膨張反応。演劇は、精神的な膨張反応、となっております。……ChatGPTに言われて気づきました。無意識でやるのは才能と言って貰えました。はい、ありがとうございます。
普通に書いたら3000文字越したので、やっぱりリヒトは煮詰めた濃口醤油でしたね。あそこだけ文字数少ないんですよ。




